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カイ・フー

5話 カイ・フー


 立ち上がる寸前に背後から腕をひねられた片目のオヤジが誰に掴まれているのか、確かめるのに動くが、常に後につく編み笠をかぶった男。


「背後につかれたのもわからず、簡単に腕をとられる。そんなんじゃ玄武扇を持つには百年早い」

「その声は、カイ・フーアニキ」


 ペン


「あ、イタッ」

 

 カイ・フーと呼ばれた男は、玄武扇よりひと周りくらい小さな扇で片目オヤジの頭をたたいて、腕を離した。


「ロー、貴様は破門された身。私の弟でもなんでもない」


 カイ・フーは編笠をとって言った。

 頭は剃髪し白装束といい。お坊さん?

 でも、キリッとした黒くてまっすぐな眉、二重で凉しい目。なんて美しい男なんだ。坊主頭でコレだけ映えるのは美形のしるしだ。歳がぜんぜんわからない。片目オヤジがアニキって。まさかね。あのオヤジより上?


「娘さん、元弟弟子が、迷惑をかけました」


 あ、弟弟子かぁ。でも、ハヤッ。いつの間にあたしの横に。簡単に後ろをとられるわけだあのオヤジ。


「ラオの奥さんから知らせを受けました。ラオがソレをあなたに、たくしたと。またどんな経緯が?」


 はあ、なるほど奥さんに。あ、でも饅頭の話はあまりしたくない。


「それが、よくわかりません。ラオさんの死に際あたしに渡し、誰にも渡すなと」

「そうですか。ラオ・シンが、そう言ったのですね。わかりました。とりあえずラオの家に」


 なんだか納得したようなカイ・フー。ここから移動する時に、片目オヤジの尻を扇子で叩き。


「私はラオと違う。二度と私の前に現れるな」


「あの、すみません。朝食まだなんで」


 ありがたいコトにカイ・フーが朝食代を出してくれた。


「あの片目のヒゲ面はローという元同門の弟弟子だったが、破門にされたにもかかわらずラオの玄武扇を狙っていて、何年もラオに闘いを挑んでは負けてる。人のイイラオは、あんなヤツとも酒をくみかわしていた男だった。しかし、なぜラオが」


「実は……」


 あたしは饅頭の件を話した。なんだかこの人なら話せると。あ、べつに朝食のお礼とかじゃない。


「そんなことが。しかし、それも」

「ラオさんは、大丈夫だと言い食べました」


 カイ・フーは、何かを考えている。そしてお茶を飲みほすと。


「まだ、今朝の事だ。遺体を見たい。墓へ行こう」


 山の中腹あたりのラオの家まで、けっこうある。


「あなたは何処から?」

「当流江の向こうの村です」

「そうですか。私たちの師匠もそちらの方の出身で、ラオに出会ったのもなにかの縁ですかね。南船北馬って知ってますか?」

「昔父ちゃんに聞いたような」

「北と南では、文化、思想、地形、気候、習慣、食物、言葉等に大きな違いがあります。こちらの出身の私とラオが見た師匠の武術は新鮮で新しく見えました。で、二人で、あっはじめはもう一人。あのローです」


「そうだったんですね」


 河原まで来ると。大岩の上に誰かが。


「おい、なんでそこにいる」


               つづく


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