リン山賊に襲われる
1話 リン山賊に襲われる
両親を失い一人になってしまった、あたしに手紙が届いた。
あたしは字の読み書きが苦手だったので村の長老に読んでもらうと。
遠方に住む祖父からの手紙で、あたしのコトを知り一緒に住もうと書いてあると。
あたしは村を出た。長老が言っていた爺ちゃんが住む所は、村からひと山超えた所にあると聞いた。
谷があり、そこが、南と北の地方の境だと。
谷づたいに行けば人里があるから、山賊に会いにくいと聞いた。
あたしは谷歩きは、なれているので。谷にそって歩いていると。
「小娘、荷物を置いていきな」
噂に聞いた山賊と出くわしてしまった。
あたしは、奴らの居る山側の反対、河原を走った。
川の丸い石を飛び跳ねながらやっらを追い越し逃げた。まだ、人里まではけっこうありそうだが、山賊は五人、なんとか逃げ切れれば。助かる。
「待て!」
「よくもまぁこんな河原をヒョコマカと」
「あのあまぁすばしっこいなぁ。オレは森の方が」
「うあっ、早い」
山賊の一人が森から現れて、あたしの前方に。
「あきらめな」
その男は手足が長く、細い体で猿のような顔。そしてひどく猫背だ手を手前の岩に乗せ四つんばいの姿はホント、猿だ。
「荷物をよこせば命はとらん」
立ち止まった、あたしの横に来た無精ヒゲの男は荷袋を取った。
村の人達がせんべつにくれた物が。
肩にかけた包をあとから来た、背の低い男が取って。
「そこそこ持ってんな。何処まで行くんだ?」
「それ取られたらもう何処へも行けなくなるじゃない」
「無理して行くことにねーよ。オレたちと山で暮らすべ」
前の猿男が近づき舌なめずりをして言った。
「ハァハァ やっと追いついた。ハァハァ」
背中に大刀を背負った弁髪の大男が来た。大男と同時に着いた頭に黄色い布を巻いた男が、頭のようだ。
「手足を縛って川に流せ」
「それはないわ、命は取らないって! そんなことされたら死んじゃうじゃない」
「そんなこと言ったか?」
「こっちのヒゲの人が」
「よけいなこと言うんじゃね!」
「はあ」
ヒゲの人は、あたまをかきながら。うなづいた。
「頭、この娘オレにくれ!」
「おめぇも好きだな。そのうち病気もらって死んじまうぞ。病気なっても医者には見せねぇからな」
「失礼ねぇあたし病気じゃないわよ」
「ケケケッ、娘その服、破られたくなかったら脱げ」
「なんだ、そういうことになったんなら、オレは二番だ。げへへへ」
二番って何よ。大男か、あたしの服に手をかけた時。
「おわぁ!」
大男が宙に浮いた。
「貴様ら、まだ賊をやってんのか」
宙に浮いた大男は、背後から現れたもっと大きな男に抱え上げられた。物凄く大きな迫力のある声だ。
その大きな男は大男を猿男に投げつけた。
剣を抜いた無精ヒゲの男は、太い腕で顔を殴られ同時に棒のような物で背の低い男の頭を叩いた。
「ヒイッ」
黄巾の頭は手を剣にかけたが抜けずにかたまっている。
「ラオ・シンッてめぇ……」
「なんだやるのか」
ラオ・シンと呼ばれた大きな男は手にした大扇子を開き自分をあおいだ。
小男をたたいたのは棒ではなく閉じた大扇子だった。
「最近、見ないから賊やめたと思ってたんだが、またはじめたか。どうしたワン、手が震えてるじゃねーか」
「オレたちは、あんたとやる気はねぇ」
「おい、その荷物はこの娘のもんだろ。返してやりな。そして俺の前からさっさと失せろ!」
その迫力の大声で山賊は山へ逃げだした。
「今度、賊してたら、命はないと思え!」
この人は、いったい何者? とにかく強いのは間違いない。
「娘、ケガはないか?」
「大丈夫です。ありがとうおじさん。あたし、お礼をするものは……」
「礼などいらぬわ」
つづく