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とある冒険者の日常  作者: レムウェル
あるなりたて冒険者の日常
47/87

第47話 なりたて冒険者は狩場を変える決意をする

狩場を変える決意をしたクロウとティルルカの二人は、ギルドを訪れて………


「良いのではありませんか? 狩場を変えることには私は元々賛成ですし。魔木系は擬態による強襲が心配ですが、探知が日常的なティルルカちゃんがいれば、その擬態を見破るのも容易でしょう」


 今後の方針を伝えてアドバイスを貰おうとギルドに戻ってきた俺とティルルカに、リリーヌ嬢はそう言って賛同してくれた。


 魔木系魔物(モンスター)は普段、森の木々に擬態して獲物の油断を誘って襲い掛かってくる。故に如何にその擬態を見破るかが鍵となってくるのだが、その点、ティルルカは日常的に周辺を探知しながら生きているので、よほど高レベルな魔物(モンスター)でもない限り、彼女の探知魔法を掻い潜るのは至難の業なのだ。


 なので、戦闘そのものに関してはあまり心配していない。ただ………


「問題は場所なんだよね。新米が行ける狩場で、魔木系魔物(モンスター)が多く生息しているとこってあるのかな? 魔木系魔物(モンスター)はいるけど他の強い魔物(モンスター)も一緒に出てくるとかなったら、まだきついと思うんだけど」


「それこそ、経験を積む良い機会だと思うのですが………そうですね、カーフの森に比べると少し離れてはいますが、サデラの森は、魔木系魔物(モンスター)が多く生息し、他は少ないと聞いています。そちらは如何ですか? 此処からでしたら、直通の乗合飛行ボードが飛んでますからそれほど時間は掛かりませんよ」


「飛行ボードか………」


 飛行ボードとは、飛行術式を組み込んだ空飛ぶ板の事で、魔石を使って魔力を篭めると浮き上がり、術士が操作して動き回る乗り物だ。


 浮遊と前進のみを術式に組込んで、左右の操作や速度調整を自分で行わなくてはならないような安価な物から、操作の補助を術式に組み込み、安全性を高めたような高級品まで様々な種類がある。


 ある程度稼げるようになれば、小型の飛行ボードを個人で所有して、それを使って街から街、迷宮(ダンジョン)から迷宮(ダンジョン)へと飛び回る事になるのだ。


 乗合飛行ボードは、引退した冒険者や、飛行ボードの魅力に取り憑かれた魔術士が小遣い稼ぎに始めたのが始まりだ。この街にあるのは、船のような形状の定員10人前後の飛行ボードの定期便で、規定の料金を支払えば決まった場所まで運んでくれる。


 まだ個人で飛行ボードを所有出来ないような新米から、稼ぎの少ない中堅の冒険者、そもそも魔力を持たないような一般人を運んで生計を立てているそうだ。


 便利ではあるのだが、ここで問題がひとつ。


(俺、酔うんだよね)


 心の中でそう呟くが、それを口に出す事はしない。


「分かった。そこに行ってみる」


「サデラの森に出る魔木系魔物(モンスター)は、上級ポーションの材料となる実がなっていたり、獲物を引き寄せるためにかなり糖度が高い果実がなっていたり、珍しい物ですと乾燥させると香辛料になる種子や木皮が採取出来たりするそうです。特に香辛料は高値で取引されますし、クロさんの料理のレパートリーもグッと増えること請け合いですので頑張って下さいね」


「いや、頑張るけど、目的はティルルカの大盾の材料で………」


「………」


「い、いや、そんな目で見られても、目的を違えるほど、俺は愚かじゃないからね!」


「………」


「だだだだだからその、聖剣のような業物を無言で抜き放つの止めてくれませんかね!?」


「ご主人様、無言じゃなければ良いのですか?」


 そんな間の抜けた質問をしてきたのは勿論ティルルカ。不思議そうに首を傾げる姿があざとく見えるが、多分これは彼女の素だ。


「………」


 そんなティルルカの様子に、リリーヌ嬢は無言で剣を納め、臍の辺りで右手を左手で抑えるように組んだ。そして取ってつけたようなアルカイックスマイルを浮かべて、全ての受付嬢のお手本になるような直立姿勢を取る。


「いや、そういう意味じゃないんだけど………」


 そのリリーヌ嬢の様子をチラチラ見ながら、俺はティルルカの質問にどう答えていいかと思い悩み、結局は当たり障り無くそう返した。


 リリーヌ嬢、ティルルカが絡むとなんかやりにくそうだな。彼女の内心の舌打ちが目に見えるようだ。リリーヌ嬢は、俺をチクチクとイジり倒してストレス解消してる節がある。それが空振りに終わって、発散される筈だったストレスがそのまま蓄積されちまったかもしれん。クワバラクワバラ。触らぬ神に祟りなし。さっさと切り上げて、ギルド出よう。


「えーと………取り敢えず、明日にでもサデラの森に行ってみるよ。アンタの言ってた素材の方も、採取出来るようならしてくるから」


 そう言って、俺はティルルカを伴って、この場から立ち去る為にそそくさと入り口へと足を向ける。


 ドアを開ける瞬間、チラリとリリーヌ嬢に視線を向けるとバッタリと目があった。


 美しい姿勢に受付嬢の鏡のようなアルカイックスマイル。だがその瞳からは………ゴクリ。


(お土産………無し………コロス………か………)


 リリーヌ嬢のそんな心の内が見えた俺は、足早にその場から立ち去ったのだった。



この世界の文明レベルをどうしようかと迷っていたのですが、魔法や魔導具が発達した世界なら、それなりのレベルである事を前提で進めていこうかと思います。


面白かったら☆ポチ&ブックマークよろりん_(:3 」∠)_

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