表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
とある冒険者の日常  作者: レムウェル
あるなりたて冒険者の日常
22/87

第22話 なりたて冒険者はやはりゴブリンを相手取る その壱

なりたての冒険者のお仕事と言ったらやっぱりゴブリン


「ギギッ!」「グゲッ?」「グガガッ」


 敵の襲撃にも気付かず、欠伸をしながら見張りをしてるつもりのゴブリン共を木の上から眼下におさめ、俺はどう立ち回ろうかと頭の中で計算を働かせる。


 勿論『敵』というのは、ゴブリンにとっての『敵』である、この俺、クロウ・ソーサルスの事だ。緊張感の無いゴブリン共は、50m程までに近寄っている俺にも気付かず、のんびり駄弁ってるって訳だ。


 ここは、いつものカーフの森のやや奥地にある洞穴で、偶にゴブリン達がねぐらにしている事があり、よく討伐依頼がかかる場所なのだった。今は、10数体が洞穴に住み着いており、入り口の前では3体のゴブリンが見張りに立っている。棍棒持ちが1匹、石斧持ちが1匹、そして石槍持ちが1匹だ。


 ゴブリンは、ある程度経験を積んだ冒険者ならば、負ける要素が見当たらない、最下層の魔物(モンスター)だ。多少の知能はあれどもその程度は低く、繁殖力は強いが基本的に虚弱で戦闘経験の無い素人でも討伐すること自体はそれほど難しい事ではない。


 だが、そんなゴブリン共でも、集団となると話は別だ。中途半端に知能がある事が災いし、連携を取られて厄介な相手へと変貌するのだ。常にソロで動いている俺にとっては、かなりの脅威となる相手だ。なんとか一対一の状況を作り出したい。せめて正面からの戦闘は避けて、背後からの奇襲を仕掛けたいところだ。


 ゴブリンが一体になる瞬間を狙って、暫くそのまま様子を見ていたが、だらけ切ったゴブリン共はなかなかその場から動こうとしない。まぁ、勤勉なゴブリンなんぞついぞ聞いた事ないけど。


 俺はフムと考え込み、ひとつの策を脳裏に描く。


 ある程度、策が固まると、俺は身体強化を使って音を立てずに木の枝から飛び降り、素早くその場から離れて行く。


 考えた策は単純なものだ。要するに遠くから注意を引きつけて洞穴入り口の3匹を釣り出し、各個撃破してしまおうって訳だ。問題は、警戒心されて洞穴内の仲間を呼ばれる事で、そうなったら俺はもう逃げるしかなくなる。あとは出来るだけ速やかに倒さないと、やはり大声で洞穴の中にいる仲間を呼ばれてそれでお仕舞いだ。


 俺は少し離れると、そこに即席の罠をいくつか仕掛ける。どれも単純なもので、生命を奪えるようなものではないが、一瞬気を反らせたり、体勢を崩すくらいは出来るだろう。


 これまでの戦闘で色々と学んだが、その中で最も思い知らされた事は、俺は正面からの戦闘に向いていないって事だった。背後からの奇襲と相手の隙を突いての速攻が持ち味で、足を止めて行うような切り合い殴り合いでは分が悪いのだ。


 俺は大きく息を吐き、革で出来たウエストポーチから、小さな笛を取り出した。これは鳴らすと小動物の鳴き声のような音が鳴る小笛で、これでゴブリン達を釣り出そうって訳だ。


 俺は小笛を咥え息を吹き込んだ。するとゴブリン達がキョロキョロと辺りを見渡し始めた。小笛の音は俺には聞こえない。人間の耳では聞き取れない音なんだそうな。


 小首を傾げながら、ギギャッギギャッと小さく鳴き声を発して3体のゴブリン達はこちらに近付いてくる。取り敢えず第一段階は成功だ。


 俺は音を立てないよう気を使いながらササッと移動する。魔力操作に慣れ始めた俺は、こんな風に森の中を気配を消して移動する事が出来るようになってきた。身体強化だけではなく、視覚や聴覚なんかの感覚器の強化にも着手している。隠密行動を取りやすくするためだ。戦闘力の低い冒険者の必須級スキルだと俺は思っている。


 小笛を鳴らした場所を大きく迂回して奴らの背後へと回り込む。後ろのゴブリンから1匹ずつ仕留めようって魂胆だ。


 うまい具合に、3匹の内の2匹が連だって奥へと向かって行き、槍を肩に担いた一番やる気のなさそうな1匹が先行する2匹の後ろをタラタラと歩いている。


 俺は罠を仕掛けたエリアに入り込んだところを見計らい、その槍持ちに背後から素早く近付き、押し倒しながら短剣で一気に喉笛を引き裂いた。声を上げられないようにするためだ。暴れる石槍持ちを抑えつけつつ、止めの一撃をその喉元に突き刺した。


 本当に死んだかどうかの確認はせずに、直ぐさまそのゴブリンから離れ、身を潜める事の出来るくらい背が高い草むらの中に身を隠す。異変に気付いた先行していた2匹が戻って来た気配を感じたからだ。


「ギョギ?!」「グゲッ?!」


 慌てる2匹を草むらの隙間から観察し、その一体に狙いを絞る。指をつき指し魔力を籠める。


『光弾よ 敵を穿て 魔法の飛礫(マジックバレット)


 魔法の飛礫は狙いを外さず、棍棒持ちゴブリンの喉元に突き刺さり絶命させた。


 そして唖然とそれを見つめている石斧持ちに、真正面から飛び掛る。それに気付いた石斧持ちは、直ぐに我にかえって迎え撃とうと石斧を構えている。


 その石斧に「うらっ!」と掛け声を入れながら前蹴りを入れて吹き飛ばそうと試みるが、それは「ギョゴッ!」とあっさり受け止められた。やはり圧倒的に威力が足りない。


 俺は飛び退き、ゴブリンと対峙する。石斧持ちゴブリンは、今の一撃で組み易しと考えたのか、ニヤリと笑みを浮かべて石斧を構え、こっちに向かって駆け出した。


 勿論それが狙いだ。


 ゴブリンは、俺の仕掛けたトラップのひとつに足を引っ掛け顔から無様に地面に転がる。俺は直ぐさま地面に転がっていた石槍を拾い上げながらそいつに近付き、ゴブリンの項にそれを突き刺し絶命させたのだった。



面白かったら☆ポチ&ブックマーク宜しく_(:3 」∠)_

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ