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とある冒険者の日常  作者: レムウェル
ある見習い冒険者の日常
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第12話 ある見習い冒険者の食糧調達 其の弐

食レポの回。


「お、ラッキー。山芋の葉だ。むかごもなってる」


 俺は、木の枝に巻き付いている山芋の蔦を辿り、葉とむかごを収穫しながら、山芋が埋まっているだろう地面に視線を落とす。


 山芋の収穫は少し根気が必要だ。何せ1m近く地中に埋まっている芋を土を掘り起こして引き抜かなくちゃならないからだ。


 いや、まぁ別に無傷で収穫しなくても問題ないけどね。どうせ今食べちゃうもんだし途中で折れちゃっても別に良いんだけどさ。でもほら、何となく完全な形で収穫してみたくならない? なんとかの性ってやつ。


「むかごと葉は塩茹でにして、芋は蒸し焼きにでもするか………あと余った分は、リリーヌ嬢への貢物にしとかなきゃなんないな。あの受付嬢、見習い貧乏冒険者に集るなよまったく……」


 地中に埋まった山芋を掘り起こしながら、俺はこっそりそう愚痴る。面と向かっては言えないからここで愚痴る。異論は認めないし聞かない。情けない奴との誹りは甘んじて受けよう。俺は長いものに巻かれる事に嫌悪や躊躇はないのだ。


「あとは、さっき仕留めた蛇を捌いて飯にするか………」


 実は、予想通りというか何というか、やっぱり蛇と遭遇したのだ。なんでだろ? 俺、結構な頻度で蛇に遭遇するんだよね。しかも何故かばったりと。蛇の方も予想外の遭遇なのか、ビクンと頭をもたげ慌てたように逃げて行くまでがお約束ってやつだ。今回捕まえたのは毒の無い小振りの蛇だった。ギルドにあった資料の中には食用可と書いてあった。五匹も捕まえたから、余った分は解体屋にでも持っていこう。


 俺は取り敢えず石を組み立て簡易竈を作ると、適当な大きさに刻んだ山芋を笹の葉に包んで土に埋め、その上に薪を並べて火を点ける。次に水を張った小鍋を火にかけ、後は蛇の方の処理に移る。


 頭を落として血抜きはしてあるので、まず軽く切れ目を入れてからビュビューっと皮を剥ぐ。次いで内蔵を抜き取り水で洗うと、平らな石の上でミンチにする。蛇は小骨が多いので、ミンチ状にして食べやすくするのだ。


 蛇の下処理をしてる間に小鍋のお湯が沸いたので、ミンチにした蛇の肉に、さっき見つけて刻んだ野草と塩を混ぜ込み、丸めて団子状にして投入する。後は雑貨屋で購入した乾燥キノコを切り刻み、さっき採った山芋の葉やむかごと一緒に沸いたお湯の中に投入した。味付けはこれも雑貨屋で購入した塩だ。貴重品なので少量なのが残念だが。


 アクを取り除きながら煮込むこと四半刻、鍋にも地中に埋めて蒸し焼きにしている山芋にも、十分に火が通っていることだろう。鍋にスプーンを差入れ、ひと口分すくって味見をすると、蛇とキノコから滲み出した旨味が舌の上で踊り、その香りが鼻孔の奥を走り抜けて行く。控えめに言って、宿の食事の百倍美味い。


 続いて、簡易竈から鍋を取り除き、燃え尽きた薪を除けて土に埋まった山芋を掘り出した。笹の葉の包みを解いて一切れ口に放り込むと、ホクホクとした食感と、優しい甘さが口の中に広がった。これも美味い。


 後は何日も前に買った黒パンを軽く火で炙っていたが、少し考えてそれを鍋の中へと放り込む。こっちの方がそのまま食べるより美味そうだ。


「んじゃ、いただきまーす」


 まずはメインの蛇団子だ。


 生臭いのかと身構えて口に入れたが、血抜きをしたお陰かそんな事はなかった。味は変な癖がなくとても淡白で、どちらかと言うと獣の肉よりも魚に近い。野草と塩を混ぜ込んでいるから下味もついており、下手な魔物の肉より洗練された味になっている。


 次いで、スープをすくって口に含む。


 蛇団子と乾燥キノコの旨味がスープに染み出しているらしく、深い味わいが感じられる。塩の分量が少し足りなかったせいで塩気が足りない感じもしたが、それを補って余りある旨味だ。山芋の葉はやや苦味があるが気になる程じゃない。むかごはホクホクしていて美味だ。ヒタヒタになった黒パンも、スープの旨味ごと染み込んで美味い。


 そして山芋の蒸し焼きだ。


 笹の葉に包んでいたので、仄かに笹の香りが移っている。軽く塩を振って口に含むと、芋特有の甘さと塩気が互いを引き立てあって美味さ倍増だ。


(やべ………美味いんだけど!)


 俺は舌鼓を打って残りを平らげる。途中で魔物に襲われて中断……だなんてご無体な事にならないようにだ。 


 俺は夢中になって、作った料理の全てを堪能したのだった。

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