74 袋の中のネズミ
仲間だと思っていた「バズラ」
助け、味方のない施設の中
「うぉぉぉ!」
バズらは唸り声とともに大きな剣を振り下ろした。
ここで即座移動魔法を使うか、いや横に避けるべきか…
そう考える暇はなく
シカズはバズラの剣を避けることができなかった。
「ぐっ…」
しかし、ある程度のバリアは張ることはできた。
バズラの剣とシカズのバリアがキリキリと音をたてる。
…一見攻撃を防いだように見えたが即座に作ったバリアのため、非常に脆く、もうあと少しで割れてしまう。
「バズラ…変な行動はよせ…!私達は仲間じゃないか…!?」
「仲間?俺はスマーロ様に忠誠を誓う施設の者だ。」
シカズは考えた。
ここで戦いを起こしては無意味だと。
味方だと信じていたバズラはまさかの施設関係者。
思いがけない裏切りにさすがのシカズでもこの動揺は隠せない。
動揺により、バリアがより脆くなってしまう。
そこでバズラはもっと力を加える。
「バズラ、お前はこんなことのために…!!スマーロなんかのために…!!故郷を無くしたと言うのか!?」
シカズは脆くなったバリアを抑えながらバズラに問いかける。
「あぁ。リンカにそう指示をさせたのも俺だ。お前のことだから善意が働き、フラクギスタまで来てくれると信じていた。まぁ、全ては計算内ってことかな。」
シカズは黙ってはいられなくなった。
あの優しく、聡明なはずのバズラが己の願いの為に、何人ものの命を無駄にするなんて考えられなかったからだ。
(落ち着け…落ち着け私…ここで冷静をかいてしまうと更に相手の思うつぼだ。落ち着け。
この圧倒的不利の状況で勝てる方法は、打開策は…!
…だめだ。…頭の処理が追いつかない。
このままではバズラに圧されてバリアは割れる。
また、そのうち施設のやつらも参戦する。
こんな時に…カルミドが居てくれたら…。)
少し待ってもいつもの「シカズ様ぁぁあ!」と呼ぶ声が聞こえない。この施設からフラクギスタはどれくらい離れているのだろうか。
仲間の援助はかなり厳しいのだろうか。
勝ち目はないのだろうか。
そうこう考えているとパリンと音がし、バリアは割れてしまった。シカズの前にはもう剣が。
全てがスローモーションになった今、シカズは攻撃を交わすことができないと確実に確信。
鮮やかな赤色が目の前に映りだす。
「ぐあぁあっ…」
肩を抑えながら痛みを堪える。瞬時に治療の魔法をかけようとするも痛みで思うように魔法が働かない。
「バズラ、良くやった。この傷だ、シカズも抵抗はできなくなるだろう。実験室Aへ運んでくれないか。」
「はっ。光栄でございます。おまかせを。」
シカズはバズラにかつがれ、施設を移動する。
その光景を見た研究者達はみな目を見開き、至る所で歓喜の声が溢れる。
シカズは次第に視界が狭まっていくことを感じた。
こんなところで意識を失ってはだめだ、
もっと…もっと考えるんだ…
この時、シカズからひとつ、光の球が出ていった。
スマーロは笑みを浮かべながらシカズの手に力が入っていないことを確認した。約1週間、施設内はシカズの逃亡により混乱していたが、ついには今この手にある。
また、最強の産み親であることに誇りを持ち自信に溢れているようであった。
一方、視点は代わりカルミド。
我々が目を覚ますとシカズ様のお姿が見えない。
また、連絡も一切取れない。
主人の居なくなったカルミドは不安に襲われていた。
「まずい、連絡が取れないということはシカズ様に何か起こっているに違いない…」
場所を確認しようとしたカルミドだったがそれさえも不可と。
なにか手がかりを探すため、カルミドは周りの皆を起こし、当たりを探るよう指示をする。
それは、少しした頃だった。
宙を漂う光の球を見つけたのであった。
「カルミド!!こちらへ!!」
カノミドの声がする方へカルミドは急いで向かう。
「これは…?」
「なにか想いが込められた球のように見えます、恐らく、シカズ様のものかと…。」
カルミドはその光の球を両手で掴むと「シカズ様!!」と大声で叫びだした。
カノミドはそんなカルミドを見て心を痛めた。
何十年、何百年と共にしてきたがこんなに必死な姿を見たのは以前仕えていた主が亡くなったとき以来だったからだ。
カルミドは冷静ではあるがやや感情的な面もある。
主を亡くしたときは立ち直るのに時間を要した。
カノミドはそんなカルミドを抱きしめた。
「大丈夫、きっと無事なはずです。なんせシカズ様ですよ!いつものように元気に戻られます!」
「…連絡が取れないんだ…。いくら話しかけても応答はない…。」
「でも…!!この光を辿って行けば…!いずれシカズ様の元へとたどり着けるはずです!気を確かに!」
カルミドの体温が高くなっているのが感じられたと同時に後ろから鼻をすする音が聞こえた。
「…そうですね…。まだ諦めてなんてはいません。主を守り抜くことが我々の使命。希望を捨ててはなりません。」
カルミドは一瞬力強く拳をにぎり、それをほどいた。
「さて、我々の得意なカラハブ退治と行きましょうか?カルミド。」
「あぁ、同じことを思っていたよ。カノミド。」
2人は目を合わせ笑みを浮かべた。
今は色を持ち合わせていないが、遠い昔、この2人はティラーラであったのだ。
2人はシカズを助けるために動き出したのであった。
つづく。
2年ぶりの活動です




