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72 善意を囮に。

 博士の驚いている顔の裏には笑みが隠されていた。…… が、シカズはそれを知らなかった。


「さぁ、スマーロ様。あの準備を。」


「そうだな。お前の作戦は素晴らしかった。シカズは我々のこの作戦に気づいていないし、なんなら疑いさえもしなかった。」


 実を言うと、博士は研究室にシカズが忍び込んでいる事を知っていて、その上で実験を行っていた。

 それはなぜか?…タイトルにある通りだ。


「はぁ…アイツを捕まえるために馬鹿親父までも演じ、施設の雰囲気までかえ、ここまでした私を褒めたいっ。」


 スマーロがそう言っていると、暗闇の中からずっしりとした足音が聞こえてきた。


「俺をお呼びですか。スマーロ様。」


「あぁ。バズラ=リーベル。役に立ったわ。フラクギスタでのできごとも上手く演じてくれたし、シカズからの信頼度も高かったことだろう。よくやってくれた。礼を言う。」


 そう、バズラは内通者だったのだ。あの日、あの場所で会ったのは計算通り。施設はシカズよりも一枚上手だったわけだ。


「にしても、警戒心の強いシカズをどうやって捕まえるんです?施設に連れてこれたのは奇跡では……?」


「確かに、その通りだ。だが、もうあと数分すると捕まることだろう。アイツの善意を囮にさせてもらったよ。」


「…… なるほど。スマーロ様もなかなか性格が悪いですね。」


 そういいバズラは笑った。


「俺、ずっと謎に思ってたんですけど、なんでそこまでシカズにするんです?スマーロ様ならシカズよりも強い駒をつくれると思うのですが。」


「あぁ、まだ言ってなかったか。シカズを作る時に大切な魂を誤って詰めてしまってな。その魂がないとこの機械は作動しないんだ。」


 この機械とは、スマーロの夢である『世界を手に入れる』ために必要なのだ。この機械が作動すると、人類は絶滅の危機に襲われる。『世界を手に入れる』の言い方を変えると、

『人類を絶滅させ、魔物の世界を創造する』とでも言おうか。


「なるほど…。その魂ってもしかしてカブリーノのだったりします?」


「おっ、なかなか鋭いね。そう、その通りだ。カブリーノの魂のごく一部だけなのだが、それがないとやっぱり上手く作動しなくてね。」


 「スマーロ様の夢までもうあと一歩ですね。楽しみにしてます。」


 バズラはそのまま微笑みながらまた暗闇の中へと消えていった。


 スマーロはそろそろか、と独り言を呟くと窓の外に目をやった。もうすっかりと日は落ちていた。いや、暁か。


 …… しばらくして、また暗闇の中からコツコツと足音が聞こえてきた。


 「…まっていたぞシカズ。」


 「スマーロ…。あんな者で私を捕まえれるとでも思っていたのか?」


 あんな者=囮


 「…あぁ。正直。驚きだよ。施設から逃げたしてそんなに日もたっていないのにここまで強くなるとは。」


 少し意外な結果だったがまぁよし。とスマーロは少し微笑んだ。


 「ところで一つ質問を。」


 「あぁ、構わない。」


 「私になんの用がある?」


 「…ちょっとじっとしていればすぐに終わる事だ。…抵抗するならば、容赦はしない。」


 スマーロがそう言うとシカズは身を構えた。


 きっとこの最後の戦いがこれからの世を大きく変えるだろう。


 つづく。






もうすぐ最終話。

お楽しみに。

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