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5 新居での生活


 私は約束の週末まで、暇な毎日をちわまる君のお世話と、最低限の調理に費やしていた。

 ちわまる君はお利口で可愛いチワワだった。


 二兄伯父さんが帰ってくるまでは、私にべったりだけど、二兄伯父さんが帰ってくるなり私を捨てて二兄伯父さんべったりになる。

 二兄伯父さんがお風呂に入っている時は、足ふきマットの上で待っている。

 二兄伯父さんが飼っている犬だから仕方ないけど、なんかなあ、とちょっとモヤモヤするところがあるのも正直なところだ。

 逆に私にべったりになったら、私がこの家を追い出されそうな感じがするけど。



 そのお風呂から二兄伯父さんが上がると、パンツ一丁でソファーに座ってちわまる君がすぐさまその膝に座る光景を見たときは、叫び声をあげてしまった。


 世の中には裸族なる種族がいるとは聞いていたけれど、実際に目の前に現れるとびっくりする。

 パンツ履いて、バスタオルを掛けているから完全な裸族ではないけれど。

 実家では、私と亜音、そして母親がいるから裸族になる人はいなかったけど、この家は二兄伯父さんと奥さんの二人暮らしだったんだよね。

 奥さんも裸族だったのかな。


 父親の裸とは全く違う裸を見てちょっと焦ってしまった。

 上半身だけだけど。

 父親の裸は、言うまでもなく、公然わいせつ物。

 見たくもないものの筆頭。太ってだらしなくて、体毛が多い。

 あれは犯罪だ。

 一兄伯父さんのも見たことがある。

 痩せているけどおなかだけはポッコリ。

 父親よりも頭も含めて毛が少ない分だけ、まだ許せる。


 が、二兄伯父さんの体は、バスタオルで隠されている分だけ、ちょっとエロかった。

 服を着ている時には気にならなかったが、着やせするタイプだ。

 筋肉質で締まった体で、体毛だけがない。

 全身脱毛してる?

 テレビで見ても違和感なさそうな上半身だった。

 下半身もそれなり。批評は伏せさせて。


 まあ、総合的に言えば、俳優さんの風呂上り、みたいな感じ。

 見ただけで、いい匂いがしそうな感じとでも言えばいいのだろうか。

 母親が見たがりそうだ。

 みどりおばあちゃんも危なそうな気がする。


 そんな身体でちわまる君を抱っこしている姿は、ちょっとばかり異性(おとこ)を感じてしまうかも知れない。

 母親系の親戚は、顔が良い。

 禿げてさえいなければ、一兄伯父さんだっていい線行っていると思う。

 二兄伯父さんは、その一兄伯父さんよりも顔も身体(スタイル)もワンランクもツーランクも上だ。

 血がつながっていなければちょっと妄想(やばいこと)する知れない。

 みどりおばあちゃんや母親が二兄伯父さんを好きなことを理解できそうだ。


 とにかく、そんな無防備で攻撃的な格好はやめて欲しい。

 最初に叫んだおかげで、以後は風呂上りにTシャツを着てくれるようになった。

 時々こっそりとなら見たいと思うが……、本音(そんなこと)を言ったら、母親やみどりおばあちゃんになんて言われるか分かったものじゃない。


 二兄伯父さん曰く、ちわまる君を風呂の時間待たせるのが嫌で、段々と裸族になっていったらしい。

 その気持ちと経過は全く理解できないけど。

 間違いなく、ちわまる君は裸族に興味はないと思うぞ。



 食事については、朝は二兄伯父さんがご飯を作ってくれる。

 夜のうちに炊飯器をセットする。

 朝早くご飯が炊きあがる。

 文明の利器はありがたい。

 もっとありがたいのは、使える執事だと思った。


 まだ日が昇るか昇らないかのうちに、ちわまる君と二兄伯父さんは起きる。

 私はまだ夢うつつだ。


 二兄伯父さんは、ちわまる君にご飯をあげると、自分と私の朝食準備をする。

 その匂いが私の部屋まで香ってくる。

 みそ汁の匂い、焼き魚の匂い、お肉を焼く匂い。


 その朝食の匂いで私は目が覚める。

 ちょっぴり罪悪感を感じながら私は起きだす。

 私が先に起きていれば、お手伝いもできるのだけど。

 目覚まし時計がないので二兄伯父さんとちわまる君よりも早く起きるということができないのだ。

 母に持たされた一万円が頼りなく感じる。

 目覚まし時計、安い物っていくら位するのだろう。

 私が貯めていたお年玉が最後の頼りだ。


 二兄伯父さんの朝食は、ご飯に味噌汁、野菜の入った煮物か炒め物、それにメインの魚かお肉。

 基本和食だった。

 普通のおかずの他に、納豆・珍味・味付け海苔が卓上に置いてある。

 食べても良いか尋ねてはいないけど、雰囲気的に食べても良さそうだ。

 当たり前だけど。

 こんな物に手を付けてしまったら、ご飯が無限に食べられてしまう。

 まともに食べたら太ること確定だ。

 理性を働かせる必要がある。この家の食事事情は。



 二兄伯父さんは、朝食とほぼ同じ内容のおかずを弁当に詰めて出勤する。

 私は余ったおかずとご飯をお昼ご飯にする。

 十分すぎるほどの内容(おかず)

 実家にいる時よりも豪華です。

 ただ、チーズの塊をちょっと食べたい気持ちがあるのも事実。でも大きいだけに、ビニールを剝がす勇気がないのです。

 夕飯だけは、少しだけでも役に立ちたくて、冷蔵庫の食材をメモして図書館へ行ってきました。

 もちろん食材の種類と賞味期限をメモして。


 図書館も歩いて行ける距離にあるなんて、なんて立地条件なんでしょうか。

 街中を散策していると、勝手に図書館に到着するなんて素敵。


 本を借りようと思ったけど、身分証明書を持って来なかったので本を見るだけにした私。


 当然レシピ本中心。

 勉強したかいあって、最初に作ったのは目玉焼きと野菜炒めでした。


 なぜかと言われたら、レシピ本を読んだけど、家にある調味料と調理機材をチェックしていなかったので、家に何が揃っているのか気になり過ぎてレシピを選択できませんでした。


 料理って、食材だけじゃできないんですね。

 家に帰ってから、お鍋の種類と大きさをチェックしました。

 お鍋の容量が書いていないものがほとんどだったので、定規を使って、おおよその容量を計算してみました。

 こんなところで数学が役に立つなんて素敵。

 数学じゃなくて算数だった?



 こんなに料理に準備や勉強が必要だなんて思ってもみなかった私。

 学校の勉強よりも難しいかも。


 

PS

 野菜炒めが美味しくなかった。

 なぜでしょう。


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