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友人への謝罪と疑念

作者: 日真 陣

ある時自分が友人だったと思っていた人に突然ブロックされていた。

友人は賢く聡明でいて何より優しい人だった。


例えば私が友人と喧嘩していたとしよう。

そうであったなら喧嘩の最中だ、ブロックぐらいするだろう。

でも今回は違った。


例えば私が友人に罵声を浴びせたとしょう。

そうであったのならもちろん私が悪い。

でも今回は違った。


例えば私が友人の嫌うような行動をとったとしよう。

そうであったのなら私が原因だ。

でも今回は違った。


私にはまるで理由が分からない。

私は原因になりそうなことを何一つ覚えていない。

ほんの少しでいいのであれば心当たりがあるが、友人はその程度のことで起こるはずがないという確信がある。


私の出した結論はいたって簡単だ。

私は友人のことを傷つけたのだ。

私は意識すらせずに友人を傷つけたのだ。

何と最低なことだろう。


親しき中にも礼儀ありという言葉があるが、私はきっと友人に甘えすぎていたのだろう。

友人は些細なことでは怒らず、私を子馬鹿にするようなジョークも交えて会話をする。

そうであるならば私もと相手を傷つけない程度で冗談を返す。


そんなことはできるはずがないのだ。

悪意ある冗談で傷つかない人間はいないのだ。

友人とそんな冗談を交わせるのはお互いがこの程度では気に留めないという、根拠のない信頼で行うものだ。

つまり私はきっと友人を傷つけたのだ。


私は何とひどい人間であろうか、友人が私を拒絶するほどに傷ついたというのに、私は彼が傷ついているとはつゆほども知らなかったのだ。

私は友人が私を拒絶していると気が付くのにかなりの時間を有した。

友人は忙しい人間だから時折音信不通になることがあった。

私は友人が傷ついているときに、今は忙しいだろうからほっといてあげようと、理解のある優しい友人を気取っていた。

何と愚かなことだろうか。


友人は傷つけた本人の私がこんなありさまであることを知ったらきっとさらに傷つくことだろう。

時にいじめは加害者の方に相手を傷つけたという自覚がない場合がある。

ただのいじりのつもりだった。

このぐらいいつもの冗談で済むと思った。

そして傷つけた側は傷つけたその記憶を徐々に薄れさせていく。


友人よ、これがまず一つ目の謝罪だ。

私はあなたのことを傷つけたかもしれないのに、私には傷つけた記憶すらない。

これはあなたと私の重要な記憶であったはずであるのに私は意識すらできていなかった。

友人よ、ごめんなさい。


第一の謝罪があなたを傷つけたことではないのが私の誠意のつもりだ。

私は確かにあなたを傷つけた。

だが私はその傷つけたことすら気に留めていなかった。

私はそれが一番の罪だと思った。

だからこれが一つ目の謝罪だ。


私が友人へする2つ目の謝罪は私があなたを傷つけたことに対してだ。

私は意識していなかったとしてもあなたが私をブロックするほどだ、私はあなたのことをそれほどまでに傷つけたことを私は悔いている。

友人よ、ごめんなさい。


友人を傷つけた、そんな私にはきっと何を言う資格はない。

友人が私のこの謝罪を受け入れてくれなくとも私はそれを向き合わなければならず、自分の心のしこりを解消したいがために友人に謝るのではないということを忘れてはいけない。

もし許されたら私はきっと友人の嫌がることを覚えてそれをしなくなることだろう。

でもその代償にこの心のしこりも消えてなくなる。

許されなければ私は今と変わらずこの心のしこりとともに生き続けるだけだろう。


心のしこりは様々な要素が集まってできている。

友人に対する罪悪感、友人を傷つけたという事実、そして友人に拒絶されたという事実。

それらが心のしこりを形成しているのだろう。

でも何かがおかしい。

友人に対する罪悪感や友人を傷つけたという事実、そして友人に拒絶されたという事実、これらは心のしこりになる理由には十分だ。

でもそれにしてはしこりが大きすぎる。


ああ、なんて悲しいんだ。

もしかしたら私は友人に友人と思われていなかったんじゃなか?

そんな疑念を見つけたしまった。


なぜ心のしこりがこんなにも大きかったのか、それはこの疑念が原因だったのだろう。


友人よ、なぜその不満を私にぶつけてくれなかったのだろうか?

友人よ、なぜその傷ついた事実を私に教えてくれなかったのだろうか?

友人よ、なぜ私と話をしてくれないのか?

友人よ……


友人の嫌なところがあったとして何も言わずに別れるのが友人だろうか?

私が友人に傷つけられたとして私は傷ついたと友人に言わないのだろうか?

ただ一方的に拒絶し、すべてを拒絶するのだろうか?

お互い友人だと思っていたのであればそうであったのかもしれない。


友人よ、私はあなたの友人たりえなかったのだろうか?

友人よ、私はあなたに怒りをぶつける価値もないと思われていたのだろうか?

友人よ、私はあなたの話を聞かないような人間とでも思われていたのだろうか?

今ではそれを確かめることすらできるすべはない。


これは私の大切な友人への謝罪。

友人に友人だと思われていなかったかもしれないなんて疑念を嘘だと心の隅に追いやり、私とまた対話をしてほしいという長いから生み出したそんな謝罪。

私はあなたと友人であったと信じたい。

私からはこれ以上一方的に話すことはもうない。


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