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03

 男の様に短く切りそろえられた銀髪と、傷跡が残る獣耳。やせ細った彼女は、どこからどう見ても獣人族の少女で――首には奴隷の証である、重そうな首輪が付けられていた。


「奴隷? まさかまだおるとはのぉ」


 五百年前には奴隷が当たり前のようにいたが、奴隷規制法のようなものが作られる、と話が上がる程度には、奴隷時代の終わりが見えていた。

 それなのに、五百年経っても奴隷が健在とは。それとも現代に置いて奴隷は違法だが、この子は闇ルートとかで売りさばかれた少女なのだろうか。

 きょろきょろと辺りを見回して見るが、持ち主らしい人物はいない。それどころか、人影すらない。

 さっと彼女の口元に手をやると、かすかだが、呼吸を感じる。生きてはいるのか。ただ、すでに虫がよってきている。死期が近いのか。


「困ったのぉ……。首輪を付けていたら魔術はかけられんし」


 奴隷の首輪は全ての魔術を弾く。壊そうと思ったら身体強化の魔術でも使って、力ずくで壊せないこともないのだが、奴隷商人との契約によっては、首輪が持ち主以外に壊された場合、即死する可能性もあるので、下手に手は出せない。


「……そうじゃ!」


 僕は鞄からポーションを取り出す。奮発して買った、中級ポーションだ。これなら彼女を、首輪に弾かれないで回復させられるだろう。


「飲む気力はあるか?」


 少女の口に指を突っ込み、彼女の口を軽く開ける。中級ポーションを数滴垂らすと、彼女の唇が震えた。ゆっくりと、瞼が開かれる。宝石の様に美しい緑色の左目と、くすんだような灰緑の右目。そのどちらも濁っている。ゆっくりと、こちらに視線が向けられた。

 少し、回復したようだ。

 僕は彼女をおびえさせないよう、努めて笑う。


「飲めるなら飲むといい。回復するはずじゃ。ほれ、また垂らすぞ」


 さっきより少し多めに中級ポーションを彼女の口に入れる。少しこぼれてしまったが、こくり、と彼女の喉が動いた。


「だ、れ……」


 ガサガサな声で、彼女が呟く。声を出せるまでには回復したか。しかし、弱弱しく、今にも死にそうなことに代わりはない。


「無理するな、喋るなら残りを飲んでからにしたほうがいいぞ」


 僕がそう言えば、彼女は黙って、ポーションを飲む。

 一口飲むたびに、彼女の飲むペースはどんどん早くなっていった。全て飲み干した後は、起き上がれるくらいにまで回復する。


「ありがとう、ございます。助かりました」


 体を起こし、彼女はぺこりと頭を下げた。彼女の後ろで、ゆるゆるとふわふわのしっぽが左右に揺れている。耳の形としっぽの形からして――彼女は狼の獣人だろうか。

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