05 パーティ結成
無事冒険者として登録を終えたカワードは、すぐ後方で様子を見守っていたキャサリンの方へと向かう。
「待たせた、すまないな」
「いいのいいの、これで無事、アタシとカワード二人でパーティ結成出来るんだから。ほら、さっそく登録も済ませちゃいましょ」
「――ちょっと待ってくれ」
カワードの手を引き、受付へと向かうキャサリンに向かって、呼び止める声が掛かる。二人が声の方へと振り向くと、そこには冒険者らしき四人組が立っており、険悪な雰囲気を醸し出しつつ、近寄ってくる。
どうやら――パーティ結成までにはもう一悶着あるようだ、とカワードは予感した。
「済まないが、君はキャサリンさんだろう? 隣国の王都出身の、かなり優秀な魔術師だと聞いた」
「あら、アタシのこと知ってたの? 光栄ね」
「一年前、パーティに勧誘しようと思って出遅れてしまってね、その時のことをよく覚えている」
言うと、男はカワードに鋭い視線を向けつつ、話を続けた。
「正直に言おう、君のような優秀な魔術師が、新人の素人同然の冒険者と二人だけでパーティを組むことに納得行かない。それが、俺たちの勧誘しようとしていた魔術師ともなれば黙ってはいられない」
「……ハァ、その話は決着付いたでしょ。カワードは十分に実力があるから問題ないって」
「それは冒険者登録の話だろう。Bランクの魔術師と組むことが妥当な程だとは、到底思えない」
「だとしても、組むのはこっちの勝手でしょ、アンタたちには関係ない!」
男とキャサリンの対話が口論に発展する気配を感じ取り、カワードはキャサリンを制するように、会話に割って入る。
「まあ待ってくれ、要するに俺の実力に不安があるから、俺とキャサリンがパーティを組むことに納得が行かないのだろう? だったら話は簡単だ、勝負をして、実力を見極めてくれればいい」
「ほう――つまり『決闘』をする、ということか?」
「そうだな、そう取ってもらって構わない」
「いいだろう、その提案、受けさせてもらう」
カワードの言葉を受け、男は僅かに笑みを浮かべる。
「ギルドの規定に従い、決闘を行わせてもらう。お前が勝てば、キャサリンさんとのパーティ結成に口を挟んだりしない。逆にお前が負けた場合は、潔く諦めてもらおう」
「……なるほど、ギルドの規定に、決闘というものがあるんだな?」
カワードが言って、伺うようにキャサリンへと視線を向けると、キャサリンは首を横に振る。
「エゼルヘイムのギルドだけの、地方ルールだ。うちの冒険者達は少々荒っぽい奴も多いもんでね、いざこざを解決するには腕っぷしを比べて強い方に弱い方が従う、としてしまった方が話が早く簡単に済むことも多いんだよ」
「なるほど、それで今回は、俺の実力を図る意味も込めて決闘をする、というわけか」
納得が行き、カワードが頷くと、それに合わせるように男の仲間達――後方に控えていた三人が詰め寄ってくる。
「決闘の形式だが――これはお前にBランクの魔術師と組むに相応しい実力があるかを図る為のものでもある。よって、俺たちBランクパーティ『竜の首狩人』の全員と戦ってもらう」
「はぁ!? ちょっと待ちなさいよ!」
キャサリンが怒りの声を上げ、割り込む。
「四対一って、いくらなんでも卑怯なんじゃないの!?」
「そうは言っても、これは彼と君が組むことで、Bランクパーティ相当の力があると証明するための決闘だ、魔術師の居ないパーティと同等の実力が無ければ、二人だけでパーティを組むという方が不合理だろう」
「キャサリン、落ち着いてくれ、俺は別にこの条件で構わない」
喧嘩腰になりつつあったキャサリンを制し、カワードが告げる。
「むしろ、この条件で良かったのか?」
そして、煽るような口調で男に向かって言う。
「どういう意味だ」
「そのままの意味だ、たった四人で俺を相手にするのか、と聞いている」
「……ッ! 減らず口を……」
カワードの煽りを受け、男は怒りに顔を顰め、また仲間の男達も三人共にカワードを睨み付けた。
「――まあいい、じきに決着は付く、ついて来い」
言うと、男は先導するように歩き始め、カワードはこれに追随する。