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プライドをへし折った悪役令嬢

作者: 下菊みこと

プライドをへし折った悪役令嬢

私、王太子殿下のプライドをへし折ってやりましたの。


初めまして、ご機嫌よう。私はアナベル・マイア・ルイス。公爵令嬢ですわ。私、実は所謂悪役令嬢ですの。


順を追って説明しますと、まず、私は所謂異世界転生というものをしたようなのです。前世で漫画家を目指してたくさんの作品を書いていたのですが、何故か異世界の神さまに気に入られて死後好きな世界に転生する権利を得られたのですわ。そしてこの世界で目が覚めましたの。大好きな乙女ゲームの世界。しかし、私はヒロインではなく悪役令嬢に転生していたのですわ。それもよりにもよって、キャラの中でも一番人気の王太子であるブライアン・ガブリエル・イグレシアス殿下の婚約者!もしヒロインさんが王太子ルートか逆ハールートを選べばボロ雑巾のように捨てられますの!でも殿下は一番人気、多分殿下は確実に狙われますわ!そんなの許せませんわ!せっかくブライアン殿下の婚約者になれるのにぽっと出のヒロインさんなんかに渡したくありませんわ!しかもアナベルの最後は他の悪役令嬢よりひどく、最終的には命まで落としますの!あり得ませんわ!


だから、私考えましたの。


―ブライアン殿下のプライドをへし折ってやると!


何故そんな結論になるかわからないですわよね。でも、一番いい方法だと思いますの。何故ならブライアン殿下がアナベルを嫌い、ヒロインに傾く理由はずばりそのプライドの高さ。いつも正論で自分を諭してくる生意気な公爵令嬢よりも、自分をいつもすごいすごいと持ち上げて、そのままの貴方でいいのですと甘い言葉を囁いてくる可憐な少女の方が可愛いのですわ。ですが、だからといって殿下を甘やかしては殿下の為になりません。ならば、早いうちから殿下のプライドをへし折って、きちんと助言を受け入れられる良い男にしてしまえばいいんですわ。どうです?完璧な作戦だと思いませんこと?


ということで早速、五歳の誕生日。殿下との初対面の日から仕掛けさせていただきましたわ。殿下とチェスで一戦交えましたの。プライドの高い殿下は、俺は強いぞと踏ん反り返っていましたが所詮は子供。中学生の時お遊戯部(別名ボードゲーム部)に所属していた中身は大人の私には勝ち目はありませんわ。ということでまあ結果はお察しの通り私の勝ち。今まで大人達に手加減をされて俺は大人より賢いんだと勘違いしていた殿下はそれはもう可哀想なくらいプルプル震えて顔を真っ赤にしていましたわ。あの時の殿下…涙目でとても可愛かったですわ。そして殿下はしばらくすると、まぐれだ!もう一度勝負しろ!と言ってきましたわ。しかし何度挑まれようと私の勝ち。ズタボロに傷ついた殿下はそれでもお昼から夕方まで粘りましたわ。まあ勝てませんでしたけれど。そしてうるうると潤んだ瞳で次は絶対勝つ!と捨て台詞を吐いて帰られましたわ。まあ、これだけのことをしたら私も大人達からお叱りを受けるかしらと考えていたのですけれど。大人達からは仲睦まじく遊んでいるように見えていたようで結局むしろ褒められましたわ。ただ、お父様からはたまにはわざと負けて差し上げなさいと窘められましたが。


その後一ヶ月が経つと、殿下がうちに遊びに来ましたわ。さあ、勝負しろ!と言ってきた殿下は前回と打って変わってものすごく強くなっていましたわ。中身は大人の私も舌を巻くほどでしたわ。勝負の結果は十勝九敗。さすがは完璧超人俺様王子系になる予定の殿下。どうだ、と踏ん反り返る殿下。いけませんわ。これでは殿下のプライドをへし折る計画が頓挫してしまいますわ。そこで私は殿下を適当に褒めつつ、では次は馬の早駆けで勝負ですわ!と言いました。プライドの高い殿下は、俺は馬の扱いも上手いぞと踏ん反り返っていましたが所詮は子供。大学生の時乗馬クラブに所属していた中身は大人の私には勝ち目はありませんわ。ということでまあ結果はお察しの通り私の勝ち。今まで大人達に手加減をされて俺は大人より馬の扱いが上手いんだと勘違いしていた殿下はいつぞやと同じく、それはもう可哀想なくらいプルプル震えて顔を真っ赤にしていましたわ。あの時の殿下…青い瞳がうるうると潤んでとても可愛かったですわ。そして殿下はしばらくすると、まぐれだ!もう一度勝負しろ!と言ってきましたわ。しかし何度挑まれようと私の勝ち。ズタボロに傷ついた殿下はそれでもお昼から夕方まで粘りましたわ。まあ私の圧勝でしたけれど。そしてうるうると潤んだ瞳で次は絶対勝つ!と捨て台詞を吐いて帰られましたわ。まあ、いつぞやと同じく、大人達からは仲睦まじく遊んでいるように見えていたようで褒められましたわ。ただ、お父様からはたまには勝ちを譲って差し上げなさいと窘められましたが。


その後一ヶ月が経つと、殿下がうちに遊びに来ましたわ。さあ、勝負しろ!と言ってきた殿下は前回と打って変わってものすごく馬の扱いが上手くなっていましたわ。中身は大人の私も舌を巻くほどでしたわ。勝負の結果は十勝九敗。さすがは完璧超人俺様王子系になる予定の殿下。どうだ、と踏ん反り返る殿下。いけませんわ。これでは殿下のプライドをへし折る計画が頓挫してしまいますわ。そこで私は殿下を適当に褒めつつ、では次はテニスで勝負ですわ!と言いました。プライドの高い殿下は、俺はテニスも上手いぞと踏ん反り返っていましたが所詮は子供。高校生の時テニス部に所属していた中身は大人の私には勝ち目はありませんわ。ということでまあ結果はお察しの通り私の勝ち。今まで大人達に手加減をされて俺は大人よりテニスが上手いんだと勘違いしていた殿下はいつぞやと同じく、それはもう可哀想なくらいプルプル震えて顔を真っ赤にしていましたわ。あの時の殿下…頬が赤らんでとても可愛かったですわ。そんなこんなであの手この手で殿下のプライドをへし折ってへし折ってへし折ってへし折りまくる私と、それでも歯を食いしばって食らいついてくる殿下の攻防は十五歳…学園生活が始まるまで続きましたわ。


ー…


学園生活が始まって早三年。そろそろ転入生…ヒロインさんが入学してくる頃ですわ。


「アナベル、何を考えている?」


「ブライアン殿下!すみません、少し考え事をしておりましたの」


「だめだろう。お前は俺のものなのだから、他のことに気を回すな」


かっ…かっこいい!さすがブライアン殿下…!俺様王子素敵…!でも何故かしら?なんだか少しだけヤンデレっぽいセリフだったような…?ブライアン殿下は完璧超人俺様王子系のはずよね?というか、私、結局ブライアン殿下のプライドをへし折ってへし折ってへし折ってきたのにまだ俺様王子系なんだけどどうしたらいいのかしら。このままだとヒロインさんに取られてしまうのでは?


「…わかりましたわ」


「…ふん。なんだ、何を悩んでいる?言ってみろ」


「えっと…ブライアン殿下が他の方に取られてしまわないか心配で」


「はっ!そんなことか。安心しろ、俺はお前以外に興味なんぞない」


「ふふ。嬉しいですわ、ありがとうございます。私、とても幸せですわ」


そうですわね。大丈夫。乙女ゲームの正史と違って殿下と私は信頼しあっていますもの。きっと大丈夫ですわ。


…そしてヒロインさんが転入してきて、物語は幕を開けました。ですが彼女の皆様からの評価は愛らしいご令嬢ではなく変わったご令嬢でしたわ。なぜなら、折にふれ攻略対象の皆様に言い寄っているからですの。婚約者がいる方ばかりなのにね。その上多数の殿方に言い寄るなんて、やっぱり逆ハーレムルート狙いだったのかしら。ただ、ブライアン殿下は何故か他の攻略対象者の方々と違って、ヒロインさんに見向きもされなかったようですわ。何故かしら?もちろん嬉しいけれど。そしてもちろん、ヒロインさんのその浅ましさはすぐに噂になりましたわ。それどころか、何股もかけていたためブライアン殿下以外の他の攻略対象者の方々からも蛇蝎の如く嫌われているようですわ。学園にも居辛くなって、困っているそうですの。


ブライアン様以外の攻略対象者の方々とその婚約者様方はちょっといざこざはありましたが、最終的に丸く収まってらぶらぶいちゃいちゃのご様子ですわ。


まあ、色々ありますけれど、逆ハーレムなんて最悪なものを築こうとされたヒロインさんはざまぁな結末になりましたし、攻略対象者の方々もその婚約者様方も幸せになれましたしハッピーエンドではないでしょうか?


私?私はブライアン殿下から信頼を受け、お互いに尊重し合える相思相愛の関係になれましたの。とても幸せですわ。


信頼を得るために体当たりでぶつかっていく。それも一つの選択肢ですわ。

短編集をまとめた連載小説もありますのでよろしくお願いします

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