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第4話 異世界ご飯と夜のお楽しみ会

ここのギルドは3階建構造になっている。

3階が俺たちがさっきいたギルマス室兼展望室(主にギルマスが町の警備兵への支持を飛ばすためこの仕組みなのだとか。ギルマス不在時や就寝時などはギルドのサブマスターがこれを引き受けるとかでどのギルドも2、3人のサブがいるらしい。)

2階に登録冒険者向けの宿舎室。

そして1階が食堂になっていた。


「さぁてぇ、お仕事後のお酒タイムにゃ~♪魔法使いさんは~お酒はいけるクチかにゃ?」

「そうですね…。好きなものはフルーツ系や梅酒や柚子酒なんですが…。

そもそもその手のお酒はここにあるのか…。酸味のある果実のお酒が好きですね。

ただ、割と弱い方なのでアルコール度数4%を超えるとすぐに酔いますね…。」

「ふむふむ。よくわからんが果実酒が好きなんだにゃ?

ヘーイ!にいさーん!こちらのカウンターに果実酒2つと果実のジュースを2つ、あとはおつまみに鳥さんの揚げ物をヨロヨロ~!」


この子、こんなに見た目小さいのにお酒とか好きなのか…。

見かけによらないと言うかなんというか…。


「見た目は小さいのは私らの種族の特徴にゃ。その代わり、おっぱいはおっきいにゃよ。

私は他の種族の血も混ざってるからね。」

「ギルマスは獣人の中でも小人種族の猫獣人と、その…お胸がたわわで美しい容姿が特徴のエルフ族のハーフさんなんですよ。」


なるほど…。そう言った組み合わせの種族も居るんだな…。


「お姉様もギルマスもずるい…。私もおっぱい欲しいです…。」

「おっぱいは自然とおっきくなるから別に気にしなくて良いのよ。貴方はまだ12歳なんだから。

あと2年もすれば今の私に追いつくくらいはなるでしょ。私が今15歳なんだから。」


魔法使いちゃんは12歳で戦士ちゃんが15歳か…。

幼いなとは思っていたが。


「あ、そう言えば先程からひとつだけ聞きたかったのですが、水手紙とはなんでしょうか?

私には聞き慣れないものだったので。」

「あにゃ?水手紙を知らないとは…。

ふむぅ…。これはますます持って本当に本当なのかもだにゃ。

んーーとっ。さっき、私の後ろに水が上から下へ向けて流れてる噴水があったでしょ?

アレを使って、遠くにいるギルマスにメッセージを送る魔法技術が水手紙なのにゃ。

水手紙が来るとあの噴水にメッセージが浮かび上がるのにゃー。」

「なるほど。面白い技術ですね。」

「こっちにはそっちが持ってる技術のが色々と驚きにゃ。まぁその辺も含めて全部、東の魔女に見透かしてもらうとするにゃ。あの人のスキルなら貴方の正体など嘘偽りなくいっぱつだからにゃ。」

「ははは…。なるほど、私はまだ絶賛罪人扱いなのですね…。」

「いやいや、そういうわけではないにゃ。ただ、貴方も説明に困ってるようだからね。

ここは直接君のいろんな事を東の魔女に全て見てもらうのが手っ取り早いかなと。

明日の朝にでもメッセージは送っておくから、ひとまず東の大国へ向かって欲しいのにゃ。

護衛兼見張り役としてこの2人を連れて行った上でね。」


ふむふむ。この子たちも…か。

あれ…そう言えば俺よく考えたら多分ここで使える金とか持ってないけど大丈夫なのかな…。


「んにゃ?あー…。お金…お金かぁ…。ふむ。ならこの手しかないね。

とりあえず、2人には彼を東の大国ギルドの東の魔女の元へ連れて行く事をクエストとして受諾してもらう。

クエスト報酬は事前報酬と達成報酬の2つを用意しよう。

彼を無事護衛して東の大国へ送り届けて欲しい。

東の大国へ行くまでの食費や宿泊費などはその事前報酬から出すように。

これは私の個人的な依頼でもあるから、東の大国までの鉄道代までは出せないけど、まずは中央皇国に向かいそこにある中央皇国ギルドで私、もしくは東の魔女からの水手紙による指示が来るまで待機。

指示を聞き次第その指示に従い行動する事。

以上!

わかったかにゃ?2人とも?」


ほんとこの子、仕事モードになると全体的に言動がキリッとするな…。

いや、俺も人のことは言えないが…。

そういや心の声聞かれてるんだったか…。

もうどうでも良いけど…。


「は、はい!その任務、喜んで受諾させて頂きます!無事魔法使い様を東の魔女様の元へお連れいたします!」

「まぁ、護送任務なんてそれこそ熟練冒険者のが良いかもだけど、君たちはお互いにこの魔法使いさんと心を許しあってるだろう?

だから、今回は君たちにこのクエストを依頼する。

無事、任務を果たしてきなさい!

はぁ…。それにしても、君たちと一緒に行った先輩冒険者たちの死はとても辛い報告だった…。

このギルドを何10年と納めてる私にとっては可愛い子供の頃から知る家族みたいな物だからね…。

仲間の死は今までもたくさん見てきたけど…慣れるものではないね…。」

「私も、10年ほど前に友人を亡くしていますが、友の死こそ慣れて良いものではないと思いました。

あわせて、誰かが亡くなった時に涙を流すことができないほど辛いことはないなと私も思いましたよ。」

「そうだね…。」


俺の隣に座っていたギルマスが俺の耳に手を当ててコソコソ声で話しかけてくる。


「ねぇ、魔法使いさん。ひとつ、私からもお願いだ。

この子たちと3人きりになった時に、この子たちが先輩たちの死に対して強い罪悪感を感じるような事があれば、どうかお願いだ。この子たちを思いっきり抱きしめて良いから泣かせてあげて欲しい…。受け止めてあげて欲しい。頼まれてくれるかい?」


喜んで。


どうせ、心の声が聞こえるならと俺は心の中でそう返事した。


「報酬は私のおっぱい直揉みで良いかな?」

「それは、どうしてもになった時まで遠慮しておきますよ。」

「連れないにゃー。そこは男らしくベッドの中までに決まってんだろ?とか言って見ても良いのにゃ?」

「貴方は痴女ですか…。」

「うーーーっ!にゃーは今発情期なのにゃ!

毎年この時期は性欲を抑えるのに一苦労なのに、いくら私が心の声を聞けるのも知らないとは言え、あんなことやこんな事を言われたら…、にゃーじゃなくてもその気になるにゃ…。」

「すみません…。私も知らなかったとは言えど色々と言い過ぎました。とりあえず忘れていただけると幸いです♪」


ニッコリと微笑みつつ心の中で一言。


2人にはくれぐれもご内密に!!


「幼女性愛者と思われる君が、うちの可愛い幼女魔法使いに手を出さない事を願っておくよ。」

「はっ倒すぞお前。」


おっと…。思わず素が出てしまった…。


「さてさて、ご飯を食べたら3人でお部屋に戻って今日はゆっくり休むと良いにゃ。明日の朝は早いにゃよ。」

「あっと…、そういえば私も彼女たちの部屋に泊まるんでしたよね?」

「心配せずともベッドはひとつだから3人で一緒にねんねするにゃ!」

「心配したのはそこだけどそこじゃねーよ。

とりあえず、私は壁にもたれるか机にでも突っ伏して寝ますよ。」

「そんな…!ダメですよ!命の恩人にそんな真似できるわけないじゃないですか!それなら私達が床に寝ますから魔法使いさんがベッドを使ってください!」

「はいはいー。夫婦喧嘩ならお部屋でやるにゃー。早く部屋に戻ってねんねしてこいにゃー。」


突っ込む間も無くギルマスに背中を押されながら俺たちは宿舎の方へ促されるのであった。


「ここが私とお姉様のお部屋です。」


おぉ…。見事なまでに女の子の部屋って感じだな…。

ぬいぐるみにピンクを基調としたカーテンやベッド周り…。

一歩間違えればラブホの一室だ…。

お部屋の広さも相まって…。

お風呂は別のエリアにあるようだがシャワーは各部屋あるようだ。意外とすごい設備だな。

このギルドは…。


「んじゃ、私は自分の部屋に戻るよ。何かあれば遠慮なく来ていいよー。

夢かどうか確かめたいならいつでもウェルカムだよ?」

「遠慮しておきます♪」


ギルマスを見送り、部屋に戻ると2人が寝巻きに着替え始めていた。

これはお約束のきゃー!出てけー!展開かと思ったのだが、赤面しつつも手を止める気配がない。

このままだと目の前で下着まで脱ぎかねない!と思い俺はすぐさま外へ出る。


しばらくして部屋の中からコンコンとノックの音。


「着替え終わりました。どうぞ、お入りください…。」


部屋に入ると少女戦士の方はまだ下着姿のままで顔を赤くしてそのままベッドに腰掛けていた。

こういうシチュ自体は嫌いじゃないが、夢の中とはいえ少女にこんなことはさせたくない。


「どういうつもりかはわかっていますが、私は別に貴方と結ばれたくて助けたわけではありませんよ。服を着なさい。それに、女の子がむやみに男の前で肌を晒すものではありませんよ。」


ひとまず、彼女が着る寝巻きの場所もわからないので布団をかぶせて隠してやる。


「…。お優しいんですね。

貴方なら確かにこのような行為を甘んじて受け入れないとはわかっていましたが、今の私はお金もないので出来るお礼がありません…。ですからせめて身体で返そうと…。」

「自分を大切にして下さい。いつか本気で恋をした時に後悔することになりますよ。

そしてもし、私が貴方の命を救ったことで私に好意を抱いていたのだとしてもやめて下さい。良いですね?」

「はい…。」

「ん、良い子だ。」


俺は優しく戦士ちゃんの頭をなでなでぽんぽんする。

なぜあんなところに居たかは知らないが、まだまだ幼い少女だ。

きっと何か大きな理由もあるのだろう…。

今は聞く気は無いがいつかこの子達と長い旅をすることになったら聞かせてもらうとしよう。

それよりも今は…。


「君もこっちへおいで。今日は疲れたろう。辛かったろう。よく、頑張ったね。」


報酬のおっぱい直揉みはともかく、俺はギルマスとの約束通り2人を抱き寄せて優しく頭を撫でて背中をポンポンと叩いてあげた。

途端に2人は今まで抑えてた感情がようやく溢れてきたのだろう。

2人は俺の胸の中で声を上げて泣いた。

たくさん泣いた。

この子達に今日まで何があったのかは知らないが、今はゆっくり泣かせてやろう…。


しばらくして、泣き疲れて落ち着いたのか、2人は心地よい寝息をたてて眠り出していた。

俺は眠った2人をベッドに寝かせて、灯の落とされたギルド内を歩き外に出てみた。


「ほんと…夢にしちゃ長すぎるな…。

俺の肉体はもしや熱中症でぶっ倒れてそのまま救急車で運ばれたまま眠っているとかなのか…。

こんなに長い明晰夢も初めてじゃないが、確かにいつも以上にリアルすぎる。

特に生活している時間が完全にリアルタイムだ。

いつもの夢みたいに時間が飛ぶような感覚もない。」


ギルドの扉がギィッと開き誰かが歩いてくる気配がする。


「こんな時間に夜涼みかにゃ?」


ギルマスが後ろからにひっと顔を出して俺を見てきた。

やっぱ可愛い。思わず頭を撫でてやる。


「ふにゃぁぁあんっ♪んもぅ…発情期の獣人族はこんなのでも感じちゃうんだから、ダメにゃぁ…。せめてベッドの上でお願いしたいにゃ。

という冗談はさておき…私との約束を守ってくれたみたいですね。

ありがとうございました。」

「良いよ。これくらいなら安いもんだ。」

「おっぱい揉ませてもらえるなら?」

「ほんとお前一回引っ叩くぞ。」

「叩かれるならお尻がいいにゃ…。獣人族はお尻を叩かれると気持ち良いのにゃ…。」


ギルマスがもじもじしながら尻を向けてくる。


「あぁもう。やりづれぇ…。」

「ふふっ、でもようやく心の声と口から出る声が同じになったようだねー。

それが本当の貴方なのかにゃ?」

「まぁ、そうだよ。多分…。

癖みたいなもので、初対面の人とか心を許してない人にはつい自然と敬語が出ちゃうんだよ…。」

「んじゃ、にゃーは最初に貴方が心を許した相手ってことになるのかにゃ?かにゃ?」

「いささか不服だけどね!」

「ところで、貴方自身もそろそろなにか疑問に思う事が出てきてるんじゃないのかにゃ?」


そう、それだ。

俺もこんな状況は夢だと信じたいところだったが、スマホには当然メールも入ってこないし気がつけば電池も切れている。

いつもの明晰夢なら何故か携帯に普通にメールは来るしつぶやいたーも観れるのだ。

それに、いつもの夢でも五感ははっきりしていた。

だが、流石に寝てる時に見る夢ゆえに人間の三大欲求のうち2つの食欲と睡眠欲を感じることなどなかったのだ。


「さらっとながしてるけど、性欲ならいつでも受け止めるにゃよ?」

「あーもう遠慮するのもめんどくさくなってきた…。お前もう、ちょっとモフらせろ撫でさせろ。」


ここが本当に異世界などという証拠もないのだ。

確かに俺は面白半分で自分の世界における扉のウォールアートに、このネックレスを異世界の鍵だとかざしたら気がつけばここにいたわけだが…。そんな馬鹿な事が現実にあるわけがない。


などと考えつつギルマスのあまりにも程よい手触りのケモ耳をもふり頭を撫でハグをする。

あーーー、ぐうかわ。たまんね。


「もう~っ遠慮なしなんだかにゃあっ…んっ…ダメにゃ…っ、撫ですぎにゃ…。ふにゃぅんっ。

そ、そんなことよりさっきあんた聞き捨てならない事言ってたにゃ!ネックレスがなんだって?」

「ん?あぁ、これ。俺が作ったアクセサリーなんだよ。綺麗だろ?

これを子ども心に壁に書かれた扉の前にかざしたらそのまま熱中症でぶっ倒れたみたいでな。」

「…?ちょっとまつにゃ。そのネックレスの石!よく見せるにゃ!!」


俺は首からネックレスを外しギルマスちゃんに見せる。ってあれ?なんか石の色が変わってる…。


「これ…。東の魔女が長年研究してた転移石に似ている…。これも魔法使いさんの国のものにゃ?」

「そうなるとは思うけど、それ、その壁に描かれた扉のウォールアートの前に転がり落ちてた石なんだ。

おかしいな…。拾ってつけた時は綺麗な薄黄緑色だったのに。」

「ほぼ間違いないにゃ…。やっぱあんた、異世界人にゃ!」

「だろうねぇ。俺自身には異世界からここに来たって感覚がまだ無いんだけど…。

そろそろ信じざるを得ない気がしてきてるよ…。

しかしこの石…何故かは知らないが偉い綺麗な赤色になったな…。」

「薄黄緑色から赤色に…。それも東の魔女の作った転移石と同じにゃ。

力を使い果たすと石の色が赤くなるんにゃ。ひとまず、朝一で水手紙を送らないと…。」

「ん、頼むよギルマスちゃん。しかし何故こんなことに…。流石に信じられん…。」

「ん…。大丈夫…?おっぱい揉む?」

「それは遠慮しとく。」


そうして、俺の最初の異世界での夜は更けていった。

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