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第18話 志向のプリンと夜の語り合い

夜の街に繰り出し始めた我々強すぎる人たち一行。

元国家レベルの盗賊団ボス

西と東双方の国のギルマス

大賢者とその側近(まだDランクだけど…)

知る人ならば恐れ多くて近づけないレベルのパーティである。


この世界の街の作りについて、道中で聞いた話によると各国の町並みは鉄道の駅も近いこともあり、城下町周辺が特に栄えているらしい。

ギルドの周辺は主に冒険者向けの施設が多く、武器屋やアクセ屋がメインらしい。

尚、魔女さんからは俺の作ったアクセは何もかもが、国宝を通り越えて世界遺産レベルになるから売ることを硬く禁じられた。


その代わり、俺の作るアクセは俺の存在を世に知らしめた後に、S級冒険者向けのクエスト報酬として簡単なものを配らないかという話を持ちかけられた。


当然、あまり数は作れないからブレスレットとか簡単なものがメインになるだろう。


問題は材料に用いるパワーストーンに限りがあることだな…。

俺の世界の石とこの世界の石とで力の差もあるだろうし…。

その辺は、俺の世界の石がこういう条件で生まれると言う話をして、そこからその条件に合致する産地を探してみようという話でひとまず落ち着いた。


俺がこの世界で生きる為の収入は、このアクセ作りとそれに対する研究、そしてその研究成果の提供などに応じての収入がメインという話になった。ぶっちゃけめんどくさいが、2人の温情はありがたい。

これでもかと言うレベルで俺や俺の周りの人にまでかなりの好待遇をしてもらっている。

まぁ、盗賊ちゃんだけは少し気の毒だが…。

これも本来なら死罪か、子どもにするレベルではない奴隷労働をさせない為のものだろう…。


2人は口には出さないが、かなりいい人達なのは本当によくわかった。

これが、俺がもし異世界人じゃなかったら果たしてどうなっていたんだろうな…。


そんなこんなことを話したり思ったりしてるうちに目的のお店に着いた。

そこそこな大きさのお洒落なカフェだ。

二階にもテラス席があるし屋上にも席があるみたいだ。

そして、こんな夜でもテラス席に人が居る。結構流行りのお店みたいだな。


「さぁ、行こうか。ここは私が持つよ。

みんなで話でもしながら美味しいプリンでも食べよう。」


屋上のテラス席には、魔女さんとその一行専用スペースが用意されてるらしい。

元々、このお店は魔女さんの行きつけということで完全な専用スペースが設けられているらしいのだ。

城下町の住人には、タイミングがよければ魔女さんに会える席としても有名らしい。


「さてさて、これで飲み物とみんなのプリンは行き渡ったかな?では、乾杯。」


チンっとみんなが軽くグラスをぶつけ合う。


「これがこの世界の…ぷりん…!頂きます…。」


ほぉぉおぅ…。

程よいトロトロ具合に程よい甘み…。

しかも、何かしらフルーツの果汁が入っていてさらにほのかな酸味が広がりこれまた美味い…。最高だ…。


「聞くまでもなくお気にめしたようだね。ここの店のこのメニューは特に私のお気に入りでね。

君の世界にも似たような料理があるのと、君がそれをたいそう気に入ってるのを知っていたからいつか連れて行こうと思っていたんだよ。まさか、こうも早く君から私を誘いに来てくれるとは思わなかったけどね。

よほど恋しかったのかい?」

「こっちの世界に来てこのかた色々とあったせいからか不眠症がさらにひどくなっててさ…。

ここ数日全然寝付けてないんだよ…。そんでか知らないけど、唐突にコーヒーとプリンが食べたくなったんだよ…。良かった…この世界にも限りなく似たものが存在していて…。」

「私も嬉しいよ。私のお気に入りが君のお気に入りと同じってだけでとても胸が高鳴る思いだ。

キュンキュンくるよ。

はぁ…。しかし本当、400年も生きてきてこんなに人に恋したのは初めてだ…。

本気で誰かを好きになると、こんなにも胸がときめくものなんだね。」


完全に乙女の顔のそれだ。

憂いを帯びた瞳でこっちを見られるとなんというかほんと俺も胸がドキドキするし顔が熱くなってくる…。と言うかこれ…ん…?


「なぁ、魔女さん…。これお酒入ってるよな…?」

「あぁ、私たちの分はアルコール入りだよ。は…!しまった!

君はお酒が弱いのだったかな…?大丈夫かい…?」


いままで酔いつぶれるほど飲んだことないからよくわからないが、とりあえずアルコールが回ってきてるのはわかった。


「だ、大丈夫ですか賢者様?お水もらいますか?」

「そうだぞご主人様!苦しくなったらオレが口移しで水飲ませて介抱してやるからな!」

「盗賊さん。貴方は賢者様に近付き過ぎです!

いくら、賢者様が迷惑してるような素振りを一切見せないからって…。」


この幼女2人の喧嘩(?)はなんだかんだで初めて見るな…。

そう言えば、盗賊ちゃんは元々この2人とは相容れないみたいなこと言ってたよな…。


「こらこら~喧嘩しないの。

俺は盗賊ちゃんのこういう方向性の優しさも嫌いじゃないし、素直に俺に対して心配してくれる妹ちゃんも好きだよ。」


2人の頭を優しく撫でてやる。


「ふぁぁあうっ…まったく…頭を撫でられるのは大好きだが、すぐ感じちゃうんだからその…人前ではあまり撫でないでくれよ…。」

「ねぇ、盗賊。貴方はその…賢者と同じ部屋で寝るのに抵抗ないの?男の人…なのに。」


やはり気になっていたようだ。


「あぁ?オレはそもそもご主人様の性奴隷だぞ。

抵抗があるも何もオレは求められりゃ逆らえない。と言うか抵抗なんかあるわけないだろう?

好きなんだし。お前らこそどうなんだよ?大賢者様とやっぱ一緒に寝たいのか?

人のことは言えないがマセてんなぁ~お前も。」

「まだ、何も言ってないでしょ!?

いや…そりゃ…まぁ…私も甘えてみたいなぁって時はあるわよ…。

見た目とか体つきは全然違うけど、その優しさは父様みたいで…。つい…ね。」


あ、そのワードはマズイ気が…。


「お前らのそういう所があまり好きじゃないんだよ。あのな…。わかっちゃいるとは思うが、この人はこの人で、お前らのお父さんじゃない。そこは下手に重ねちゃダメだ。きっと、あいつも辛い思いをしかねないぞ…?」


あれ?予想以上に大人な対応…。


「うん…そうだよね。

私たち2人共、両親を亡くして日が浅いからなおさらこうなってるのかな…。私は賢者様を…妹は魔女様を…それぞれ親とつい重ねて見ちゃう…。」

「そっか…。お前らはいいよな。そうやって親に愛されてずっと今まで生きてきたんだからさ…。

オレは、誰かに愛されること自体がご主人様が初めてだったんだ。

だから…偉そうに言ってるけどオレはきっとお前ら以上に、愛に飢えていたと思う。

この人は優しいから、ついつい甘えちまう。甘えると甘えただけ頭ナデナデしてくれるのも…心地良いし…。」


それを聞いて魔女さんとギルマスちゃんがウンウンとうなづく。


「そんなに…この短期間でたくさん頭撫でてもらったんだ…?」

「あぁ、羨ましいかー?ん?んー?」


盗賊ちゃんが戦士ちゃんを煽る。


「そういえば、最初会った時は言葉がわからなかったから、敵対心がないことを教えるのに妹ちゃんの頭をなでなでしたり、ギルマスちゃんから頼まれて君たちを抱きしめたっけ…。

たった3日しか経ってないのに、わりと前のことのように思えて来てたよ。」

「私ももう少し撫でてよ。別に怒ったりしないから。」

「あいあい…。」


俺は肩に戦士ちゃんをもたれさせ頭を優しく撫でる。


「ん…。たしかに貴方の手ってとても優しくて…心地良いね…。私も結構好きかも…。」

「そりゃそうだよ。彼の手は、放出できないだけで常にとても優しい魔力に満ち溢れている。

その手に触れたり触れてもらえるだけで癒されるのは、彼そのものの固有魔法みたいなものなのかも知れないね。」


そういうと魔女さんが俺の手を取り、自分の頬にそっと触れさせる。


「私もね、君の手…大好きだよ。とても心地よい素敵な手だ。」

「にゃーも、賢者のおてて大好きにゃっ!賢者のなでなでは本当にきもちぃのにゃ!」


今度はギルマスちゃんをなでなでもふもふしてやる。


「しっかし…俺本当に異世界…来ちまったんだな…。この夜景も君らの見た目も…俺の世界には間違いなくなかったものだ。

いや、もしかしたら俺が知らないだけで、似たようなものはどっかの国にはたくさんあったんだろうが…。俺はきっと今まで凄く狭い世界の中で生きてきた。

本当に遠くへ行くようなことって最近あまりなかったし…。」

「寂しいかい?」

「いんや、別に…。

元の世界での仕事が無断欠勤になってるだろうし、そもそも今頃行方不明になってるだろうしね…。

まぁ多少は誰かに心配とかされてっかなーとかそんなことは考えたりもするけど…。」

「なぁ、ご主人様…。こんなこと聞くのは凄く酷かもしれねぇってのはわかんだけどさ…。

もし、元の世界へ帰れるってなったらオレたちみんな捨てて、元の世界へ帰っちまうのか…?」


盗賊ちゃんの言葉にみんなが押し黙る。

以前この世界に来ていたであろう安倍晴明に至っては自ら帰ったのかどうかは謎だが、

元の世界…つまりは日本へ確実に帰還している。


それならば俺は…。


たしかに俺の事を好きになってしまったなら真っ先に考える疑問だろう。


県外の恋人に会いに行くとかとは訳が違う…。

世界を隔てた恋人なんてそう簡単に会いに行けるものかなんてわからない…。

当然の疑問だ。


俺も…みんなに会えなくなるなら…。


「今は、帰りたくない…かな。戦士ちゃん、妹ちゃん、ギルマスちゃんに魔女さんに盗賊ちゃん…。

みんなと会えなくなるのは…俺も辛い。」

「そうか…。会えなくなるのが辛いのは…何でだよ?」

「そりゃ…俺も…みんなのこと好きになって来てるから…だよ…。

と言うか、むしろこれ以上好きになっていって良いものかもすげぇ悩んでる…。

俺、こんな状況で言うのもなんだが、失恋するまで1人の女の子しか生涯愛さないって胸に誓ってたんだよ…?

モテたことなんて、28年も生きてきて1回しかなかったし、それも1週間で終わるような身体目当ての恋だったしさ…。

最初はその子と一生このまま居られるんじゃとか考えてた。今、思い返せば馬鹿馬鹿しい話だよ…。

そんな俺が君らに惚れても良いのかなって…。下手すりゃ…君らの思いも…。」

「色々と悩みすぎなんだよご主人様は…。好きなら好き。それで良いじゃねぇか。

少なくともオレはもう本気で惚れてるし、ここにいるみんなそうだと思うぞ?

その1人の女の子を生涯かけて愛するって言うのは、まぁたしかに少しどうかと思うが…。

要は、自分は今までモテるような男と思ってなかったから、自分を好きになってくれるような相手には生涯かけてその気持ちに答えるべきって考えだったんだろ?真面目すぎんだろ…。」



あははは…。やっぱり真面目すぎんのかな俺は…。


「賢者くん、むしろ君は、君に対して好意を持つ女性を1人に絞って他の選ばれなかった子達を簡単に切り離せる勇気はあるかい?

きっと君は性格的に、どっちの優しさも取りにくいからそうやって悩んでいるんだろう?

1人を選んで、他の子に諦めさせて次の恋を探させるという優しさ。

逆にみんなを選んで平等に愛すると言う優しさ…。

どっちも君の性格的には選びたくない選択肢だろうね…。

とりあえず、私はここにいるみんなが私と共に君の嫁になっても構わないよ。」

「にゃーもだにゃ!でも、今のこのメンツの中では魔女だけが仲間はずれにゃね。

何故なら、賢者の今後の住まいは我が西の国のお城になるのだから!」

「あぁ、だから転移魔法用のゲートを城に設置させてもらう。

彼の世界の知識や技術を元に、色々と参考にして【充電式】のゲートを作り出す研究をして見てるんだ。

これが完成すれば6時間に1回はゲートを使って任意の場所に行き来出来る予定だ。ゆくゆくは制限なく使えるようにしていくつもりだ。魔王様にでも転移魔法の話が聞ければ手っ取り早いのだがねぇ…。

あと、他にも色々と作って見てるものがある。

そのうち一つは、君へのプレゼントだよ賢者くん。明日の朝を楽しみにしていてくれたまえ♪」

「チッ…、相変わらず準備の良い女にゃ…。何もかも見透かしたように計算づくなのが本当に鼻に付くにゃ…。

まー、それだけ頭が回る故なんだろうけどにゃ…。」

「しかしアレだな…。オレも色々と冒険とかはしてみたいかもだなぁ。

綺麗な景色が見える場所に行って写真とかも撮ってみたいし…。」

「それなら明日は早速、私の作ったものを使ってお出かけしてくると良いよ。

まぁひとまず、明日の朝を楽しみにしていてくれたまえ。

ふぁぁぁ…、そろそろ眠くなってきたな…。良い時間だし帰ろうかみんな。」


そして俺たちは城に戻る帰路についた。

帰路の途中で盗賊ちゃんが俺に小声で話しかけてくる。


「なぁ、ご主人様…。その、今晩は…一緒に寝てくれるか…?」

「あまり深くは聞かないが…俺が過去話…話させたせいかな…。」

「うん…。わりぃな。その…甘えさせてくれ…。胸がこう…なんかチクチクするんだ…。

だから、嫌じゃないなら…。」

「よしよし。いやなんて言うわけないだろう?好きなだけ甘えてこい。

俺も少し…、甘えられたい気分だよ…。色々と考えすぎてね…。」


これからのこの世界でのこと…。

こんなにも俺を愛してくれるみんなのこと…。

俺はどうしていけば良いんだろうな…。

ただ、一つ思ったのはなるべくみんなの笑顔を絶やしたくないって事だ。


「あ、そうだ…。なぁみんな。写真、1枚撮らせてくれないかな?

この世界に来て、みんなと出会った思い出に。」


城に帰り着くと俺は一人一人と一緒に自撮りをしていった。

大切な思い出をたくさん増やしていきたい。


きっと、少しづつ俺も変わっているんだろうな。

みんなと一緒にいたい。

みんなとたくさんの思い出を作って色んな場所を見に行きたい。

そんな気分でいっぱいだ。


俺は寝室へ入り服を着替えてベッドに横になる。

着替え終わった盗賊ちゃんももぞもぞと俺の横に入ってキュッと抱きついてくる。


「へへっ…あったけぇ…。なぁご主人様…またギュってしてなでなでしてくれよ…?」

「あぁ…喜んで…。」


俺は盗賊ちゃんを優しく抱き寄せて頭を撫でて軽く頬にキスをしてあげた。


「おやすみ、盗賊ちゃん。」

「ん、おやすみなさい…ご主人様…。えへへ…。だぁいすき…。」


ぐぅっ!なんて可愛いんだ!!キュン死する…!!この子といると俺はいつか一線を超えてしまう!


盗賊ちゃんを腕の中で抱きしめながら寝かしつけた。

俺もこのまま眠りにつこう…。

今日は心地よく眠れそうだ。


さて、明日はどこへ行こうかな…。

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