第15話 フラグ構築と女子会
結局皇国ギルマスが寝込んでしまった為、俺は午後からは魔女さんの監修の元で魔法を習うことになった。
万が一アクセサリーが手元にないとか奪われてる状態の時に俺が戦えるように…って言うことでだ。
せめて掌から火球とか雷撃とかがアクセなしでも出せるなら…。
と思って魔女さんに色々と魔法を教えてもらうも、まず詠唱系の魔法は使えなかったし、魔法陣を用いるものも使うことはできなかった。
「うーん…。魔力はとてつもない量があるのに何故魔法が使えないのか…。
やはり君の作り出したアイテムじゃないと君は魔法を使えないということなのか…?
魔法を発動する為の何かが君と私達では違うという事か…。
何かしらのアクセを身につけていると確実に私が教えた魔法も使えるのに、何も身につけていないとまるで使える様子がない…。
これは困ったね…。」
「こうなったら、最悪何か小さな指輪型のアイテムでも作るかだな…。指輪型アイテムは練習はしてるんだけど、小さすぎて強度も確保できないし、石もはめ込み難いから難航しててさ…。」
「ふぅむ…。しかし、就寝時や入浴時でも邪魔にならないようなアイテムも一つは作って持っておくべきだろう。何も持っていなければ君の秘密を何かしら知ったものが、君を討伐しに来ないとは限らないからね。
盗賊ちゃんの件もあったしね。
少なくとも君という最強の大賢者が、我が国に現れたアーマードドラゴンを討伐したという報告は西と東と中央の冒険者達には知れ渡っている。
君は今や冒険者達の間では早く会ってみたい噂の人みたいなものなのさ。
特に中央と西に所属している冒険者にとってはね。」
なるほどなぁ…。
しかし本当に身を守るためのアイテムを早めに作っておかないと…。
盗賊ちゃんがポンコツちゃんだから良かったものの、あれがもっと腕利きの暗殺者だったら俺は今こうやって生きちゃ居ないだろうし…。
「あ、そうだ。
そういえばここの世界に来る前に骨董屋で手に入れた【弥勒菩薩】のチャームがあったな。
俺が手を加えてハンドメイドアクセにしたわけではないけど、これを単品でつけると魔法が使えるか試しておくか。」
俺はごそごそとカバンを漁り、骨董屋で手に入れたチャームを取り出す。
そいつを首から下げて、掌から雷撃を放つイメージをしてみる。
「うーん…。なんか力は集まるイメージはあるけど、魔法はやっぱ出ないか…。」
「ふむ…、ならば君の世界の術のイメージで使ってみてはどうだい?
私たちの世界に来ていたセーメーが使ったような術とかは?」
「なるほど…。一理あるな。ナウマクサマンダバサラダンカン!」
不動火界呪。
不動明王の力を借りて悪霊を払う術だ。
「おぉ…。言われた通りだ。今は力を込めてなかったから小さかったけど、掌から火球が出た!」
「うむ。これならいざという時なんとかできるだろう。うーん、しかしほんと君には興味が尽きないよ。
色々と考える要素が多くて私も実に楽しませてもらっている気分だ。」
チャームは普段は賢者のブレスにつけておくことにした。
このブレスは俺にとって本当に最強のブレスだからな。
弥勒菩薩の力でより最強に!って魂胆だ。
「さて、午前中に作ってたフレームの方はどうだい?」
「そうだな。塗料もいい感じに染み込んで乾いてきてるし、この感じなら日が出てるうちにオイルフィニッシュを繰り返せば、案外今日中に仕上げられそうだ。」
早速、塗料の乾いたフレームにアマニ油を塗布し布で磨く。
油を塗り、乾いた布で磨く動作を何度か繰り返していき、途中で乾燥。
乾いたら、今度はより目の細かい紙やすりとアマニ油で水研ぎのような要領でさらに磨き上げ、最後にもう一度アマニ油を塗り、よく乾かす。
油がある程度乾いたら、レジンとカーネリアンのさざれ石を使って、先端部に樹脂の鏃のようなものを造形していく。
レジンをUVライトでよーく固めて…。
あとは、レジン部分がなじむようにリューターで境界線がツライチになるように削り込み、レジン部分も合わせてオイルで水研ぎをする。
これをあとは時間をかけて乾かせば完成だ。
「どうやら、ほぼ完成したようだね。うんうん、これはなかなかに凄まじいパワーを宿しているね。
さてさて、魔力を込めたらどんなことが起こるか…。オイルが乾いたら一度試運転してみよう。
私でよければ付き合うよ。」
「うん、ありがと。ギルマスちゃんと2人同時に相手してくれるんだよね?」
「そうだね。西の国での君のお披露目会の模擬戦も兼ねて…かな。
そういえば、君の剣は戦士ちゃんにあげていたはずだが、新しい剣はあるのかい?」
俺は、今まで作ったフレームの自分の中での失敗作を継ぎ接ぎして再構成した、新たな剣を見せる。
良くあるのだ。失敗と失敗を足すと成功になる俺の中での事例が。
そうだな…。今までのやつは名前が長すぎる。
こいつのことは無限の剣に変形するモノと言う意味で【インフィニティブレード】とでも名付けよう。
戦士ちゃんにあげた剣は【ヴァリアブルソード】とでも呼ぶか。
「ほほう…。継ぎ接ぎして再構成か…。これはまた新たな力を感じるね。
良くできている…。以前の剣とはまた違う新たな力…。実際どうなんだい?」
「これは、俺の世界における、俺の国に伝わる刃物…。【刀】をイメージしたものだ。
要するに前の剣は叩き切るような…強度を優先した剣。
刀ってのは押し切るとか引き切るとか本当に切断する事に重点を置いたものだ。
強度よりも切れ味を最優先してる刃物だ。そうだな…。料理で使う肉切り包丁あるだろ?
あれを、人を殺せるレベルで昇華させたモノって行った方が多分イメージ的には伝わるかな…。」
俺は俺の知る限りの、俺の世界の刀や刃物に対する知識を話す。
「これは、俺の知り合いの刃物職人に教えてもらったものなんだが…。」
俺は工房に置いてあったぺらぺらの銅板を取り出し、フニャッと曲げてみせる。
「金属ってのは不思議なものでな。叩けば叩くほど硬くなるんだ。」
「叩けば叩くほど硬くなる…。すまない、私は疲れてるみたいで今は別の意味に聞こえてるよ。」
「シモの話じゃねぇーよ。今すぐ寝てこい。1人で。冗談はさておき…。」
俺はカバンの中からハンマーを取り出し、この銅板をまんべんなく叩いていく。
「触ってみてくれ。どうだ?さっきまでと違ってフニャフニャじゃなくなってすごく硬くなってるだろう?
この通り叩かれれば叩かれるほど硬くなるんだよ。」
「ほほう。面白いね。たしかに安物の剣は型に金属を流し入れて作られてるからすぐに壊れる。
だから硬い芯材を入れたものがあったりするんだ。」
そして俺は、先ほどの叩いた銅板を砥石のビットをとりつけたリューターで研ぎ出していく。
「はい、完成。紙くらいなら簡単に切れるナイフだよ。」
俺はそいつに紐をつける穴を開け、革紐をくくりつけて魔女さんにプレゼントする。
「いいねぇ。これもまた、簡単に作った割にはなかなかの魔力を感じる。
君からの初めてのプレゼントだ。大切にさせてもらうよ。銅や銀は魔力の触媒としても優秀な金属だからね。
しかし、刃物一つとってもこの世界の技術がイマイチなのは良くわかったよ…。」
「他に聞いた話だと、鉄に墨を混ぜ込むと強度が上がるんだってさ。鋼鉄って言うんだけど。
俺の世界だと、そのドロドロに溶かした鋼鉄を、こうやって職人が叩いて鍛え上げて刃物を作っていくんだよ。」
魔女さんがとても興味深く俺の話を聞いて目を輝かせている。
この人の、こう言う興味のある話に楽しく食いつく感じが、いつもの大人びた雰囲気を感じさせない可愛さを生み出していく。
魔女さんは美しくもあるが、時にこうも可愛くなるんだな…。
実際、肌ツヤや見た目はどう見ても20代前半の女性って感じがある。
要するに、見た目だけなら俺にとっては歳下の女性って感じなんだよな。
などと考えていたらまたも工房の扉が勢いよく開かれた。
「賢者ぁぁぁあ!!無事かにゃぁぁぁあっ!
叩くと硬くなるとかドロドロとかお前ら工房でなにしてるにゃぁぁぁっ!!」
「だからシモの話じゃねぇよ!!」
見事なフラグ回収速度である。
「さてさて、しかし色々としてるうちにもう夕方か…。早いものだねぇ。どうだい賢者くん。
食事の前にお風呂に入ってこないかい?うちの大浴場、昨日はまだ入ってなかったろう?
綺麗な景色を見れる天然温泉の大露天風呂だよ。」
ほほう…。露天風呂…。
銭湯も温泉も久しく行ってなかったな…。
「無論、ちゃんと男と女で浴室は分けてあるから安心したまえ。まぁ、私は君が混浴してきても全然構わないがね。
ただ今回は君のお仲間さんみんな誘って、女子トークと行こうかな?
私に猫に戦士ちゃんに魔法使いちゃんに盗賊ちゃん。色々と話してみたいんだよね。」
いわゆる女子会ってやつか…。
そう言うのも楽しくて良いかもだな。
「盗賊ちゃん、お言葉に甘えてお風呂一緒に入ってきなよ。」
「ん…。そうだな…。そうするよ。なんかオレも今日は疲れた…。」
「あ、そだ。盗賊ちゃんにもプレゼントがあるんだ。なんか、その髪に意外と似合いそうだなって思ってさ。」
俺は、カバンから昔作ったマグネット式のピアスと髪留めを取り出し、盗賊ちゃんにつけてあげた。
「うん、思った通りだ!めっちゃ可愛い!やっぱり女の子はオシャレしないとね!」
盗賊ちゃんが顔を真っ赤にしている。
「ば、ばっかやろう!!さっき言ったろう!ご主人様に触られると感じやすいんだから気安く触れるなって…!またその…ドキドキしちまったじゃねぇか!
まぁ…でも…その…ありがと….。
可愛いとか言われたこと無かったから…すっげぇ…その…嬉しいよ…。」
レジンで作った薔薇にアメジストとラリマー、ブルーレースアゲートを取り付けたピアスに、レジンと和紙を使って作った和風の髪留め。
盗賊ちゃんの日に透けると緑色に輝く美しい髪に良く似合ってる。
「ささ、行くよ。猫。盗賊ちゃん。女子会と洒落込もうではないか♪」
魔女さんは盗賊ちゃんとギルマスちゃんの手を引き、ルンルンで戦士ちゃんたちの部屋へと向かっていった。
俺もそれについていき、2人と合流し大浴場へと案内してもらう。
2人は俺が工房にこもってる間に、研究室の魔導師さんたちから稽古をつけてもらってたらしい。
戦士ちゃんは剣に魔法を乗せて放つ魔剣スキルを習得したと語ってくれた。
聞くところによると、2人はレベル不足で開放できていなかっただけで、相当な数のスキルを既に習得している可能性があると言われたらしい。
故に魔導師さんや冒険者さんたちと手合わせしながら特訓をした事で、今日はかなり経験値を稼げたらしく、一気に数多くのスキルが開放されたとのことだった。
「ふふ、この調子ならすぐにS級に追いつけるかもだね。実に楽しみだ。
それじゃ、私たちはこっちだから君は1人で大浴場を満喫したまえ♪」
俺は入り口で男湯側に分かれて、早速脱衣場に入る。
脱衣所の段階で壁が薄いのか割と女子たちのきゃっきゃっうふふなトークが聞こえてくる。
そうか…盗賊ちゃんは妹ちゃんよりちっぱいなのか…。
薄々感づいてはいたが…。
俺はアクセを外し服を脱ぎ浴場へ向かう。
「お、おおぉぉぉぉ。
でっけぇな…。家族旅行で行った温泉街で入った露天風呂よりもでかいんじゃねぇか…?」
お湯加減を確かめるのも兼ねてかけ湯をする。
おぉ…。いい湯だ…。
俺は熱いくらいの湯が大好きなのだ。
早速お風呂に肩まで浸かる。
「ゔぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……。これは心地よいなぁ……。溶けるぅぅ……。」
実際おっさんではあるのだが、思わずおっさんのような声が出てしまう。
「どうだーい?賢者くん。うちの大浴場は気に入ってもらえたかーい?」
魔女さんが男湯と女湯を隔てる岩壁越しに俺に声をかけてくる。
「いやぁーー。さいっこうだよぉ~。魔女さんありがとう~。」
ゔぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……。おぁあぁぁぁぁぁあ…。ぎもぢぁぁぁぁぁっ……。
「おーい賢者~。さっきからおっさんのような心の声がにゃー含むこっちの2人にはダダ漏れにゃ…。魔女が笑いこらえるのに必死になってるにゃよ…。」
「くふっ…!くふふふふっ…!!
あはははっ…!普段はあんなにクールなふりしてるのに、中身はやはり見た目相応なのだね。
君たちはどうだい?うちの風呂は気に入ったかい?」
「はい魔女様!とってもきもちーですぅ…。ふにゃぁ…。」
「ちょちょちょ、湯船に顔沈めると危ないわよ?ほら、きもちーのはわかるけどシャキッとなさい。」
「しっかしあれだな…。服着ててもデケェデケェとは思ってたが…。
脱ぐとさらに度を超えてでっかいおっぱいしてんなぁ…。いろんな意味で魔女だよな。」
お、ありきたりで定番の女子トークが始まりだしたぞ。
ナイスだ盗賊ちゃん。みんなそういうのが聞きたいんだよ。
「そういう君は小さいねぇ。君より歳下の魔法使いちゃんより小さいじゃないか。
むしろ揉ませる領域はあるのかい?お、ちゃんとあるね。フニフニして柔らかい部分は。」
「うぅ…。もうどうとでも言いやがれ…。
この容姿にこの胸だから、誰も女って信じてくれないんだよ…。」
「まぁ、私らにはほら喉仏の有無とか、お尻の形とかそういうので大体男か女かわかるから…。
賢者もすぐ女の子だって気づいてくれてたみたいだし。」
照れたように嬉しそうに耳につけたピアスを触る。
「そうだな…。オレ…こんなに誰かの優しさに触れたの…初めてだったよ。
今まで生きてきて、初めて誰かに優しくしてもらえる喜びを知れた気がする…。
あんた達があの人に惚れるのすげぇわかるよ。
誰にでも優しいんだな。その上、すごくその大事にしてくれるっつーか…。」
「あ、そだ。大事にするで思い出したにゃ。
奴隷紋を通じて、賢者のムラムラレベルがわかるはずだがいまどのくらいにゃ?」
ぶふぅぅぅぅぅぅっ!!
おい、あの猫娘!!俺の発情レベルの把握がまさか狙いだったんじゃねぇだろうな!?
「ほっほっほっ…。たまたま。たまたまにゃよ。
そこにたまたまこいつが居たから、罰として性奴隷にしてやったまでにゃ。
特にやましい意味は0ではないにゃ。」
0じゃないんかい!!
「して…どうなのにゃ。ほら、言えにゃ。お前の主人はどれくらいムラムラしてるのにゃ?」
皆が急に静かになった。
「あぁ、すっげぇムラムラしてるっぽい…。
つーか、オレはこの奴隷紋のせいでご主人様の倍以上ムラムラさせられてんだぞ!
しかも自分ではどうにもできない!ほんと最悪の罰を与えてくれたなギルマス!
そもそも、オレはいつまでご主人様の奴隷やってりゃ良いんだよ!」
「国の重鎮の持ち物を奪おうとした。それだけで十分に死罪か極刑レベルだ。
無論、終身だろう?主人たる彼が解くまでは…。」
「勿論にゃ。ただあいつ優しいからにゃ…。主人は賢者だが、解けるのはにゃーに権限を付与してあるにゃ。
すぐに解いちゃバツにならないからにゃ…。」
そっか…。盗賊ちゃんはそんな薄い本が大量に作れそうな設定レベルの奴隷紋を刻まれてるのか…。
つーか、俺がムラムラしてると盗賊ちゃんもムラムラするのか…それも倍以上…。
いや、そういう役割のためにそうなるようになってる仕組みなんだろうが…。
たしかに俺ならそんなことを聞けば速攻でそんな契約を解消するに決まってるだろう。
薄い本はまぁ…好きだが、それをこうやって知り合った女の子に求めるほど俺の性根は腐ってない。
どうしてあげるのが正解なんだろうなこれ…。
少なくとも俺は誰かを抱いて性欲を満たそうって気はないぞ。
「お、おい…ご主人様…。オレとの契約のせいでその…もし変なふうに悩ませちまってるならだな…。
全然気にしなくて良いからな…。
拷問とかは慣れてるから…。頑張って耐えるよ。ただ、いくらムラムラしたからってオレを使うなよ!オレは…その…まだ経験ないから下手くそだしきっと気持ちよくなれないぞ!」
拷問は慣れてる…か。
地味に気になってたんだよな。
身体中にある切り傷とか、まるでタバコを押し付けられたような跡とか…。
心を開いてもらえたら、色々と話してもらえるのかな…。
「そっちこそ、変な心配するな。
俺はムラムラしたからって手近な女を襲うような最低野郎じゃねぇよ。」
「そうか、じゃあ代わりに俺たちに襲われて死んでくれや…!」
ガサッと風呂の茂みから屈強なおっさんが刃物を持って飛び出してくる。
なんとか交わせたが今のは危なかった…。
しまった…。今の俺は何の装備もない…。
ネックレスもつけ忘れた…。
「ボスゥゥゥうっ!!助けに来やしたぜぇぇえっ!!」
目の前のおっさんが叫ぶと女湯から盗賊ちゃんがこっち側にシュタッと降り立ってくる。
「ったくおせぇんだよ。茶番を演じるのも疲れたぜ?てなわけでよ。悪りぃなご主人様。そういうことだ。」
そういうこと…?どういうことだ…?俺ら今、全裸で2人向き合ってるけど、どういう状況…?
「よくワカンねぇって顔してるから教えてやるよ坊主。
今お前の目の前にいる、お前が奴隷にした女はなぁ~!我らが盗賊ギルド ドラゴスケイルのボスなんだよ!!」
このドジっ子盗賊ちゃんが、国家大罪人レベルの盗賊の群れのボス!?
嘘だろ…!?
「てなわけで、オレも自由になりたいからさ。
オレの所有権を持ってるやつに死んでもらいたいんだわ。悪りぃな。ご主人様…。」
オレはショックでその場で膝をついて動けなくなってしまった。





