プロローグ
僕はオタクだ。
誰がどう見ようと言い逃れが出来ないほどに完璧なオタクだ。
髪は毎日風呂に入ってるがぼさぼさ、顔もイケメンではなく平凡以下だ。体格も少し太っているくらいだろう。
そんな僕が町を歩けば周りからはキモと言われ馬鹿にされる、家では両親は冷めた目で僕を見てくるが何も言わない、妹も居るが近寄るなキモいんだよと言われ嫌われてる。会社では気兼ねに話せる人も居るはずも無く一人で黙々と作業をこなしている。
そんな僕でも夢はある。いや、あったになるかな。
今は誰にも言えない夢、それは普通に生きる事。
誰からも馬鹿にされず、堂々と胸を張ってオタクだと言い張って、好きな事に夢中になって、それで……
それで、普通に恋をしてみたい。
朝の日の光がカーテンの間から差し込んでくる。
眠い眼を擦りながらベットから出て顔を洗いに行く。途中妹に会ったが汚い物を見る目で見てきたが無視をし洗面台へ。
少し伸びた髭を剃り、歯を磨き寝ぼけていた顔を覚ます。
朝食は家族皆ばらばらに取ってる。
仕事に行く時間や学校の時間が有るから仕方ない。
さて、今日は日曜日だ。朝からアニメがやってる良い日だ。
大好きなアニメを見ながら焼きたてのトーストをほおばって居ると妹も朝食を食べに来た。が、僕を見るなり引き返し暫くすると玄関が開く音が聞こえてきた。
……外食にでも行ったのかな。
僕を嫌うあまり朝食は外食で済ませる事が多く成った。兄として妹の健康状態を心配したいが多分殴られるだろうな。
そんな事を考えながら朝食を終え外に出る準備をし玄関の鍵を閉め会社に向かう。
何時もの汚い物を見る視線、電車に乗っても周りからはクスクスと馬鹿にしたような笑い声が聞こえてくる。本当にいやになる……
「おはようございます。」
会社に出勤の15分前に着き一応礼儀の挨拶をするが当然返事は返ってくる筈もなく冷たい視線だけが返ってきたがそれも慣れてるので無視してタイムカードを切る。
自分の使ってるデスクに座り仕事を始めるがすぐに上司から呼ばれた。どうやら提出した書類に不備があったらしいがそれも嫌がらせでしかない。
最初は間違ってる箇所の話からはじまり聞いてもいないどうでもいい話が増えていき最後にはお前は見た目もダメなら中身もダメなのかと馬鹿にされ周囲から聞きたくもない小さな笑い声が聞こえてくる。
僕が何をしたのだろうかと周囲に問いただしたいが、それをしても僕にメリットが無いので言葉を飲み込んだ。
地獄のような時間が過ぎ退社の時間になったのでタイムカードを再度切り返る仕度をし逃げるように会社を出る。
終電の電車内だけは落ち着く。別に僕を馬鹿にする人は居ないしゆっくりできる。
そんなことを考えながら消灯した都会の町並みを見ながら帰路につく。
家はすっかり暗く家族は皆寝てるんだろうな。僕は起こさないように静かに家に入り遅い夕食を取り、深夜アニメを見てからお風呂に入り就寝した。
そんないつもの生活を繰り返してたがあの日だけは違った。そう、それは僕の運命が変わる瞬間だった。
彼女、麻野 真理と出会ったあの日だけは……




