マグマより熱い男 2
『――……けて』
『――……け、――さい! 助け――!!』
声が。
聞こえた。
「? あれ、今何か聞こえませんでしたか、隊長……隊長!?」
「ちょっ、どこ行くんすか!? まだ報告書まとめ終わって……っ!?」
「何の騒ぎ……ってうわあ!? ここ屋内ですよ隊長!! 能力はダメですって!!」
――迂闊だった。
――迂闊だった、迂闊だった、迂闊だった!!
――聞こえていたはずだ。
――声は聞こえていたはずなのに!!
『……けて、下さい! 助けて下さい!』
『俺たちを、この「街」を、あの子を!!』
頭に響く声は、別の動作を挟みながら声を出しているように、途切れ途切れだった。だけど言いたいことは十分すぎるほどに伝わった。
その無念さと、覚悟が。
「っ……!? この声、まさか!?」
「これ、あの『街』から……!?」
「おいあれ、見ろ!!」
昨日捕らえた『崩壊組』の調書を、報告書にまとめていた最中だった。
詰め所にあつらえられた小窓からは、隣の『街』が小さく見える。ここからあの『街』が発展する様子を眺めて楽しむ『治安維持隊』もいたくらいに、あの『街』は勇気付けられる存在だった。
城を建てようとしている『街』があるらしい、それは聞いていた。昨日実際に見て、思わず溜め息をついてしまったほど、美しかった。
人類は終わっていない。それを証明してくれているようで、嬉しかった。
『これが聞こえている皆さん、どうか助けて下さい!!』
「『街』が……!?」
その『街』が、破壊されていた。いや、その破壊は今も続いている。
まるで巨人がやったらめったら暴れ回っているみたいに、爆発が断続的に起こっている。
「ちょっ、そこからはさすがに出れませんって隊長! 壊すのも駄目ですよ!」
「い、一体こんなのいつから……!」
なぜ隣にいて気付かなかったのか。それを悔やむのは後だ。
「む、無理だ。俺じゃ隊長は抑えられね……おわっ!」
「隊長! 壊しちゃ駄目って……あー……」
困っている人間がそこにいる。
それだけで、十分だ。
そして出ヶ島仁は空を飛ぶ。
彼の怒りを具現化したような、真っ赤なマグマに身を包んで。