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失踪から

作者: 神名代洸
掲載日:2018/02/08

仲のいい友達がいたのだが、その友達がある日突然姿を消した。

理由も何も聞いていなかった。


家族とも付き合いをしていたから聞いてみたの。

でも誰も知らないって…。

おかしくない?

普通ならちょっと出かけてくるだけだと思う。でもね?紙に書かれていたのはただ一言。


「外出してきます。」


だけ。


皆心配したよ。

だって突然みんなの前から姿を消したんだから。

心配しない方がおかしい。

お気に入りのカバンと鈴が無くなっていた。


「何処行ったんだよ。バカァ。」


それからひと月後、ひょっこりと姿を見せた。

その時の記憶は無いと言う。

ほんとか?

髪はボウボウ。ヒゲも生え放題。

一瞬見ただけでは浮浪者と言われてもそうだと思う。

ただ手には1枚、千円札を握っていたらしい。


通報されて始めて自分が彷徨っていたことに気づいたと。

一体何処で何してたんだか…。



何も分からないと頭を抱えて小さくなっている友達をそれ以上問い詰めることもできず、そっと背中をさするだけだった。

友達が困っているのに何もせずにいる自分に腹がたつ。


私は友達が歩いてきた足取りを辿ることにした。


はじめはこの街から。

ぱっと見は昔情緒漂う今時の街並みだった。

ここは人があまり通らず、まばらだ。

でも、意外と嫌な感じはしない。

のんびりゆったりって感じだ。

そこからが本題。


この街から電車で次の街へと移動するのだが、降りた駅がない。

◯×駅なんて聞いたことない。

酔ってたのか?

そう聞くとシラフだったぞという。

そんなバカな。


じゃあ、何処だ?その街は。



私はどうやったって行けなかった。

街がないから。

というか駅がない。

どうなってるんだ?

分からない。


そうこうしているうちに夜になってしまった。時間は夜の12時。

終電もそろそろだろうと思っていたところ、電車が一本駅に入って来た。

行き先表示がない。

この駅が最後か?

するとドアが開いた。

中から人は降りてくる。でもね?なんか変なんだ。

いつまでたってもドアが閉まらない。

思わず飛び乗ってしまった。するとドアが閉じてしまい、発車を始めたではないか。

どこに向かうんだと慌てて運転席がある車両まで走っていった。


運転席に人はいるようだが、こちらからの問いには何一つ答えてはくれなかった。

背中だけが見えているだけ。

その背中もとても小さく見えた気がした。

顔を見ようとしたが、薄暗くて見えない。

顔色が悪そうだ。

それだけはわかった。


「あの〜…。」


「………。」


「もしもし?」


「………。」


相手にしてくれない。運転中は無理なのか?なら後ろに乗っているであろう同乗者を探しに後ろに向かって走る。途中一人も乗客がいなかったのは気のせいではない。

乗り間違えたのかと錯覚さえ覚える。

最後尾まで来たが、同乗者の姿が見えない。

途中ですれ違うことなどないはず。じゃあ、何処に?

一瞬背筋がゾクっとしたが、気を取り直して再度先頭車両へと走っていく。

するとね?今度は運転席にいたはずの人がいないではないか。

電車は…動いているのに。

この電車は一体何処に向かっているんだ?

恐怖が僕を支配した。


「動け!動けよ!なんで動かないんだ?」


僕は運転席側に通じるドアを無理矢理に開けようとしていたのだが、鍵がかかっているのかビクともしない。ただその間も電車は走り続けている。

心底怖くなり、震える手に力を込め、再度チャレンジしてみた。すると今度はガラガラと音がして開いたではないか。

運転席に駆け寄るも誰もいない。

だけどレバーだけは動いている。

不気味だ。


レバーを触ると氷のように冷たかった。

そして突然電車が止まった。

ドアが開く…。

慌てて外に出るも知らない町だった。

電車はドアを閉めゆっくりと動き出す。


「待てよ!おーい!」


僕の言葉に反応することもなく電車は夜の闇へと消えて行った。

仕方がないので駅のホームを出る。

住宅密集地のようだ。良かった〜。

ホッとしたのに真っ暗な建物だけしか見えず、とにかく灯りを探した。


どこを見ても真っ暗。

そりゃそうだ。

夜中の12時。

起きてる方が少ないだろう…。

ここで時間を見てみると、腕時計の針は2時になろうとしていた。


「寒…。」


そもそもこんな時間まで外出なぞするつもりなかったので、それほど厚着はしていない。

しかも知らない土地。

仕方がないので携帯からタクシーで帰宅しようと考えたのだが、何故か圏外になっていた。


「何だよ。何で圏外?嘘だろ?」


どうしたものかと考え、線路づたいに歩いて行こうと思った。ほんとはダメなんだけどね。

どれくらい歩いただろう…。

1時間くらいだろうか。

灯りが見えた気がした。

ほんの一瞬だったので、もう一度見てみようと周りをぐるっと見てみた。

一件だけ灯りが見える。

有難い。

そう思って走って近づいて見た。

でもね?どういうわけかある一定以上は近づけないことに気がついた。

何で?

走ってみるが、灯りがどんどんと遠くなってく気がする。


「何でだよ。マジか?」


服装に構っている余裕などなかった。

ネクタイはヨレヨレ。カッターシャツもシワシワになっていた。

もちろん髪はボサボサだ。


そうこうしているうちに朝になっていた。

ようやく人が通る時間になったのかと安堵したのだが、誰一人として歩いている姿を見ない。

不安が押し寄せてくる。


友達もこんな思いをしていたのかもと思ったら頑張らなきゃと思う。






その頃別の場所では大騒ぎになっていた。

僕が消えたと…。

友達のことを思い込みすぎてどこかに行ってしまったんじゃないかと1人は言った。

また別の1人は同じ目にあってるんじゃないかと。

携帯を鳴らしても圏外と音声案内があるだけ。

どこに行った?




しばらくして僕が現れたものだから皆安堵でホッとしていた。

友達もそう。


コッソリと友達と話すことができたので、体験した出来事を話して聞かせると、友達も同じ体験をしたことを思い出していた。

2人はガクガクと震え上がっていた。


深夜の電車、特に最終電車には乗らないようにしようとお互いが確認しあってその場で別れた。


それ以降、乗っていないので何ともないのだが、仕事であまりに遅くなる時はタクシーを使うことに決めていた。



あの体験は何だったのだろうか?


今も謎である。




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