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ようこそ悪魔くん  作者: くま
プロローグ
1/4

 


 ————魔王歴2057年。

 1人の青年はそこにいた。両親と妹がいる、極普通の四人家族である。裕福でもなく、かと言って生活に困っている訳でもない。本当に極普通の青年は、極普通の幸せな毎日を過ごしていた。



 あの日がくるまでは。



「お兄ちゃん。」


 妹が青年を呼んだ。その声は酷く震えており、青年を見る目は潤んで雫が溢れ出ている。


「どうした、何処か痛いのか?」


 青年が問いかけると、妹は精一杯というように首を横に振った。


「じゃあ、なんで泣いてるんだ?」


 青年がもう一度聞くと、妹は大粒の涙を流した。


「お兄ちゃん、死んじゃったの。さっき私を庇って馬車に轢かれちゃったの。」

「なに言って……俺は生きてるよ?」

「違うの……。」





















「お兄ちゃん、悪魔になっちゃったんだよ。」


 妹は大きな泣き声を上げた。

 気付けば周りには、人が集まってきており、人々は悲愴の眼差しや威嚇的な眼差しで青年を見ていた。

 今まで気付かなかったが、青年の足元には赤い水溜りが出来ていた。それも青年の周りを飛び散るように広がっている。

 少しして、青年の両親が人混みを掻き分けて飛び出してきた。座り込んで泣いている妹を見るや否や、青年を見て涙を浮かべた。


「お父さん、お母さん。」


「ああ……神よ酷すぎる……何故あの子が……。」


 青年が両親を呼ぶと母は妹の横で泣き崩れた。父も悔しそうに地面を踏み付けている。


「なんで泣いてるの?」


 青年は訳が分からずに首を傾げた。すると、頭に激痛が走る。


「出ていけ悪魔!」

「この厄災め!」


 次々に激痛が広がる。気付けば、青年を囲う人混みからは、石やらじゃがも芋やら、終いには刃物まで飛んできていた。


「いたっ……ちょっと……。」


 青年は両親に助けを求めた。しかし、両親も妹も青年に恐怖の眼差しを送っていた。

 しばらくして青年は走って街から抜け出した。体中が痛かった。頭からは血が流れていたし、多分腹には刃物が刺さっていたと思う。しかし。


「傷……ない。」


 青年は座り込むとしばらく動かなかった。そして、少しずつ肩を揺らす。


「そっかそっか。」


 ポタポタと地面に雫が落ちた。


「俺、悪魔になっちゃったんだ……っ————。」



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