モーモーとタウロス
「5階層のモーモは頭の角での攻撃や突進力が脅威の魔物です」
名前やドロップアイテムが牛乳ってことから牛なんだろうがそれが魔物ならどんな姿になっているかわかったもんじゃない。十分気をつけておこう。
【サーチ】のスキルで場所と魔物の数がわかるので
まずは1体だけの方に行く。そこには四足歩行の白黒の模様の牛がいた。だが普通の牛ではなく二頭身の可愛らしい姿をしていた。見た目はあんなのでも魔物は魔物だ。うっかり手を抜いてやられたんじゃたまったものではない。
モーモー Lv8
スキル【吹き飛ばし】
【吹き飛ばし】
【攻撃した相手を後方へ吹き飛ばす】
「【挑発】【ガードフォース】」
カノンが自分がターゲットになり防御力も上げるいつもの戦法でいくがモーモーのノックバックで後ろに弾き飛ばされたら他のメンバーにターゲットがいくかもしれない。だがギルドで情報収集をしているカノンがそんなミスをするとは思えない。
モーモーは一直線にカノンに向かって走り出した。
「【パリィ】!」
カノンは攻撃される直前に盾を突き出しスキルを使い自分は後ろへ下がらされたが相手にはすぐに次の行動ができなくさせた。
「皆さん今です!」
「【スラッシュ】!」
「おりやぁ!」
「むん!」
カノンの言葉で後衛のエル、しばらく戦闘を禁止された俺以外の3人が攻撃する。
「……【ウインドストーム】」
3人が連続で攻撃したのち同時にモーモーから離れエルの魔法の竜巻がモーモーを呑み込んだした。
【ウインドストーム】が消えその場には何もなくなっていた。モーモーを倒したようだがドロップはなかったようだ。ドロップ率を考えるならやはり俺が戦った方がいいんだが注意されたばかりなので大人しくしておこう。
「やりましたね。今の感じでよかったですか?」
「ああ、問題ない」
「……離れるタイミングも完璧」
「俺にも攻撃スキルがあればなぁ。バング使えるスキルは使ってけよ」
「俺も頑張る」
4人で戦闘の感想や改善などを言い合ってる。なんだろうこの疎外感。俺と一緒に戦闘したときはこんなにちゃんとした話し合いなんかしなかったのに。
などと腑に落ちない点もあったがそれほど苦戦をせずにモーモーを討伐して行った。
「牛乳も大分集まったな。この階層のボスを倒すとしてその後どうしよう?」
「次の階層のボスを倒すまでに日が暮れるかもしれませんし中途半端になるなら区切りのいい今のボスを倒して帰るのがいいかと」
「……今日来るのが遅くなった」
「この階層でもいつもより時間が掛かったしな」
カノンの意見に否定はなさそうなのでここのボスを倒して終わる事になった。
「5階層のボスはタウロスです。大きな角や蹄での攻撃をしてきます。蹄での攻撃は離れていても上から攻撃してくるので十分気を付けてくださいね」
珍しく遠距離攻撃をしてくる魔物か。こういうとき前情報があるのとないのでは雲泥の差だ。
「今回は俺も後衛として参加します」
この階層では1回も戦ってないんだ。前衛として戦ったら前回のにのまいになりかねないので後衛でやる。後衛なら【魔法強化】があるが初期に覚えるボール系の魔法なら前衛より威力も下がるだろう。
ボス部屋に入るとモーモーより大きな黒い牛が現れた。頭には大きな角がありあれに牛の突進力が加わればただではすまないのが容易に想像できる。
タウロス Lv20
スキル【吹き飛ばし】【隕蹄】
【隕蹄】
【離れた敵の上空に足を出現させ踏み潰す】
このスキルが複数に対象が取れるなら【吹き飛ばし】で離れさせ【隕蹄】で攻撃されたらパーティーの編成によっては一方的になるのでは?
「【挑発】【プロテクション】」
タウロスが上半身を浮かせその状態から勢いよく前足を振り下ろした。その瞬間黒い膜のようなものが現れタウロスの片足がその膜を通り過ぎたはずなのにタウロスの片足は膜以降が消えていた。
ドゴンッ
「くぅっ!」
タウロスの足が消えたと同時にカノンの頭上から本来の何倍もある大きさでタウロスの足が現れた。そのまま落下しタウロスの足がカノンに当たる直前に盾で防いだ。だがかなりの重圧なのかカノンは膝を折り苦しげな声が出ていた。
「【アースウォール】【アースウォール】!】
カノンの左右に土壁を出現させタウロスの足を受け止める。
「あまり持ちそうにないから早くそこから離れろ!」
「助かりました」
カノンがその場から離れてすぐアースウォールが砕かれた。
「【スラッシュ】」
「【ラッシュ】」
「……【ダークジャベリン】」
カノンが攻撃されているうちに前衛3人が肉薄して攻撃し後衛のエルも大きくなっているタウロスの足に魔法を当てている。
この階層でバングさんが【ラッシュ】をエルは【ダークジャベリン】のスキルを新しく習得した。
【ダークジャベリン】
【闇属性∶敵1体に暗黒の槍で攻撃する】
【隕蹄】を使ってる間タウロスは動けないのかその場に留まり足を膜から引き抜こうとしている。
「【アースウォール】」
俺はタウロス目掛けて天井から土壁を出し押さえ付ける。今度はより強固に高さを長くイメージをして魔法を唱えた。押さえ付ければ足を引き上げれないし【隕蹄】も発動できないだろう。その間に全員からの攻撃をくらいタウロスは倒れた。
攻略法が見つかればそこまで脅威ではないかな。それとも今回だけ上手くいったのかわからないが何回か戦っていたら戦法もわかるか。
【牛肉】
タウロスからドロップしたのは牛肉だった。詳しくないからどの部位かはわからないが牛肉のブロックがあった。
「さすがに2回連続レアドロップはないか」
「……ご主人様物よりお肉の方が断然いい!」
「おぉ、そ、そうか」
今までで1番強い主張をするエルに少しびっくりするがその理由が肉なのはエルらしい。
階層ボスも倒したのでダンジョンを出て帰路につく。
「なあ、明日もダンジョンに行くんだよな?」
「そうですね。急な用がない限りはその予定です」
「……そうか」
ジェイルさんが神妙な面持ちで聞いてくるがその理由は見当が付いている。
ジェイル 22歳 男
シールダー Lv35★
★マークが付いてることからジェイルさんはクラスアップができるようになっている。クラスアップをすれば今のレベルからLv1になりステータスも下がってしまい今日より苦戦するかもしれない。だからジェイルさんは前もって伝えておこうと思ったのだろう。
「明日の最初は5階層から始めようと思っています。それにカノンがいてくれるのでクラスアップをした後も今日のように戦えば大丈夫ですよ」
「ん? 俺は明日の帰りにでもクラスアップ鑑定をしようと思ってただけなんだが。ひょっとして今からでもクラスアップができるのか?」
おっと、藪蛇だったか? 最後のスキルを覚えたのは今日なのですぐにクラスアップをするものだと思っていたけど少し経ってからクラスアップ鑑定をするのが一般的のようだ。
「そうですね。俺達もクラスアップは早めだったのでもうそろそろかなと思いまして」
「確かに今の戦闘の回数と次の階層へ行くペースならクラスアップができるかも……いや、そもそもこんなに連続で魔物と会うのが異常になんだが」
今更そんな事を気にしないで欲しい。俺にとってはこれが普通なのだ。
「そこはハルキさんなので」
「……ご主人様だから」
「流石は主だ」
「そ、そうか」
前2人は諦めた感があるのは気のせいか? 等としゃべりながらリスターバに帰ってきた。
「俺達は依頼主にアイテムが揃った事を報告に行きますが2人も行きますか? それと今日の報酬ですが今売るアイテムもないのでとうしますか?」
「いや、俺達はここで帰るわ。報酬はそうだな……。あ、バングのコレを報酬として貰うってのどうだ?」
ジェイルさんはバングさんの着けているガンドレッドを指差し言った。
それはもとよりあげるつもりだったけど報酬として欲しいなら文句はない。そして俺達はここで解散してジェイルさん達は帰り俺達はタマキさんの店に行く。
「あれ? 店の前に人だかりが」
「本当だ」
カノンの言葉通り店にたくさんの人がいた。店に並んでるわけではなく店内を覗き見ているようだ。
何故か胸騒ぎがしてその人だかりを押しのけながら進み店内へと入る。
「なんだこれ?」
店内は机や椅子が壊されたりしていて酷い状態だった。