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【身代わり】と私怨

「俺達はダンジョンに行くからここで解散で。何かあったらギルドで落ち合うか掲示板を使う方向でよろしく」

「待ってくれ! ワシらも同行させてくれ!」


 それじゃと片手を上げて別れようとするとおっさんズが呼び止めてきた。正直に言えば俺はこいつらを戦力に数えてないしそもそも味方とも思ってない。


「悪いけど俺達はこれからダンジョンに行くので同行する必要はないです。2つのパーティーで行ったらボス部屋などで時間をロスするので効率が悪過ぎます。だから同行する必要はありません」


 笑顔で威圧して拒否する。今日で牛乳がドロップする5階層まで行って十分の数を確保するつもりなのだ。ただでさえクランの事で時間を食ったんだ。これ以上時間を無駄にできない。


「な、ならそこの2人はどうなんだ!?」

「ジェイルさんとバングさんは今はまだ一緒のパーティーで経験を積ませて(のち)にパーティーを離れるのでクランにも問題ないです。それでは急ぎの用があるので」


 最後にさっさと行かせろと暗に伝えて歩き出す。おっさんズはそのまま呆然としていたが知った事ではない。


「それじゃあ昨日続きで4階層から行こうか」

「4階層の魔物はスケープゴートです。この魔物は単体のときはなんともないのですが他の魔物と複数で来たときは少し面倒な敵です」


 まだこの階層では違う魔物は出てこないはずなのだ。他の魔物といると面倒なのはスケープゴートが支援役の魔物だからなのか? とりあえず1体の所へ行ってスキルを見ておくか。

 しばらく進むと白いヤギがいた。こいつがスケープゴートか。見た目は普通のヤギだな。


 スケープゴート Lv6

 スキル【身代わり】


【身代わり】

【仲間のダメージを肩代わりする】


 ダメージのかたがわり。支援役かと思ったが盾役だったか。こういう敵って普通よりHPが多めなのが定番だよな。確かに複数の魔物と来たら面倒だ。


「いきます。【挑発】【ガードフォース】」


 カノンがスキルを使いターゲットを取り盾を構える。スケープゴートは一直線にカノンに向かって走り出し盾とぶつかる。

 カノンは攻撃を耐えてその場にスケープゴートを押し留める。俺はその隙に側面に周り今日フィアに聞いたように攻撃力が上がる【剛腕】のスキルを意識して攻撃スキルを叩き込む。


「【スラッシュ】」


 いつもより剣が肉に食い込む感触がしてスケープゴートは煙になり消えていった。


「む?」

「ん?」


 追撃しよとしていたフィアとジェイルさんの動きが止まった。それも当然だ。昨日まで数回攻撃して倒していたのにいきなり1撃で倒されたら固まるか。


「なんだ坊主。装備の新調でもしたのか?」

「いえ、装備はそのままですがスキルをちゃんと使えたというかなんというか」

「よく分かんねぇけど強くなったのはいい事だ」


 はっはっはっと笑うジェイルさんは普通なら不信がってもいいくらいなのに深く聞いてくることはなかった。やはりパーティーメンバーには俺のスキルの事を言っといたほうがいいのかもしれない。ジェイルさんもバングさんもそこまで気にしている風には見えないがこのまま黙っているのも気が引ける。


「それと言いたくない事は無理して言わなくていいぞ。冒険者をやってると臨時パーティーなんてこともある。そんな奴らにも気を使ってたらキリがねぇ」

「そう……ですね。わかりました」


 自分達も臨時パーティーみたいなもんだと言われ、ならこちらも適度な情報交換くらいでいいかという気になれた。


(ふだ)

【ただの札】


 スケープゴートのドロップアイテムは札だった。これ単体だとなんの効果もないアイテムだがこれを複数枚使って新しいアイテムを作れば幅広く使えるアイテムになる。そのためには【アイテム合成】というスキルが必要らしい。

 この情報は【鑑定】で何に使えるか意識して使ったら出てきたものだ。どうやら【鑑定】は何を知りたいかを意識すればその情報がでてくるみたいだ。今まではゲームの目線で使ってたからあのような情報が見えていたようだ。武器の強化もそれを知って意識したから見えるようになったとすれば合点がいく。


「スケープゴートは耐久力が高いのにドロップアイテムは使えないのでよくハズレ魔物と言われていますがハルキさんはなにかわかりましたか?」

「使い方はわかったけどスキルが必要だから今は使えないかな」

「わかったのですか……」

「……もうなんでもあり」

「さすが主だな」


 聞かれたから答えただけなのに呆れたような感想だった。フィアは基本全肯定だからカウントはしない。


「結構枚数がいるし次の階層が目的だから集めたりはしないけどまた来るときがあったら集めたいな」

「結構って具体的にどのくらい枚数なのだ?」

「最少で5枚。最大で100枚だな。100枚のアイテムを作りたいが今はまだ大丈夫かな」


 フィアの質問に答えつつ頭の中で作りたいアイテムリストに入れておく。今はまだ余裕があるけど後々必要になるときがあるはずだ。このアイテムはなるべく早くに作っておきたい。

 そしてほどほどでスケープゴートを倒しながらボス部屋へと辿り着いた。


「4階層のボスはグラッジゴートです。段々と魔物の攻撃が強くなるみたいなので素早く倒した方がいいそうです」


 段々と攻撃が強くなる? 時間経過により攻撃力が上がるのか? よくわからないが【鑑定】でスキルを見ればわかるか。

 ボス部屋に入りモヤが集まり角のある大きな黒ヤギが1匹現れた。


 グラッジゴート Lv17

 スキル【身代わり】【怨みの一撃】


【怨みの一撃】

【HPが低ければダメージが上がる】


 攻撃が強くなる原因は【恨みの一撃】というスキルだな。内容的に素早く倒すと言うより終盤に攻撃されないように倒せばいいようだ。

 単体ならさほど脅威ではないが複数といた場合は【身代わり】で他の魔物のダメージを肩代わりすればダメージ管理も面倒そうだ。


「ボスだから今までのスケープゴートよりHPが多いだろうから……【スラッシュ】!」


 スケープゴートは2体目以降スキルを使わなくても倒せることがわかったが今回はボスだ。さすがに普通に斬ったたげでは倒せないと思いスキルを使って攻撃した。


「……あれ?」

「あれ? じゃねーよ! この階層ほとんど坊主1人で倒しちまってるじゃねーか!」


 最初のスケープゴート同様グラッジゴートは呆気なく【スラッシュ】の1撃でモヤになって消えてしまった。ジェイルさんは戦えなかったことが気に障ったのか俺に突っ掛かってくる。


「報酬は山分けなんだから俺達にも戦わせろ!坊主1人だけが戦って報酬を貰うなんてできるか!」

「す、すみません。次からは気を付けます」

「主だけで終わってしまうなら私達がいる意味がなくなってしまう」

「そうです。私達も戦います」


 ジェイルさんだけでなくフィアやカノンまで食い気味だ。別に疲れる程でもないしすぐに倒せるなら気にしなかったが俺以外は不満だったらしい。


「……ご主人様、これ」


 エルが持って来てくれた物は全体が黒く赤い模様が彫られたガンドレッドだった。グラッジゴートのレアドロップのようだ。


【私怨のガンドレッド】

【装備者の怨みのある相手にダメージアップ】


 名前からして呪いの装備じゃないよな?装備が取れなくなったり装備者の精神がやられたりしないよな?


「お! ガンドレッドじゃねーか! バング! これ着けてみろよ!」

「あ! ちょっと!」


 俺が持ってたガンドレッドを見るや否やジェイルさんは俺から取ってバングさんに投げて渡す。

 バングさんのクラスはファイターで武器は手や腕に着ける装備品だ。だからガンドレッドはバングさんにピッタリの武器だがそのガンドレッドは待ってくれ。

 止めようとした俺の言葉も虚しくバングさんはガンドレッドをはめてしまった。


「思ったより軽い」


 そう言いバングさんは腕を回したり手を握ったり開いたりして可動域を確かめる。


「なんともないですか? 変な声が聞こえたり武器が取れなかったりしないですか?」

「別に。武器も取れる」


 バングさんは俺の目の前でガンドレッドを外す。俺が気にしすぎだったのか。バングさんは平然としている。

 そうか問題なしか。よし! 先に進もう! そもそもこの世界に呪いがあるかどうかも……。

 あったわ。この階層のドロップアイテム【札】で合成できる【解呪の札】がある。解呪があるなら逆説的に呪いもあるということだ。あのガンドレッドが呪い系じゃなくてよかった。

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