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相談と【フィールドウォーク】

 次の日、早朝からフィアとの剣の練習が始まった。訓練で真剣を使うのもなんなので【物質造形】のスキルを試すつもりで手頃の枝を木刀ぽい形に変えてみたがあまり上手くいかなかった。大体やそれっぽくではなく具体的なイメージが必要みたいで要練習だな。

 2、3回同じ枝に【物質造形】を使って納得いく物ができた。フィア用にもう1本同じ木剣を作る。先に作ったのを見本として作ったから1回目で成功した。


「私はもう少し重い方が好みなのだが……」


 俺が渡した木剣を数回振りフィアは感想を言う。

 無茶を言うな。【物質造形】は形を変えれるだけで重さは変えれない。仮に今の木剣を大剣に形を変えても質量も同じなので薄っぺらで脆い大剣ができるだけだ。ちゃんとした大剣を作りたいなら丸太くらいいるんじゃないか? でも丸太を持ち上げれる力がなければ……フィアなら出来そうな気がする。


「それで我慢してくれ。今日は動きの確認というか軽めでやろうと思ってる」


 剣術の対人戦なんて久し振り過ぎて感が鈍ってるかもしれないからな。初日だしそこまで本気でやるつもりはなかった……はずだったのに。


「はあ! せいっ!」

「っ……ぐうっ。ちょっと待って。ま、負けだ」


 フィアの猛追に膝をつく。木剣を離し両手を上げて意思表示をする。


「はあ、はあ、はあ」


 感が鈍ってる以前に体が鈍ってのか体が反応についていけてない。そのままジリ貧で押されていき何回も負けている。


「むう。やはり違和感があるな」


 木剣を振りながら首を傾げる。そんなに木剣が気に入らないのか。


「明日には今回のより重めな獲物を用意するから今は無理して馴れる必要はないぞ」

「ああいや、違和感があるのはこっちではなく私自身なんだ。それに違和感っといっても不調とかではなくむしろ調子が良過ぎる程なんだ」

「いい事なんじゃないのか?」


 調子がいいのなら喜ばしい事なのだがフィアの表情はその逆だった。



「それが良過ぎてどうも違和感があるんだ。そうだな。クラスアップしてすぐの感覚に似ているな」


 クラスアップは強制的にLv1にさせられるからステータスが一気に下がる。そのためクラスアップ前との動きに差が出てしまい思うように体が動かない。

 フィアは自身の動きと考えていた動きのズレがあり違和感があると言っているのか。


「主のパーティーに入れてもらったあたりから違和感があったのだがどうにもまだ馴れなくて」

「あー、それは俺のせいと言うかこのアイテムのせいだな」


 俺の腕に着けている【アスカノのバックル】は俺が受けるステータスアップの効果をパーティー全員にも少し与える効果を持つ。それでパーティーに入ったことでフィアのステータスが上がってしまいズレが生じてしまったのだ。


「ふむ、そのアイテムはかなり破格の力があるのだな。それならこの違和感にも頷ける」

「そこまで言うほどか? パーティー全員に効果があるけど激的に変化があるわけでもないだろ」

「その全員に効果があるのがすごいのだ。主よ、普通は自身以外を強化できるのは後衛の上位クラスのスキルだけだ。最上位クラスになれば他にも習得できるらしいがそこまで高みへ行ける冒険者は少ない。だから全員に効果のあるスキルは貴重なのだ」


 確かにそう言われればかなり優秀なアイテムのようだ。俺はどんなスキルがあるのか把握してなかったがパーティー全員に効果があるスキルはとても少ないのか。


「だが主よ。そのアイテムが何処まで強化できるか知るよしもないが少なくとも攻撃力、防御力、素早さの強化スキルがあり、どれも常時発動型スキルを主が持っていると言ってるようなものだぞ」

「あ」


 パーティーに入れただけではわからないが戦闘をしたらフィアのように1発でバレてしまうのは避けたい。だが【スキルコピー】はパーティーメンバーのスキルしかコピーできない欠点がある。

 戦闘を避けるなら相手としたらそもそもパーティーに入る意味がない、ならその時だけバックルを外すか?それだと動きご悪くなるズレが起こってしまう。それで危ない状況になったりしたら目も当てられない。

 ……1人だけの知恵では限界があるとは思っていたけどここが潮時かな。


「大事な話がある。カノンとエルにも話さないといけないから……そうだな。朝食の後でいいか。俺のスキルに関係する話だ」

「了解した」


 今はその場で頷くだけで追求はしないでくれた。


「それで大事な話とはなんですか?」

「……ご主人様のスキルは前々から気になってた」


 カノンとエルが作った朝食を食べ終え前もって言っておいた俺のスキル【スキルコピー】について話をする。


「というわけで俺には人より多くのスキルを持つことができている」

「【スキルコピー】の条件がパーティーの人だからハルキさんはいろんな人をパーティーに入れていたんですね。あの奇っ怪な行動にもちゃんと意味があったんですね」

「……納得」


 奇っ怪な行動とは失礼な。そのおかげで貴重なスキルも手に入ったんだぞ。


「パーティーメンバー限定という条件だが強力過ぎるスキルだ。欠点をあげるとすればその膨大なスキルを扱いきれるかだが。主はどうだ?」

「全部は流石に無理だが自分にあったスキルはきちんと使えてるつもりだ。そもそも1人じゃないと効果が使えないってスキルもあるしな」


 バングさんからコピーした【孤軍奮闘】はソロの状態じゃないと効果が発揮しない。今はまだいいがそのうち条件が対になるかもしれない。例えばフィアからコピーした【不撓不屈】はHPが減れば減るほど攻撃力が上がるスキルだ。逆にHPが全快の状態が発動条件のスキルがあるかも知れない。その時はどちらか使えなくなる。状況しだいで使えるスキルが変わるのは使い手の技量しだいで強みにもなるし弱みにもなる。


「それで私達にスキルを事を話したのは何か問題が起こったのですか?」


 カノンはこれまで黙っていたスキルを今更話すということは何かしらあったと思ったのかそう切り出した。その通りなので包み隠さずに相談することにする。


「フィアの話でこの【アスカノのバックル】を装備した状態で戦闘したら俺のスキルの異常さが他のパーティーメンバーにバレてしまう可能性が出てきた。これじゃあ前みたいに気軽にパーティーに誘ってスキルがコピーできなくなるんだ」

「うーん、それは難しいですね。この場合戦闘以前にパーティーに加入した時点でバレる可能性もありますから。例えば常日頃からスキルを意識している人なら自分の異変にすぐに気付くと思います」

「スキルを意識?」


 俺の一言でカノンとフィアの2人は信じられないといった顔をした。エルは相変わらずの無表情。


「……ご主人、スキルを意識するとしないじゃ雲泥の差」

「スキルはちゃんと使えてるはずだけど」

「なら常時発動型スキルはどうだ?ちゃんと意識して使えてると言えるか?」

「そ……れは……」


 フィアの質問に言葉が詰まる。パッシブスキルは勝手に使えてると思っていて意識なんかしたこともなかった。


「常時発動型のスキルは特に意識して使った方が効果があるし行動が強制されるようなスキルも意識して使えば少しは融通も効くようにもなる」


 確かに敵にすれ違いざまに斬り掛かる【インパルス】から【スラッシュ】にスキルを繋げて相手から離れないようにして連続で斬り掛かる使い方をしたことがある。あれはちゃんとイメージをして意識していたからできたということか。


「スキルが意識して使った方がいいのはわかった。なら逆に意識して意図的にスキルを弱らす事ってできるのか?」

「それは……」

「そうですね。そんな事をする意味がないのでわかりませんが言われてみればできそうな気もしますね」


 フィアもスキルを弱らすのは考えたことはないのか他の2人に視線を送るとカノンが答えた。

 意味がないと切り捨てられたができる事とできない事は把握するべきであると俺は思っている。もしかしたらその意味のない事でも役に立つ日があるかもしれないからだ。


「スキルを弱らすよりもそのアイテムが強化をしてくれると言った方がいいような気もしますね。それならハルキさんのスキルが関係しているなんて思わないはずです」

「あ、そうか。わざわざ本当の能力を言う必要もないか」

「だな。それに高ランクになるにつれスキルやアイテムの能力の秘匿は当たり前になってくる。なら今からでもそうしておいた方がよいだろう」

「……ん」


 カノンの提案に不満な人はいないようなのでこの案でいくことにする。


「それならハルキさんにコピーしてもらいたいスキルがあるんです」


 カノンの話を聞いた後ギルドにやって来た。ジェイルさん達はまだ来ていないようなのでさっさと用事を済ませることにする。

 俺は1人でギルドの2階に移動しテーブル席で飲み物を飲んでいる1人の男に声をかけた。


「すみません。セフォンの街までお願いします」

「セフォンは遠いから銀貨5枚だ」


 話かけた男はチラリとこちらを見てそれだけ言って手元にある飲み物を口にした。


「わかりました。銀貨5枚ですね」


 俺は懐に手を入れて見えないようにして【アイテムボックス】から銀貨を取り出す。そのまま銀貨をテーブルに置くと男はそれをしまい飲み物を呷る。

 そして何も言われないままパーティー申請の通知が来た。愛想が悪いなと思いつつもパーティーに入ると男は席を立ち壁に向かって歩き出した。


「【フィールドウォーク】」


 男がスキルを言うと壁に長方形の黒い空間が出てきた。見た目は【ダンジョンウォーク】と同じだ。男はそのまま空間に入って行ったので俺もそれに続くとそこは屋外で目の前には街があった。


「それじゃあな」


 男はそれだけ言って再度黒い空間の入り空間と共に消えた。


【フィールドウォーク】

【行ったことのある街などに行ける。(ダンジョン除外)ダンジョン内不可】


 カノンが言っていたスキルがこの【フィールドウォーク】だ。ダンジョン以外の行ったことのある街や村にパーティーメンバーを連れて行ける移動スキルらしい。このスキルを使って色んな場所へ連れて行けるのが通称【飛び屋】と言われている。さっきの男もそうだ。

 さて、この街も【フィールドウォーク】に登録されているのを確認してリスターバに戻る。【フィールドウォーク】を意識して使えば冒険者ギルドにも行けるようで直接冒険者ギルドに戻って来た。


「……なんだ?」


 ギルドに戻ると何やら人だかりができていて騒然としていた。人の合間から見るとその中心にカノン達がいた。

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