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引っ越し

「おぉ~~! ここが主達の拠点ですか?」

「拠点というか住んでる家だな」


 しょうがなくフィアを家に案内したが本当にここに住む気なのか?

 名前を偽って身分を隠してるけどフィアはたぶん貴族だ。そんな相手にこの家はずいぶん小さく見えるだろう。


「空いてる部屋がまだあるから好きな部屋を使っていいから」


 家に入るなり見て回るフィア。特に水洗トイレは珍しがっていた。


「しかしこれでは水を大量に汲まなければならないのがホネだな」

「それは俺の魔法で水を出すから大丈夫だ」

「そうだった。主は全属性の魔法が使えるのだったな。それまで極めるのはさぞ苦労しただろう」


 エンチャントのスキルの実験で全属性使える事はその場にいた全員が知っている。だからフィアが話題にしても問題ないのだが苦労したと言う言葉が引っかかった。

 俺は【スキルコピー】でスキルを手に入れた。自分のパーティー限定での条件だったから苦労したにはしたがそれを知らないはずのフィアがそんな事言うはずがない。

 ならコピー以外で全属性持ちになれるという事だ。


「それほどでもなかったけど俺がやったのはたぶんフィアが考えてる方法じゃないよ。後学のためにフィアが知ってる方法を教えてくれないか?」

「ふむ? まあ別にいいが」


 方法を教えるのを渋るかと思ったがフィアはすんなり教えてくれた。


「クラスアップの時ギルドで天職の水晶を使っただろう? その上位に転職の水晶があるのだ」


 それは知っている。最初クラスアップした時に教えてもらったが転職の方が上位になってるのか。

 天職の方は適性によってその人にあったクラスを選ぶからカノンみたいに不遇クラスなってしまう。だから自分の好きなクラスになれるのなら見方によってはそっちの方が上位に見えるか。

 でも天職の水晶は使用者の適性でクラスが決まるからカノンのように盾役(タンク)のスキルがあるのに攻撃役(アタッカー)になったらあまりスキルが活かせないことになる。それはちょっともったいない気がする。


「その転職の水晶を使いマジックユーザーの火、水、風になりスキルを覚える。そしてさらに転職の水晶でクラスアップをし上位クラスの光と闇のスキルを覚えるという途方もない方法だ。時間と財力があれば不可能ではないがやる意味がないな。いや! 主を罵るわけではないぞ! 逆に私を罵ってくれ!」


 フィアは説明の最後に俺の存在を否定しやがった。

 でもまあ、フィアの言いたい事はわかる。その方法ではマジックユーザーのスキルが主軸になりそうだ。光と闇のスキルは結構レベルを上げないと強いスキルが覚えれないと思うからその手間と時間があるのなら最初になったクラスを極めた方が強くなれるはずだ。

 しかもこの世界にはレベルという概念がないしクラスアップできる頃合も自身ではわからないときた。


「それ実際にやった人はいるのか?」

「都市伝説みたいなものだ。少なくとも私は主を除いて見たことがない」


 都市伝説か。なら全属性持ちとバレてもそこまで大騒ぎされる事ではないようだ。

 フィアが空き部屋を見ている間にエルが夕飯の準備をしてくれている。

 俺には手伝わせてくれないので少々手持ち無沙汰だ。スキルで装備品を作るには素材が足りないし1人で素材収集しようとしたらみんな付いてきそうだしな。


「主少しいいですか?」


 自室でゴロゴロしていたらフィアが扉の前で声をかけてきた。


「いいよ。どうかしたのか?」


 扉を開けフィアを中に入れるとフィアはチラチラと部屋を見回す。


「ずいぶん家具が少ないのだな」

「そりゃちょっと前にこの家に住みだしたからな。まだ必要最低限しか物はない」

「その家具の事で頼みたいことが」


 ああ、なんとなく察せた。


「私が今使っている宿屋に私物の家具を置いているのですが、できれば家具を運ぶのを手伝ってもらえないだろうか?」

「ベットすらない今の部屋じゃ流石に無理だよな。わかった。暇だし手伝うよ」

「感謝する。その気持ちとして私の処女を」

「さっさと行くぞ」


 フィアが言い終わらないうちに部屋を出て行く。でも俺はフィアの宿屋の場所を知らないので結局フィアを待ってついて行くのだった。


「いやあ、主が【アイテムボックス】のスキルを持っていて助かりました」


 フィアが泊まっていた宿屋が思っていたよりデカかった。しかも部屋にあるものほとんどがフィアの私物だった。ベットなんか部屋の扉より大きかったんだが。流石は貴族様と言ったところかツインベットを1人で使うとは。


「ほんとなんでわざわざ今より小さい部屋に住みたがるんだよ。別に一緒のパーティーを組むだけなら宿は別々でもいいだろ。金には困ってなさそうだし」

「理由はもう説明したように主の寵愛を受けたいからだ」


 えっへんと大きな胸を張りよくわからない事を言うフィアに俺はもう聞くのはやめようと思い適応な相槌をしながら家に帰った。


「主、これは大問題だぞ」

「そうか? 普通に考えたらあたりまえだぞ」


 部屋にあった家具をそこより小さい部屋に入れようとしたら入りきれないのは当然の事だ。

 しかもツインベットなんて1つ置いただけで半分近くが埋まった。これで他の家具を入れようとしたらほとんどが家具で埋まる。


「新しい物を買うか置くのを諦めるしかないな」

「むむむ、どれも気に入ってるので悩むな……。いっそのこと壁を壊して隣の部屋と合体させれば」

「出て行くか?」


 俺は笑顔で出入り口を指しながら言う。

 フィアも自分の宿を解約したのに当日から出て行くなんてしたくないだろう。


「もちろん冗談だ! そんな事するわけないではないか!」


 嘘だ! さっきの目は本気の目だった!

 1人だけそんな部屋の広さだったら他の2人も苦情を言うだろう。言うよな?言うはずだ!


「すまないが明日にでも新しい家具を買うのを主も手伝ってくれないか? その、どうせなら他の人の意見も聞きたい」

「まあダンジョンに潜った後ならいいけど」

「よし! 言質は取ったからな!」


 ただの買い物くらいでなんでそんなに鼻息が荒いんだ?

 よくわからないがそれなら今日より早めにダンジョン攻略を切り上げた方がいいかな。女性の買い物は時間がかかると聞くからな。

 フィアの部屋にベットと衣装入れをひとまず配置して後は明日に持ち越しになった。


「ハルキさんフィアさんご飯ができましたよ〜」


 カノンの声を聞こえてきたのでリビングに向かうとテーブルに皿が並べられて食事の用意ができていた。


「ジェイルさんとバンクさんの2人でも冒険者として稼げる程度にするのと金策をしていこうと思うけど何か意見とかあるか?」


 食事をしながら今後の方針を言い他の案も聞いてみる。ソロで冒険者を続けてきたフィアには先輩としての意見も欲しい。


「金策とは具体的にどのような事をするのだ? 基本は護衛や対象を探すなどの手間がないクエストを受け道中遭遇した魔物を倒し、もしドロップアイテムが出たらギルドへ報告のときそのアイテムがクエストにないか見てからなるべく高値で売却する」


 ドロップが確定ではないのなら探して集めるのはとても大変だ。納品のクエストは手持ちにアイテムがあれば受けるって感じで冒険者の収入は主に護衛なのか。


「ならダンジョンはどうなんだ? 力試しや修練にしても結構人がいるぞ。納品クエスト目的だとしても手間と報酬が釣り合わないだろ?」

「む? 主はダンジョンにも報酬があるのをしらないのか?新しい階層に行けた者はギルドに報告して確認できれば報酬が出る。他にダンジョンの制覇をすれば多額な報酬も出ると聞く」


 そうか。俺はレベルアップとドロップ目的でダンジョンに潜っていたけどそんな儲け方もあったのか。

 次の階層へ行くにはボスを倒さないといけない。そのボスは階層が高くなるにつれ強くなり困難になる。当然行ける者は限られてくる。

 なら報酬を賭けて次の階層へ行ってもらい1回行ったなら【ダンジョンウォーク】を使いスキルの持ち主が行けたら後はその持ち主が運び屋と一緒に新しい階層へ行き、運び屋に任せれば誰でもボスを倒さずに次の階層へ行ける。もし相手が強くても入口近くに出口もあるからすぐに帰れるということか。

 ダンジョンの制覇は最下層のボスを倒せばレアアイテムが入手できボスを倒したと同時に魔物が出なくなりしばらくしてダンジョンがなくなるらしい。


「金策は納品クエストを中心にダンジョンに潜ってできれば階層の報酬を狙う感じでいこうと思う」

「今回はドロップが多めだったが毎回こんな感じなのか?」

「そうだな。いつもより悪いかな」


 今回はジェイルさんとバンクさんの戦闘経験を積むために2人に任せっきりだったからドロップ率は悪かった。それでも【アスカノのバックル】を装備しているから【幸運(大)】がパーティーメンバーにも適応されているから幾分いくぶんましなはず。

 トドメだけ俺がすればドロップするだろうが最後のおいしい所をさらうみたいで気が引けた。


「あれで悪いのか。それなら主の言う通りダンジョンで経験を積んだ方が早く強くなれるし金策にもなる」


 フィアの承諾も得てカノンとエルも問題ないようなのでこの方針でいくことになった。

 夕食を済ませ体を拭き後は寝るだけなのだが何故か3人共俺の部屋にいる。


「もちろん初夜のためではありませんか」


 さぞ当たり前のように返すフィアは置いといて他の2人もいるのが気になる。


「わ、私はフィアさんを止めようとしてですね。ホントですよ」

「……でもどうせならみんなで楽しむのもアリ」


 握った手の人差し指と中指の間に親指を入れた状態で俺に突き出すエル。

 エルさんどこからそんなものを覚えて来たんですか? それにハーレムは男としてのある種の夢ではあるが初めてが4Pとかハードルが高すぎませんかね?


「楽しむの何もこれから寝るんだよ。あと念のためフィアは縛っておいてくれ」

「……えー」

「えーじゃない。カノンも手伝ってくれ」

「はあ、わかりました」

「そんな! 人の3大欲求である性欲をお持ちでないのか!? 普通ならここでもがっ……」


 ぶー垂れながらもエル手際よくフィアを簀巻きに運んで行く。3大欲求には睡眠欲も含まれるのでこれで俺の安眠は守られた。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 本当にここの主人公は性欲が無いのか!?自分ならここまでアピールされたら…ねェ?
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