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金なしとプライド

「お前にどれだけ金を費やしたと思ってんだ!この!この!」


 うわーーお。この人なんでこんな所で怒ってんの?人に見られてテンション上がっちゃう人ですか? やめろ! そんなの見たくもないわ!

 さて、真面目な話色黒の人は首輪をしている。それはエルのしている首輪と同じ物だ。つまりこの人は奴隷。

 で話内容からしてこの奴隷の主人が今も蹴り続けている盾の人だな。

 しかしこんな場所でやる事じゃないだろうに。


「いいな……」


 コラ! お前等のせいでフィアさんが物欲しそうな目でこっちを見るようになっただろうが! どうすんのこれ! …………無視しよ。

 でもここで足止めをくらうのも嫌だし意を決して話かける事にする。


「あの、お取り込み中すみませんがダンジョンに入りたいんですけど」

「はぁ!」


 話かけただけでなんで睨まれるの! ガラが悪いなこの人。


「む、すまねぇ。今ちょっと切羽詰まっててな……」


 そう言うと男達は邪魔にならない所へ移動いた。

 素直にどいてくれたから悪い人ではないみたいだけど奴隷の扱いが酷い。いや、奴隷なんて普通こんなもんなのか? カノンもフィアさんも何も言わない。

 それにしても盾持ちのシールダーと奴隷の2人組。もしかしてオッサンズが話していたのはこの2人だったのだろうか? いや、それにしたってあの言い方は酷い。シールダーだってシールダーなりの戦い方をすれば戦闘に貢献できるはずなのに。


「……みんなちょっといいか?」

「どうにかしてあげたいんですよね。ハルキさんが必要と思うならした方がいいですよ」

「……ご主人様はリーダー。……文句なし」

「よくわからないが(あるじ)の言う事なら従おう」

「みんなありがとう」


 フィアさんの主になったつもりはないが今はスルーしておこう。

 俺は離れていった2人に近付き盾を持っている男に話かけた。


「あの、なにか困った事があるなら相談にのりましょうか?」

「あん!? ふざけんなよガキが! どうせお前等も見下してんだろ!」


 これは他の人から酷い扱いを受けて心が(すさ)んでるからなのかそもそもこういった性格なのかわからないが一方的に威圧するのはやめて欲しい。


「見下してませんよ。それに見下してたらわざわざ自分のパーティーにシールダーを入れませんよ」


 そう言い俺は離れているカノンを見る。


「盾持ち? 他の武器も持ってないみたいだな。ならアイツもシールダーなのか?」

「そうです。だから純粋に困ってる事があるなら力になりたいだけなんです」

「……お前等になんのメリットがあんだよ? 金か?」


 メリットか。なんの要求もせず手を貸しますなんて言っても逆に怪しいもんな。


「……その人まだ村人ですよね。なら彼のクラスアップをお願いします」

「え?」

「はあ!? コイツは奴隷だぞ! なんで奴隷なんぞに金を使わないといけねーんだ!」


 ん? エルのクラスアップの時もそうだったが奴隷でも戦わせるならクラスアップや防具を着けるのは普通じゃないのか?


「とにかく彼のクラスアップを条件に手を貸します。それでいいですか?」

「……わかったよ。でもな、コイツのクラスアップどころか今日の飯代だってねーんだよ」


 あー、なんとなくわかった。

 シールダーの火力では1匹倒すにも時間が掛かる。1日に倒せる魔物が少なかったらドロップも少なく当然収入も少なくなる。後はじり貧で金が無くなるってわけか。

 なら尚の事この奴隷をクラスアップした方がいいのに何故その考えにならなかったのだろう?

 まあ、さっきの反応ではしょうがないか。先入観のせいなのかその発想はないらしい。


「ならこうしましょう。今日1日パーティーを組んで戦ってドロップは山分けにしましょう。そのお金でクラスアップさせれば問題なしです」


 これならシールダーの戦い方のレクチャーもできるから一石二鳥だ。


「山分けだと? そんな事言ってちょろまかす……にしてもわざわざ俺達をパーティーに入れる意味もないか。わかったよ。どうせ俺達だけじゃろくに稼げないんだ。その案に乗ってやるよ」


 こうして久々の6人フルメンバーでのパーティーが出来上がった。



 ◇




「このダンジョンの1階層はジャックコボルトです。ハルキさんも戦った事がありますから説明はいらないですよね」


 この世界で最弱のジャックコボルトさん。前回は2階層で今回は1階層。俺達も強くなってるがフィアさんがパーティーに入ったことで余裕ができたと思ったので俺とカノンはクラスアップしてLv1になってるんだよな。


 カザマ ハルキ 16歳 男

 マジックナイトLv1


 カノン 14歳 女

 パラディンLv1


 俺はマジックナイト、カノンはパラディンにクラスアップした。

 マジックナイトは魔法を使うソルジャーがなりやすいが後衛からクラスチェンジしなければ基本なれないので少し珍しいようだ。

 性能は物理、魔法半々なので前衛後衛両方できるが火力がでないらしい。言うなれば器用貧乏。

 でも俺には【剛腕】や【魔力強化】といったバフがあるから他の人より火力が出るはずだ。

 カノンのパラディンはそもそもシールダーからクラスアップする人がいないので記録をとってないらしい。

 でも騎士のパラディンだから剣やら他の武器が使えるかと思ったがそうでもないらしい。とりあえずレベルを上げてどんな習得スキルが出るかそれ次第かな。攻撃スキルが出るといいのだが。

 ついでに後から入ったシールダーと奴隷の2人はこんな感じ。


 ジェイル 22歳 男

 シールダーLv5

 スキル

【鉄壁(小)】【俊敏(中)】


 武器

 青銅の小盾


 バング 24歳 男

 村人Lv17★

 スキル

孤軍奮闘(こぐんふんとう)】【剛腕(小)】


 シールダーのジェイルさんはAGIのあるタンクだ。カノンとは違う戦法を教えた方がいいが基本の受け方、受け流しなどは一緒なので最初はカノンに任せよう。問題は奴隷のバングさんだ。


【孤軍奮闘】

【パーティーが自身1人の時自身の全パラメーターがかなり上がる】


【剛腕】を持ってるから前衛は確定だがこの【孤軍奮闘】のスキルが優秀なのでシールダーと2人パーティーにするよりソロで戦った方が絶対強いと思う。

 パーティーを組まず個人個人で戦うにしてもジェイルさんに経験値が入らずレベルが上がらないからダメだし……。

 …………よし! 今は何も考えずレベル上げだ。


「それでお2人は何階層まで行ってるんですか?」

「……階層だ」

「……え?」

「1階層だよ! 悪いか! ああ、そうだよ! こっちはシールダーだからな! お前等がスイスイ行ける階層でも苦戦してんだよ! 雑魚にもこの有り様でボス部屋なんかに行けるか!」


 余程怒っているのかジェイルさんは一気に捲し立てる。

 でも最弱であるジャックコボルトに2人がかりでも苦戦するのはさすがにおかしい。一体どんな戦い方をしているんだ?


「まずお2人がどのようにして戦っているか見たいのですがよろしいですか?」

「戦い方だあ? んなもんコイツに抑えさせてる間に俺が攻撃すんだよ」

「……は?」


 バングさんの方を見るが無言で頷く。

 なるほど、これは苦戦する訳だ。


「ジェイルさん言ってはなんですがその戦い方には無理があります」

「なんだと?」

「シールダーの役目はタンク……え~と、敵の攻撃を受けるのが仕事なんです。だから貴方が攻撃を受けてその隙をついてバングさんが攻撃すれば苦戦なんか……」

「俺に奴隷の壁になれってか! ふざけんのも大概にしろよ!」


 俺の提案にジェイルさんは怒りを(あらわ)にする。主人が奴隷の盾になるのはプライドが許さないらしい。明日の飯を食うのも困っている状況なのにプライドなんか気にしているのか。


「おい。さっきから聞いていれば主が善意で言ってやってるのになんだその態度は」

「うるせぇ! 善意だって? 小馬鹿にされてるようにしか聞こえなかったけどな!」

「そう聞こえたのであればそれはお前の器が小さいからだろう」

「な、なんだと!」


 フィアさんが間に入るが余計にジェイルさんを刺激してしまったようだ。これは口でどう言っても無駄のようだ。


「カノン、エルちょっと2人だけで戦ってみてくれ。それとエルは風属性だけで戦うこと」

「わかりました」

「……ん」


 近場にいたジャックコボルトの所へ行くとカノンがさっそく前へ出る。


「えい!」


 盾で殴り飛ばした後押さえつける。これでジャックコボルトは文字通り手も足も出ない状態だ。


「……【ウインドボール】」


 エルの魔法1発で倒してしまった。あっけなさ過ぎる。これでは説得力に欠ける。


「次はバングさんが攻撃してみてください」

「え? 俺ですか……」


 バングさんはチラリとジェイルさんを見るとジェイルさんは俺を睨みながら促すように首だけ動かした。


「余りの武器がこれしかないのですが使いますか?」

「いえ、素手の方が馴れているのでこのままで……」


 アイテムボックスからブロンズソードを取り出すがいらないと言われたのでしまっとく。

 素手に馴れるというか武器を渡されたことすらないんだろうな。

 再びジャックコボルトに向かって進みカノンが同じように押さえつけバングさんがジャックコボルトの顔面を殴り掛かる。

 端から見れば無抵抗なゆるキャラを押さえつけ殴り続けるDQNにしか見えない。

 ……気にしたら負けか。

 バングさんが5発程殴った所でジャックコボルトは倒れた。


「…………」

「どうですか? 自分で倒す時よりも速く終わったのでは?」

「う、うるせぇ! あ、あれはそう、たまたま弱い奴に当たっただけだ! 1匹倒した位でいい気になるな!」


 ほう、そう言うならとことんやろうじゃないか。

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