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闇魔法と初心

「……ご主人様私まだ?」


 ハチミツをドロップするハニービーを倒すこと30体。エルに戦うなと指示していたがしびれを切らせて俺に聞いてきた。

 そんなに戦いたいのか君。


「ハルキさんそろそろエルさんも戦闘に参加させてはどうでしょう」

「う~ん」


 エル 16歳 女

 ソーサレスLv6

 スキル

【ウインドボール】【ウインドウォール】【ヴァンストーム】【ブラックアウト】【魔力強化(大)(中)】


【ブラックアウト】

【闇属性:漆黒の闇で複数の敵を攻撃する】


 エルはLv5に上がった時新しいスキルを覚えて今はLv6まで上がっている。

 今いる階層の魔物の平均レベルは16くらいだ。たとえ後衛職とはいえそんな低レベルの仲間を戦闘に参加させるべきか……。


「………………」

「……エルさん近いです。それと無言で圧力をかけるのは止めて」


 俺が悩んでいるといつの間にかエルが至近距離にいた。目がジト目(のような気がする)じゃなかったらキスされるかもとかふざけた妄想をするところだった。


「わかった。念のために【障壁】は使わせてもらうぞ」

「……ん。次は複数の魔物の所」


 新しく覚えた範囲魔法を使いたいのだろう。エルはわざわざ複数の敵と指定してきた。

 その気持ちはわかる。俺も新しく覚えたスキルは早く使ってみたいからな。敵の攻撃を1回防いでくれる【障壁】をエルに使ってから先に進む。


 ハニービーLv16

 スキル

【ダブルスピアー】【ポイズンスピアー】


 ハニービーLv16

 スキル

【ダブルスピアー】【ポイズンスピアー】


 ハニービーLv18

 スキル

【ダブルスピアー】【ポイズンスピアー】


 エルの要望で3体のハニービーがいる所に来た。


「……【ブラックアウト】」


 エルがスキル名を言うと魔物がいた通路が真っ暗になり全然見えなくなった。

 見えなくなっただけで鑑定で見ればまだ魔物は健在だった。

 これゲームでいう命中率を下げる暗闇状態なのか? 今まで状態異常にするスキルなんてなかったけどソーサレスのクラスはそういったスキルが多いのかもしれない。


「これはどういった状態なんでしょう?」

「エルのスキルの効果で敵が見えなくなってるみたいだ。とりあえずまだ倒せてないみたいだから俺も攻撃しておくか」


 俺も【フレイムストーム】で追撃してみたが黒い空間から炎の竜巻を見ることかできなかった。

 MPは減っているから発動はしてるはずなんだけど。あ、よく見るとLv15のハニービー2体が消えてる。ならもう1発。

 2発目のフレイムストームを使ったらあと1体だったハニービーも倒れた。それと同時に黒い空間も消え、通路にはハチミツだけが残っていた。

 時間経過というより魔物を倒したから消えたんだろうな。


「エル次の魔物にもさっきのスキルを使ってみてくれ」

「……ん」


 いまいちあのスキルの効果がわからない。暗闇状態にするなら魔物だけに作用すればいいのになんであんな通路まるまる真っ暗にするんだ?

 エルは指示どおりまたブラックアウトを使い通路に黒い空間が広がった。


「ふむ……」


 俺は黒い空間に近付き観察してみる。


「ハルキさんそんなに近付いたら危なくないですか?」

「わからないけど空間自体は動いてないみたいだ」


 魔物もそんなに動いてないからか空間も動いてない。それとも暗闇状態はこの空間限定なのか?

 俺はおそるおそる自分の手を空間に突っ込んでみる。うん。なんともない。

 ダメージも覚悟したけどなにも起こらないので少し肩透かしをくらったが次は本命の頭を突っ込んでみた。


「……お?」


 真っ暗な空間は色が抜け落ちモノクロというか灰色といった感じだった。

 ハニービー達はその空間で壁際に進んだりぐるぐる回ったりしていて俺に気付いてないのか?

 いや、今完璧に目あった。目があったにも関わらずハニービーは俺に攻撃しようとしないそのうえあらぬ方向へ進みだした。

 うん。完全に見えてないみたいだ。


「ちょっと中に入って倒してくるわ」

「……ん」

「はい、いってらしゃい……」


 なぜかカノンがこめかみあたりを押さえていたがどうかしたのか?

 俺は真っ暗な空間に入りハニービーに歩いて近付く。まだ俺に気付いてない様子だ。ここにじっとしていてもしょうがないので一閃のもと切り伏せる。

 全滅させた後に視界から色が戻った。空間が消えたようだな。


「あの黒い場所は大丈夫だったんですか?」

「ああ、ダメージもないし大丈夫。中は灰色な感じで魔物達も俺に気付てない様子だったから危険はなかった」

「……普通入らない」

「そうか?」

「そうです!」「……そう」


 2人から強めに言われる。

 う~ん。これでもちゃんと安全かどうか確認したんだけど。何がダメだったんだろう?


「そういえばこれでハチミツはどのぐらい溜まりましたか?」

「えーと、さっきのでちょうど30個だ」

「そうですね……。依頼人がアイテムボックスを持ってるとは限らないので50個貯まったら次の階層へ進みましょう」


 ビンに入ってるハチミツとはいえアイテムボックスがなかったらちゃんと保管する場合があるかわからないし滅菌処理してるのかも怪しい。ほどほどにしておくか。


「……家用に何個か欲しい」

「そうだな。なら55個までやるか」


 ハチミツを55個集めてから俺達はボス部屋へ進んだ。


「6階層のボスはホーネットです。ハニービーより大きな槍を持っていて強力な攻撃をしてくるみたいです」


 いつもどおりカノンからボスの情報を聞いてからボス部屋に入る。

 そこには大きな槍を両手に持ち頭の甲殻が防具に見える蜂型の魔物がいた。


 ホーネットLv28

 スキル

【ダブルスピアー】【スピアーアタック】【毒耐性(中)】


 見た感じ脅威になりそうなスキルはないな。それとは別に魔物にも耐性スキルもあるみたいだけど毒使わないから関係ないわ。


「【プロテクション】【挑発】」

「【バイセクト】【ブースト】【ブレイジング】」


 いつものとおりカノンが前に出て敵の攻撃を防ぎその隙に俺が攻撃するはずだったのだが片方の槍で斬擊は防がれてしまった。


「ちっ、なら【ファイアーボール】」


 ほぼゼロ距離からの火球を顔面にぶち込み距離をとる。


「ちょっと初心に戻るべきかな」


 今まで魔法に頼り過ぎて剣術を(おろそ)かにしていた。コイツにはサンドバッグになってもらい剣術の勘を取り戻そう。


「2人共悪いけどコイツは俺1人でやらせてくれ」

「ハルキさんかそう言うなら」

「……異議なし」


 2人に了解をとったので久しぶりのソロ戦だ。剣を握り直し重心を下げ構える。

 ホーネットは俺に向かって突っ込んで来てくれた。カノンに向かったら俺が戦いづらいから助かる。

 ホーネットは2本の槍を後ろに引き力を溜めている。スキルの予備動作かもしれないが関係ない。

 ホーネットから繰り出される2本の鋭い槍に加え俺に突っ込んで来る突進力これを食らえばかなりのダメージだろう。


「ふっ」


 剣の腹を使いその攻撃を受け流し俺はホーネットの懐に入った。

 そのまま剣を奴の横っ腹をたたっ斬る。


「さすがに1撃では倒れてくれないよな」


 剣を通過したホーネットがこちらを見ながら滞空している。

 む、さっきの1擊をくらって無暗に突っ込まなくなったか。


「なら【エアースラスト】」


 斬擊を飛ばすこのスキルなら飛んでいる相手にも攻撃することができる。

 だが【エアースラスト】はすんなり避けられてしまった。これまで動きが速い相手には範囲魔法で攻撃してたから単体スキルを当てるコツが掴めてないのが現状だ。近付いて使うなら【スラッシュ】でもいいしな。


「う~ん、やっぱり近付いて来たところを攻撃するしかないか」


 でもそれには相手の出方を見ないといけないし倒すのにあと何発いるかもわからない。

 奴をどうにかして飛べなくできればいいんだけど……。羽を斬っても破損しないだろうしなら岩を重しにして飛べなくするか。ん?待てよ。


「そうだ。ものは試しだ。【ヴァンストーム】」


 俺は魔法をわざとホーネットに直撃しないように使った。

 するとホーネットは大きく身体を揺らしながらゆっくり地上に落ちていった。

 やった。【ヴァンストーム】の放つ風で上手く飛べなくなったみたい。敵が飛べないならこっちのもんだ。


「【インパルス】【スラッシュ】」


【インパルス】による自動動作の後に振り向きざまに【スラッシュ】を叩き込む。


「終わったか」


 煙になって消えたホーネットの場所には1本の槍が落ちていた。


【ホーネットランス】

【蜂の魔物が使っていた槍。装備者の防御力が少し上がる】


 今のパーティに槍を使う者はいないからこれは売りだな。


「ハルキさん凄いです! 風属性の魔法にあんな使い方があったなんて初めて知りました!」

「……ソルジャーなのに魔法が上手」


 ドロップアイテムをアイテムボックスに入れると2人がやって来た。

 ダメ元でもやってみるもんだな。

 2人に賞賛されながら俺達は次の階層へ進んだ。 

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