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ランク上げとハチミツ

「エルさんどうしたんですか?」


 戻ってきたエルの様子がおかしいとわかるとカノンがすぐに駆け寄った。


「…………これ」

「え? ギルドカード? ……あ!」


 エルから渡されたギルドカードを見たカノンは驚き、なぜか気まずそうにする。


「だ、大丈夫ですよ! ハルキさんなら気にしませんから! あの人はちょっとズレてると言うか変わり者というか……」


 おい、エルを慰めているのはわかるがどうして俺がディスられているんだ!


「…………ご主人様…………これ」

「ん?」


 エルはおずおずと自分のギルドカードを渡してきた。後ろでは何故かカノンが無言の声援を送っていた。一体なんなんだ?


 エル

 ソーサレス ギルドランクG


 ギルドカードにはエルの新しいクラスとギルドランクが書かれていた。

 クエストをあまり受けていないのでエルのギルドランクはGのままだし、鑑定でエルのクラスは知っている。


「私のクラス……ソーサレスになった」

「…………それがどうかしたのか?」

「……ソーサレスは闇の属性。だから嫌われてる」


 んん? 闇属性だから嫌われている? 今まではダメージソースにならないから邪見にされていたのとは違うのか?


「よくわからないけど俺は気にしないぞ。いや、むしろよくソーサレスになってくれた!」

「…………ん」


 一瞬エルが笑ったように見えたけど気のせいかな。

 これでエルのレベルが上がれば闇属性の魔法が使える。闇属性のスキルはまだコピーできてないから都合がいい。

 風属性といいエルは俺のコピーできてない属性ばかり覚えるな。


「エルのクラスアップも終わったことだし今日は帰るか」

「はい」

「ん」


 アイテムの売却は明日でいいか。イグニファトウスや最後にレフケンスみたいな強敵と戦ったから早く帰りたい。

 そうして俺達3人は帰路についた。



 ◇



 次の日はなぜかいつもより早く起きた。

 この世界はテレビやマンガなどの娯楽がないので家に帰ったら晩飯を食べてお湯で身体を拭いたら後は寝るだけだ。それでなのか同じ時間に寝て同じ時間に起きるという規則正しい生活ができている。

 なのに今日はいつもより早く起きた感じがするし外もまだ薄暗い。もう少し布団でゆっくりしようと寝返りを打つと手に何やら柔らかい感触があった。


 ムニムニ


 なんだろう、スベスベでそれでいて手に吸い付くようなこの感じは。


「んっ……はぁ……」

「っ!」


 俺じゃない誰かの声が聞こえたので咄嗟にベッドから飛び出る。


「誰だ!」

「……んん。……おはようご主人様」

「エル? ってなんで裸!?」


 そこには一糸纏わぬエルがいた。


「どうしてここにいるんだ?」

「……夜這い?」


 俺に聞かれても困る。それに俺は服を着たままなので事後ではないと思いたい。

 初めてが寝てる間とか嫌だぞ俺は。


「……やろうとしたけど眠くなった」

「あ、そう……」


 どうやら俺の貞操は守られたらしい。

 ……朝っぱらから疲れた。


「もういいから早く服を着な」

「……続きは?」

「しない!」


 続きもなにも始まってすらないよ!


「……そう。なら朝ご飯作る」


 そう言いエルは床に脱ぎ捨てていた自分の服着て部屋を出て行った。

 なんだったんだ? 部屋に来る事はあったけどベットに潜り込むなんて1度もなかったのに。まあ、いいか。

 2度寝の気分じゃなくなったし着替えよう。



「おはよう」

「あ、おはようございますハルキさん。朝食はもう少し待ってください」

「ああ、わかった」


 俺が1階のリビングに行くとカノンも起きてエル手伝いをしていた。カノンは調理自体はできるのだが味付けが壊滅的なのだ。どうしてこうなった?

 それと俺は手伝いをしてはいけないらしい。前に俺も手伝おうとしたけど2人して拒否してきたんだよな……。奴隷であるエルならわかるがカノンも拒否するのが腑に落ちない。

 さて、今日は何をするか。いい加減ギルドランクを上げるべきかな。レベルを知らないこの世界でギルドランクが強さを見る基準になっている。

 上級クラスになっているエルのギルドランクは最低のGランクだ。つまり『Gランクなんて生きてる価値もないゴミ屑だ! クソ雑魚だ! そんな奴が上級クラスだと? 笑わせる!』と言われている様なもんだ。これはマズイ。


「……朝ご飯」

「朝食ができましたから食べましょう」

「ああ、そうだな」


 朝食を食べながら2人にも相談して今日の予定を決める事にした。



 ◇



「それじゃあ俺は昨日のドロップ品を売りに行くから」

「こっちはなるべくいい報酬のクエストがないか探しときます」

「……目指せ、Aランク」


 俺達は朝食を食べ終わった後ギルドに向かい手頃なクエストを受ける事にした。

 字の読めない俺がその場にいてもあまり意味がないのでその間にドロップ品の売却を済ませる事にする。


「すみません。ドロップ品の売却をお願いします」

「承ります。ではこちらにどうぞ」


 受付嬢さんがトレーを取り出したのでその上に昨日ドロップした毒液を20個をアイテムボックスから出す。


「それと近くのダンジョンの5階層でウィスプが出る階層なんですがギルドの情報にない魔物がいたんです」

「魔物の名前やスキルはわかりますか?」

「はい。魔物の名前はイグニス・ファトウス。スキルは無属性攻撃無効と継続ダメージのある範囲攻撃。そして範囲系と思われるの即死攻撃です」


 俺の話を聞いていた受付嬢の顔がみるみる青ざめていく。


「……な、なんなんですかその魔物は! 即死の範囲スキルって危険過ぎるじゃないですか! 早く手練れの冒険達を集めて討伐しに行かないと!」

「いや、その魔物は倒しましたよ」

「いくら人が行きそうにない階層でも万が一の…………倒した?」


 受付嬢さんがパニクっていたが俺の一言で冷静になったようだ。


「はい。ウィプスより遥かに強い魔物でしたけどなんとか……」


 バフをいろいろ重ねて倒したけど普通ならもっと苦戦していただろうな。


「え、え~と。すみませんがパーティーのリーダーの人を呼んで来てもらってもよろしいでしょうか? 詳しく聞きたいので」

「あ、リーダーは俺です」

「……え?」

「……え?」


 受付嬢さんなぜそこでそんな反応になるんですか。俺みたいなガキがリーダーをしているのが不思議ですか? 俺も不思議です。

 でもここのギルドは首都ということもあり若い冒険者もかなりの人数がいる。最初の町のギルドには全然いなかったのに。

 だから俺みたいな奴がリーダーでも不思議ではないはず。……はず。


「し、失礼しました。アイテムボックスのスキルを持っていたのでてっきり運び屋の人かと」


 運び屋って確かカノンの話では長旅で冒険者の食料やら道具、ドロップアイテムを持つ人だったけ。他にも飛ばし屋なんかもあったか。

 あー、なるほど。俺がアイテムボックスから売るドロップ品を出したからそう思われたのか。

 アイテムボックスは個別スキルだ。個別スキルで人生が決まるこの世界ではアイテムボックスのスキルでは普通冒険者にはならないみたいだ。


「いえ、気にしないでください。一応これ証拠」


 俺はギルドカードを出して受付嬢さんに見せる。


「ギルドランクEですか。……ん? Eランクの人がリーダーのパーティであそこの5階層?」

「それとイグニス・ファトウスの外見ですが黒色のウィスプって言った方がいいかな。色以外はほとんど同じなので注意が必要ですね。他に質問はありますか?」

「外見とスキルが分かれば大丈夫です。そうですね。そんな魔物は目撃情報がないのでおそらくユニーク系の魔物でしょう」


 レベルやスキルの名前は聞かれなかったな。レベルの事は当然ながらカノンの説明にスキルの名前が一切出なかったのはこのせいか。

 聞かれなかったからわざわざ言う必要もないか。変な目で見られるのも嫌だし。


「それではドロップアイテムの鑑定をしますのでしばらくお待ちください」


 そう言い受付嬢さんは奥の部屋へ行く。

 1種類しかないからすぐに終わると思いその場にいる事にした。それがいけなかった。


「「あ!」」


 偶然なのかそこには昨日助けたオッサンズがいた。

 冒険者同士だからいつかはまた会うとは思っていたけど昨日の今日とは。


「テメェは魔物から逃げたクソ野郎じゃねーか!」

「ならカノンさんもいるのでは?」

「お嬢ーーー!」


 相変わらずうるさい奴らだな。もういっそ逃げるか? でも目をつけられてるみたいだし問題の先送りにしかならないか。どしよう。


「ハルキさんこのクエストを受けたいんですがいいですか?」

「……次の階層のアイテム。ハチミツ集め」


 これまたタイミングよくカノンとエルがクエストの貼り紙を持ってきた。


「お嬢!」

「あ、おはようございます」

「……誰?」


 カノンは律儀にオッサンズに挨拶をする。別にこんな奴らほっといていいぞ。

 エルなんか昨日の事を忘れてるっぽいが。


「今アイテムの査定中だから金を受け取るときそのクエストを受けよう」

「あの、内容は聞かないんですか?」

「2人が選んだのなら変なのじゃないだろ。それに受けたいやつの方がやる気も出るしな」


 カノンからクエスト受注の紙をもらう。


「お嬢そんな奴見限って俺達のパーティに入りましょうや!」

「そうですよ! こんな奴の所より俺達の所がより安全です!」

「ワシ等の方が強い!」


 またパーティの勧誘か。つか冒険者をやっていて安全な所なんてあるのか? 昨日だって低階層なのにいきなり規格外の魔物が出てきたばかりだ。

 そういうイレギュラーな事態にオッサンズが対応できるか甚だ疑問だ。


「遠慮します。それにハルキさんのパーティに入る時に勝手にパーティメンバーから抜けないと約束したのでダメです」

「「そ、そんな……」」

「ぬぅおぉ~」


 あー、そういえばそんな事も言ったけ。

 オッサンズがすごい形相(ぎょうそう)でこっちを見てる。カノンに即答されたのは俺のせいではないぞ。


「…………」


 エルがじーっと俺を見ているけどどうかしたのか?


「……私、約束してない」

「え? ああ、悪いけど俺の奴隷の間はエルには強制的にパーティに入ってもらう。だからそういう条件はあえて言わなかった」

「……そう」


 奴隷から解放したとき最悪1人でも生きていられるようにレベルを上げとかないといけないからな。


「お待たせしました。……何かありましたか?」

「いえ、なんでもありません」


 受付嬢さんが戻ってきたので代金を受け取りクエストを受ける。

 その間もオッサンズからの私怨の込められた睨みが続いているが無視する。


「さて、クエストも受けたことだしダンジョンに行くか」


 やることも終わったので俺達はギルドを出てダンジョンへ行く事にする。


「はい!」

「……ん」

「「「ちょっっと待ったぁぁ!!!」」」


 なんだよ。オッサンズお前らには言ってない。


「本来パーティメンバーの脱退は本人の自由のはずだ! それをお前は変な条件を出して侵害している!」

「そうです! そんなの間違ってます!」

「ぶっ殺したらーー!」


 まあ、言ってる事はまともだ。が、最後のはただの暴言じゃねーか!


「やめてください! 私のエルさんも好きで残るんです!」

「……ウザイ」


 俺にいろいろ文句を言ってくるオッサンズにカノンが抗議する。

 エルもどこでそんな言葉を覚えたんだ! つーかこの世界にもその言葉あるんだ。


「で、ですがお嬢!」

「ハルキさんこんな人達ほっといて早く行きましょう」

「……時間の無駄」


 俺はカノンに背中を押されダンジョンへ向かうのだった。


「おのりぇぇぇ!!!」



 ◇



「6階層の魔物はハニービーです。両腕とお尻の針で攻撃してきてその針に当たると稀に毒の状態になりますから気を付けてください」


 俺達はダンジョンウォークで6階層に移動してカノンから魔物の説明を受けていた。


「もし毒の状態を放置してたらどうなるんだ?」

「どうなるって……。毒のダメージで死んでしまいますよ。だから解毒薬または毒消し草で治さないといけません」


 全部売ってませんよね? とカノンが目で訴えてくる。

 毒消し草は最初のダンジョンの2階層に出てきたブルーウッドからドロップしたアイテムだ。

 解毒薬は必ず解毒できるが毒消し草は確率らしい。

 毒状態は時間経過で消えるゲームもあるけどこっちがそうなのかわからないから全部は売っていない。でも大量にあるわけではないから気を付けて行こう。


 ハニービー Lv18

 スキル【ダブルスピアー】【ポイズンスピアー】


 少し進んだ所に両手に槍を持ったコミカルな蜂がいた。

 全魔物がこんな見た目ならよかったんだけどな。このダンジョンはスパイダーやらワームやら見た目がエグいのが多すぎる。


「クラスアップしたばかりのエルはしばらく戦闘に参加しなくていいからな」

「……………………わかった」


 不承不承(ふしょうぶしょう)にエルは頷いた。

 クラスアップでLv1になっているんだ。念のため離れた所で待機してもらう。


「それじゃあ行くか」

「はい」


 俺とカノンで魔物に近付き先制の魔法を放つ。


「【ファイアーボール】」


 魔法がハニービーに当たるがまだバフを掛けていないので当然1撃じゃあ倒れない。

 ハニービーが肉薄し手に持つ槍で攻撃してくるがカノンがきっちりと盾で防いでくれる。

 俺は攻撃してきた隙をつき更に剣で切り裂き戦闘は終了した。


【ハチミツ】


 聞いてたとおりハニービーのドロップはハチミツか。

 御丁寧にビンに入っている。こういうの見てたら木や切り株を伐採してたら稀にハチミツが手に入るゲームを思い出すな。あのハチミツはウィルス感染を少し治す効果もあったけ。


「そういえばクエストの依頼にはハチミツが何個いるんだ?」

「……たくさん」

「個数の上限はなくできるだけたくさんだそうです。あ、でも20個以上になると依頼主の方に直接渡した方がいいそうです」


 誰しも俺みたいにアイテムボックスのスキルを持ってるわけじゃないからその数にもなったらビンが割れたり、戦闘中邪魔になったり運ぶのも苦労しそうだ。


「それじゃあ今日はここの階層を周回するか」

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