ワームと最後のスキル
「4階層の魔物はワームです。武器や防具を溶かす液を吐き出すので絶対に避けてください」
こういうのってアニメやゲームなら服と防具だけ溶けてエロハプニングになるんだろうけどガチのだったら身体まで溶けかねない。試すのは危険だし装備もタダじゃないしな。
「……ハルキさん聞いてます?」
「え? あ、聞いてる聞いてる」
「ハルキさんはパーティーのリーダーなんですからしっかりしてくださいね」
リーダーか。最初はカノンが暴走していたから指示していたけど自然とエルにも指示をしていたな。
「それと私、またスキルを覚えたんですよ。」
「お、マジか」
そういえばさっきの戦闘が終わって俺とカノンのレベルが上がっていたな。
それに心なしか【プロテクション】と【挑発】を覚えた時より嬉しそうだ。
カザマ ハルキ 16歳 男
ソルジャー Lv17
カノン 14歳 女
シールダー Lv15
スキル
【プロテクション】【挑発】【バッシュ】【鉄壁(中)】【生命力(大)】
【バッシュ】
【攻撃をした敵1体の動きを止める】
ゲームでよくあるスキルだな。シールドバッシュなど盾で攻撃して相手の体勢を崩す技だ。
問題は動きを止められる時間だな。さすがに10秒もないだろう。
「ならまずはカノンのスキルを試してみるか」
「はい」
いつもどおり1体の所に行ってみる。そこにいたのはミミズみたいな魔物だった。
ワームLv9
スキル
【溶解液】
ここのダンジョンに来てでかいアリやらクモやら生理的にキツイ魔物がよくいるな。
ゲームとかでも嫌悪感がするモンスターとか出るけどリアルで見るとゲーム以上にくるものがあるな。
「それじゃあ行ってきます」
普通の女の子なら躊躇する所をカノンは躊躇いなくワームに突っ込んで行った。異世界の女子強い。
カノン1人で近付いた為ワームの標的にされたがスキルを使うにはちょうどいいか。
ワームがカノンに近付きおそらく頭と思われる先端が三又に別れた。その内部には蛇腹状の牙が無数に並んでいた。
「…………」
アカンわ。初見であんなことを目の前でされたらトラウマになるわ……。
「【バッシュ】!」
あれがワームの戦闘体勢なのかはわからないけどカノンはそのまま両手で持った盾で攻撃する。
三又に別れた頭部を思い切り殴られたワームは地面に倒れ、すぐに体を起こさずピクピクと痙攣しているようだった。
この状態で攻撃したらクリティカルやダメージボーナスとか出ないかなと思うのはゲーム脳だからか。
「てぇい!」
ワームが動かないのを確認してカノンは追撃するとワームはすぐに動き出した。
さすがに1撃いれたら動き出すみたいだな。
「カノンもう1回【バッシュ】をいれられるか? 出来れば動けない時間を知りたいんだ」
「はい、やってみます」
ワームと戦いながら答えるカノン。問題無く2回目の【バッシュ】も当て8秒程でワームが動き出しだ。
8秒か。思ったより長いな。これなら対人戦でも使えそうだな。
いや、むしろ魔物より人の方が有効だ。これなら殺さずに捕縛も出来そうだ。
カノンのスキルも確認出来たのでさっさとワームを倒す事にする。
【毒液】
……なぜ毒なんだ? 溶解液=毒にはならないだろう。
まぁ、武器に使えば一時的に毒属性が付与できるらしいから使えるアイテムだ。
お、他にも武器強化にも使える。でもそこそこな数がいるな。他の素材もいるしこれも後々だな。
こうして俺達はワームの【溶解液】に気を付けながら倒し続けた結果。
カザマ ハルキ 16歳 男
ソルジャー Lv18
カノン 14歳 女
シールダー Lv16
エル 16歳 女
マジックユーザー Lv14
毒液30個
順調にレベルも上がってドロップも結構したな。【幸運(小)】をコピーしたせいか俺がトドメをさしたら必ずドロップした。
あと1回危ない時もあったな。3体同時に【溶解液】を使われて道幅いっぱいにかけられたんだ。
俺も前衛にいたからカノンを掴んで後方に向かって【インパルス】を使って緊急避難をしてなんとか避けれた。
攻撃スキルだが攻撃モーションがあるなら適当に後ろの壁をターゲットにして使えばそこまで移動してくれる。
この世界に武器、防具の耐久値があるのかわからないけど危なそうな攻撃は避けるにかぎる。
そしてワームを倒しまくって今は4階層のボス部屋までたどり着いた。
ボスってその階層でよく出る魔物の上位っぽいからな。気持ち的に行きたくないけどそういう訳にはいかないので覚悟を決めよう。
「4階層のボスはサンドワームです。溶かす液に加え砂も出すようになります」
サンドワームの砂要素は砂を出すだけなのか?ゲームではこんなモンスターは砂漠地帯にいたりするもんなんだが。まぁいいか。
バフをかけ直してボス部屋へと入る。
黒い霧が集まって出て来たのは見た目はワームと同じだが大きさが2倍程ありそうだ。
サンドワームLv20
スキル
【溶解液】【砂嵐】
【砂嵐】
【地属性:砂による広範囲の竜巻でこれに巻き込まれたら方向を見失う】
思ったより強力なスキルだな。でもダンジョンのボス部屋なら方向がわからなくてもそれほど脅威にはならない。
それでも視界を潰されてからの【溶解液】が1番怖いな。
【溶解液】を防げそうなスキルがあるにはあるけど1回の攻撃しか防げないし、1人分しか出来ないからな……。
あとはウォール系の魔法で【アースウォール】くらいか。
「エルは壁際で魔法で牽制。カノンは俺と接近戦だ」
「……ん」
「はい」
敵の広範囲攻撃の有効範囲を知りたいからエルを壁際にいさせる事にしたがカノンの【バッシュ】と俺の攻撃力でゴリ押ししてスキルを使わせずに倒せるかもな。
「でも念のため【障壁】」
このスキルは前一緒にクエストをしたパーティーのヒーラーからコピーしたものだ。
【障壁】
【パーティー内の1人を対象に敵の攻撃を1回だけ防ぐ】
【バイセクト】などのスキルを使っている為か見た目は変わらないけどMPはちゃんと減っているから大丈夫だろう。
俺が先行してカノンが続く。
「【インパルス】!」
「【バッシュ】!」
俺がスキルを使った後からカノンも盾で攻撃し、サンドワームが動きを止める。
あれ? この世界にはスキルのクールタイムがない。これ、もしかしてハメ技になるのか? 主に格ゲーであるけど。ボスの魔物相手にハメ技って……。うん。深く考えず倒せるならさっさと倒そう。
「【バーストラッシュ】!」
「【バッシ……あれ?」
ファイターのクラスで覚える【ラッシュ】の上位スキルで連続で斬りかかるとサンドワームは倒れた。
ハメる気満々だったカノンのスキルも不発に終わってしまった。ただでさえ攻撃力に関係するSTRが高いのに加えてバフをかけすぎたかな。
【バイセクト】
【自身のSTRを一定時間上げる】
【ブースト】
【自身のSTR・VITを一定時間上げる】
【ブレイジング】
【自身のHP・STRを一定時間上げる】
【シャイニングフォース】
【光属性:パーティー全員のスキル攻撃の威力を上げる】
【不撓不屈】もあるが今のHPは満タン状態なのでSTRは上がってない。
もうこれ1人で無双できるんじゃね。
いや待て、そんな事してたら変な奴等に目を付けられかねん。やっぱりやめておこう。
サンドワームが倒れた所に砂の入った小瓶が転がっていた。なんだこれ?
【星の砂】
【所持していると地属性の耐性が少し上がる】
防御力じゃなく属性への耐性か。ゲームならキャラクターごとにばらつきがあったりするけど、そのあたりどうなんだろう? ま、いいか。
持ってるだけで効果が出るのはいいけどアイテムボックス内でも有効なのか? 同じアイテムで効果は重複するのか? わからない事が多いけど後回しにしておこう。
「……ご主人様。3つ目のスキル覚えた」
「ん? そうなのか?」
「……ん」
エルが自分からスキルの事を言うのは珍しいな。【鑑定】で見ると3人共レベルが1ずつ上がっていた。
カザマ ハルキ 16歳 男
ソルジャー Lv19
カノン 14歳 女
シールダー Lv17
エル 16歳 女
マジックユーザー Lv15
スキル
【ウインドボール】【ウインドウォール】【ヴァンストーム】【魔力強化(大)(中)】
「すごいです。クラスアップしてまだ3日なのに。あ、ダンジョンに入りだしてなら2日でしたね。それなのにもう最後のスキルも覚えれたんですか」
「……えっへん」
「最後?」
「はい。最初のクラスアップで習得できるスキルは3つだけなんです。それ以上はまたクラスアップしないと覚えれません」
なるほど。スキルの数がクラスアップの基準になっているのか。それでカノンは【バッシュ】を覚えた時嬉しそうだったんだな。
でも、まだ★が付いてないからクラスアップ出来ないけど。
「ならカノンもエルも、もう少ししたらクラスアップだな」
「いえいえ。スキルを覚えれたとしても最低でも何週間もかかると聞きました。でもハルキさんならできると思います。だってあんなに強いんですもの」
俺の言葉を否定するがどこか嬉しそうなカノン。
やっぱりクラスアップできる事が嬉しいみたいだ。
でもごめんなさい。俺もまだできません。俺の強さってコピーしたパッシブスキルの数が多いからだと思われるし。
「とりあえず次の階層へ行こう。MPを回復さして試したいスキルがあるんだ」
戦闘毎にスキルを使ってるけどそれでもMPに余裕ができるまでレベルが上がってきた。今ならMP不足で使えなかったスキルも使えるようになってるかもしれない。




