ローブと油断
今日も昨日とダンジョンでレベル上げた。
今回は降ろし屋に料金を払い3階層からスタートだ。もちろんその際階層を行き来するスキル、まだ持っていなかった【器用(小)】をコピーさせてもらった。
【ダンジョンウォーク】
【ダンジョンの階層を移動できる。ただしパーティーメンバーの入った階層に限る】
試してみたらこのダンジョンの1階層から4階層まで選択肢が目の前に表れた。
やはり階層の行き来だけでこの場で他のダンジョンへは行けないようだ。
何も選ばずキャンセルをしたらMPは減っていなかった。移動したら消費される仕様みたいだ。
ちなみにこのスキルを使ったら必ず階層を降りたすぐの場所に移動させられる。どうやらここは魔物が来ない安全地帯のようだ。これならわざわざ来た道を戻らず【ダンジョンウォーク】を使って側のワープホールで帰ればいい。思ったより使えるスキルだ。
今日はレベル上げを最優先で進むつもりなので、なるべく魔物が多い所を選んでボス部屋まで行く。
「お、これで15枚揃った」
スパイダーがドロップする布は防具を作る素材になる。その防具を作るための必要数がさっきの戦闘で集まった。
早速【防具製作・強化】のスキルを使ってアイテムボックス内の布を十五枚を消費して防具を作る。
【ローブ】
【後衛クラスが装備できる布で作られた防具。初心者用】
ローブ。よく魔法職が装備するアイテムだから後衛クラス用か。
布は他の素材を使っていろいろ防具を作れるけど後衛用か軽装備になりそうだな。
にしても初心者用か。これを作るのに素材を集めるのはホネが折れた。これなら防具の値段が高いのも頷ける。
「エルはこれを着てくれ。あまりいい装備じゃないけどないよりましだ」
俺はアイテムボックスからローブを取り出しエルに渡す。アイテムボックス内の素材で作って装備は自動的にアイテムボックスに送られる。
「……いいの?」
「カノンがいてくれるからターゲットになりにくいけど念のためだ。受けるダメージは少ない方がいい」
そう言うとエルは頷いて受け取ってくれた。何故かエルは装備品を渡す時1回確認してくる。
成長促進の指輪を素直に受け取ったのはそれが装備品と気付いていなかったからだと思う。
ローブはフードのように頭から被り、襟で留めるようにできてきる。これならエルの奴隷の首輪も隠れて一石二鳥だ。
エルがどう思っているか知らないけどあの首輪を外してあげたいと俺は思っている。そのためには奴隷を売っている奴隷商に金を払い、鍵で外して貰わないといけないらしい。
今は装備に金を回したいのでエルの首輪を外してあげるのはまだ先になりそうだ。
「もう少ししたらボス部屋に着くけど大丈夫か?」
「大丈夫です! どんどん行きましょう!」
「……問題ない」
おおう……。ここまで結構速いペースで多くの魔物と戦って来たけど二人共疲れてないようだ。レベルが上がってるから体力とかそういったパラメーターが上がってるのかも知れない。
二人が問題ないと言っているのでそのまま進む事にし、しばらくするとボス部屋まで着いた。
「3階層のボスはタランチュラです。毒の霧を出してくるので厄介ですがタランチュラ自体はそんなに強くないので、ハルキさんとエルさんの魔法で離れた所から攻撃すれば問題ないと思います」
タランチュラか。俺の世界では全身に短い毛の生えた毒グモでそこまで強い毒を持つクモは少ないらしいがこの世界では噛むのではなく霧を吐くのか。異世界怖い……。
「あ、毒消し草なら持ってるけど」
「え~と、毒消し草は解毒できない時もあるので普通は解毒薬を使います」
「そ、そうなのか」
毒消し草は確率なのでちゃんと解毒をしたいなら解毒薬を使えって事か。
おそらく毒消し草を【調合】のスキルを使って解毒薬にするんだろう。
冒険者で【調合】のスキルを持っている奴なんていなさそうだし。コピーできないなら薬を買うしかないか。
「【シャイニングフォース】」
今回はカノンの言う通り俺とエルを主体で戦う事にして切れてたバフをかけ直してボス部屋に入った。
タランチュラLv15
スキル【毒霧】【粘糸】
黒い霧が集まって現れたの全身短い毛に覆われ六つの目がある巨大なクモだった。
口には鋭い牙を持ち噛まれたら痛いでは済まなさそうだ。
「【ファイヤーボール】」
「……【ウインドボール】」
まずは一番MP消費の低い魔法で様子見をしたかったがタランチュラは思ったより素早く俺とエルの魔物をすんなりと避けてしまった。
「ッチ、なら【フレイムストーム】」
さすかに範囲魔法なら逃れられまい。
案の定タランチュラは炎の竜巻に呑まれた。
でもどうするか。範囲魔法じゃないと避けられるが範囲魔法が使えるのは俺だけだ。
接近戦ならカノンが相手の攻撃を受けてる時に攻めれるが毒が怖いな。
状態異常になった事がないからわからないけどすぐに毒の効果が出るかわからないし、動けない状態になったら堪ったもんじゃない。
ボス戦でそんな危険はおかしたくないけど時間をかけてレベルを上げるための時間を無駄にしたくない。
ここは【毒霧】を使われる前に倒すしかないな。よし。
「2人共、作戦変更だ。このままじゃあいつを倒すのに時間が掛かりすぎる。だから俺が接近戦を仕掛けてさっさと終わらせる」
「……わ、わかりました。でも毒には気を付けてくださいね。受ければ動けなくなってしまいますから」
少し悩んだカノンが毒の事を教えてくれる。これは毒を受けたら集中攻撃をくらいそうだな。
「【バイセクト】【ブレイジング】いくぞ!【インパルス】!………うわっ!」
まずは自身のバフをかけてからまだ使っていなかった攻撃スキルを使ってみると体が勝手に動き出し、炎の竜巻が消え姿を見せたタランチュラに向かって突っ込んで行く。
そして相手に一突きして通り過ぎて自分の意思で体が動くようになった。
ビ、ビックリした。たぶんこのスキルはモーションが決まっておりその動きを自動でやってくれるんだな。
これはタイミングを考えないとカウンターがきそうなスキルだな。
「ハルキさん!」
「ご主人様危ない!」
「え?」
スキルでのモーションに驚いていたらタランチュラの事を忘れていた。
見ればタランチュラは何かを吐き出す動けないをしていた。
ヤバイと思った時にはもう遅かった。タランチュラはそのまま毒の霧を吐いた。
「【ウインドウォール】」
目の前に緑色の渦巻く壁が現れた。
壁からは風が出ていてその風のおかげで霧は出した自身に向かって行き、タランチュラはもがき苦しんでいるみたいに8本の脚を意味もなく動かしている。
「た、助かった。ありがとうエル」
「……油断。ダメ絶対」
ぐうの音も出ないな……。【ウインドウォール】はエルがLv10になった時覚えたスキルだ。
【ウインドウォール】
【風属性:風の壁を出す】
自分の毒をくらったタランチュラは脚をピクピクさせて動かない。けど、スキルが使えるかもしれないしさっさと倒しておこう。
「【スラッシュ】」
この攻撃がトドメになりタランチュラは倒れた。
俺は接近戦用のクラス。しかもSTRを上げるスキル【剛腕】を大中小をフルコンプ済みだ。これなら大抵の敵には苦戦しないだろう。
いつも魔法を主体で戦うのはその方が簡単だからだ。離れた所から先制攻撃してこちら来る前に倒せればいいし、倒せなかった時はカノンが抑えてくれるので楽に倒せる。
【シルク】
タランチュラのドロップはシルクか。布の上位素材だな。これを素材にして防具を作ったら今エルが装備している【ローブ】よりいい防具が作れるだろう。
だが、今は1人の防具より全員のレベルアップが重要だ。この階層より深い階層の方が経験値もいいだろうし。
戦いにもまだ余裕がある。キツイと思った時にでも装備品を揃えばいいか。
そう思い俺達は4階層へと足を進めた。
「確かにハルキさんは強いですよ! 私達がいてもいなくても関係ないぐらい強いです! それでも戦っている途中に気を抜くのはどうかと思います!」
「………………危険」
「はい。すみませんでした」
先ほどの戦闘で俺が油断して危うく相手の毒攻撃をくらうところだった。そのことで2人から責められても何も言えない訳で。
心配してくれているとわかっているから余計に反省しないといけない。
「次から気をつける。心配させてごめん」
「……ご主人様。やっぱりどこか抜けてる」
「これは私達がしっかりしないといけないですね。エルさん頑張りましょう」
「……ん」
1つの失敗でこの言われようか……。これまでそんなにポカはしてない……はず……たぶん。
それにしても2人とも仲いいな。2人して話をしてる時が多いし、俺に隠れてヒソヒソ話をする時もある。やはり同じ女性だから話が合うかな……。
別に仲間外れにされて寂しいとか仲間外れにされてるんじゃないかとか思ってませんよ。はい。




