奴隷少女
「こりゃまた。派手にやったな」
カノン達2人が来て俺と女性が座っている周りには盗賊団の死体が転がっている状況を見たオヤジの感想はそんなものだった。
「ハルキさん、ケガは大丈夫なんですか‼」
血だらけの俺を見たカノンが驚いて走ってやってくる。
これは返り血だと説明するとひとまず安心してくれた。
「いくらなんでも1人で戦うなんて無茶し過ぎですよ。見て来るって言ったまま戻って来ないし、どれだけ心配したと思ってるんですか!」
安心したと思ったら今度は怒りだした。俺が一方的に悪いのでしばらく小言を聞いておく。
「これでもう襲われる心配はなくなるな。ところでその嬢ちゃんはどうしたんだ?」
「盗賊達から助けたんですが、この人一言も喋らないんですよ」
【鑑定】で見ている俺には名前やクラスなどのステータスはわかるが、それ以外はわからない。
彼女がなぜ盗賊達から逃げようとしなかったのも謎である。
「この嬢ちゃんおそらく奴隷だな」
あー、やっぱりそうなのか。彼女の装備品に奴隷の首輪というアイテムがあったからもしかしてとは思ったけどさ。
着てる服も薄汚れていてあまりいい扱いをされていなかったようだ。
盗賊との戦闘後に気づいたが荷馬車の下敷きになって死んでいた人が彼女の主人のようだ。
「なら彼女も連れて町に戻ってから蘇生アイテムか復活スキルを持っている人を連れてまたここに来ますか」
血が出てきた事にびびったけど、後々になってギルド登録の時にも血判を使ったのを思い出した。
ゲームでもZ指定など暴力、犯罪、出血が含まれるソフトがあるから、このゲームの世界もそれと同じ仕様なのだろう。
でもゲームならHP0から復活させるアイテムがあるはずなので、それを使えば生き返る。
その事も思い出したので俺は冷静になることができた。
「蘇生アイテム? 復活? あんたなんの事を言ってんだ?」
だがそんな俺の気持ちを嘲笑うかのようにオヤジの言葉が突き刺さった。
「な、なんの事ってHP0から回復させるアイテムですよ。あるでしょう、世界樹の葉やライフボトルとか、死んだ人を生き返らせるアイテムかスキルが……」
「そんなアイテム聞いたことねーが、そんなもんがあったら誰も魔物に襲われて死ぬこたーねぇし、大切な人がいなくなって悲しむ人もいねー世の中だろうよ」
オヤジが吐き捨てるように言う。
オヤジの反応からして本当に蘇生アイテムはないのか。
なら俺が殺した盗賊達は……。
「この人達は犯罪者です。ですからハルキさんが気にやむ必要はありません」
「あー、そうだな。犯罪者を殺しても罪にはならないからな。それとこいつ等の装備品はあんたの物になるからちゃんと回収しとけよ」
よほど俺が暗い顔をしていたのか、カノンだけでなく俺の発言で気分を害していたオヤジも慰めようとしているのかそんな事を言い出した。
相手が犯罪者であってもその人を殺せば殺した人も罪人になるはずなのに、生きるか死ぬかのこの世界ではその概念はないらしい。
しかも犯罪者の装備品は討伐、捕縛した者の所有物になるとか。
◇
オヤジに盗賊達の装備品を集めるように頼んで俺は血だらけの体を洗うことにする。
近くに川などがないので【ウォーターウォール】の水を使い体を洗う。
気温も低くないので水のままでいいだろう。
一時お湯を作ろうと【ウォーターウォール】と【ファイアーウォール】を同じ場所に使ったら熱湯になり火傷をしかけた事がある。
石鹸を使い体はキレイになったがそれでも何回も洗う。そうしないと人を斬った感触が蘇ってしまう気がしたから。
血まみれの服を捨ててアイテムボックスにある服に着替えてみんなの所へ戻る。
「サイズはどうだった?」
俺が着替えるついでに汚れている奴隷の彼女もキレイに洗おうと水桶とタオル、身長が似ている俺の服をカノンに渡しておいたのだ。
「……ズボンの裾が短い」
「エ、エルさん!?」
女性二人っきりの時に自己紹介はしたのかカノンは彼女の名前を知っていた。
つーかおい、助けた俺に言う一言目がそれかよ!
「嫌ならあのボロボロの服を着ろ」
「嫌とは言ってない。ただ聞かれたから答えただけ」
彼女もといエルは感情が籠ってない声で淡々と言う。
エルは俺と同じ年齢でクラスは村人。空色の髪を後ろで縛りポニーテールの髪型でスタイルも出る所は出ていいプロモーションをしている。
エルの事は保留にして俺達は盗賊達の装備品、荷馬車の荷物を回収した後、町へと帰る事にした。
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