惨劇
グランドスライムは【シャイニングジャベリン】と【ファイアーボール】3発で沈んだ。
クラスアップでレベルが下がったせいで前のときより1発多く当てないといけなかったが、ボス戦が終わったら俺はLv3に上がっていた。
俺は成長促進の指輪を装備しているから経験値が多く入るがそれがないカノンはレベルが上がってなかった。
「本当に1人で倒しちゃった……」
俺がドロップした石鹸を拾ってる間もカノンは入口で棒立ちになっていた。だからそう言ってるのに。
「終わったから早く2階層に行こう。グリーンウッドとかスライム以外はカノンにも戦ってもらうから、そのつもりでいろよ」
「は、はい私もがんばります」
俺の言葉で気合いを入れ直したのかカノンは走って来た。
2階層に降りて最初にエンカウントしたのはブルーウッドだった。
「俺は奴の正面に行くからカノンは横から攻撃してくれ」
「はい!」
走りながら並走してるカノンに指示を出す。
カノンは魔物には好戦的で魔物を見つけたら自分で倒そうと走りだす傾向があり、事前に指示をしなければならない。
最初のグリーンスライムの時も俺が魔法を使おうとしたが、指示を出していなかったのでカノンが走りだし盾を振り回すからしょうがなく剣で戦うハメになった。
最初の時はついとか言っていたけど設定上魔物を憎んでいるからそんなプレイスタイルになっているのかもしれない。
でも指示をすればその通りに動いてくれるからいいけどさ。
俺に攻撃が集中するようにブルーウッドの正面に移動して敵の攻撃を避け、ときには弾き2人掛かりで余裕で倒す。
「次はカノンが正面で戦ってみるか? もちろん俺みたいに無理して攻撃までしないでいいからさ」
「私がですか?」
「今は1体の所を狙って戦ってるけど、後々複数の所にも行くつもりだ。だから1人でも戦えるようになるのと、盾に馴れる目的もあるしな」
盾での攻撃で空振りは少なくなってきたが、この娘は防御がからきしなのだ。これを機に盾で防ぐ事を覚えて欲しい。
「わかりました。やってみます」
了承を得たので次の魔物の所に行くとする。無理はするなと言ってあるから大丈夫だろう。
「全然大丈夫じゃなかった‼」
カノンはグリーンウッドを相手に殴り合いをしている。両者防御することなくただただ攻撃をする。
魔物はわかるが女の子がここまでするか!?
俺は戦慄しつつ、この惨劇を早く終わらすために【スラッシュ】で連続で斬りつける。
「はあ、はあ、なんとか倒せました」
「倒せましたじゃねーよ! バカなのオマエは本当にバカな子なの! なんで防がないんだよ、その盾はなんのためにあるんだよ!」
もう見てるコッチが痛いよ! だが当の本人は平然としていた。魔物の攻撃での痛みはすぐに消えるからな。
「で、でも攻撃をしないと魔物は倒せません」
なに言ってんのこの娘。ヤバイ頭痛くなってきた。
「……あのな、最初に言ったように無理して攻撃する必要なんてない。なんのためにパーティーを組んでるんだ」
「それは戦力を上げて魔物を倒しやすくするためですよね」
それがなにか? と言わんばかりに首を傾けるカノン。
ダメだ。この娘には魔物と戦い倒す事しか頭にないのか?
「その考えもあるけど、いろんなクラスとパーティーを組むと役割分担がしやすくなるからだ。ヒーラーのクラスだって攻撃手段は少ないだろうが、HPを回復してくれるスキルを持っているだろ。なら攻撃じゃなくて回復などに専念してもらいたい」
そうやって攻撃役、壁役、回復役など適材適所に分かれるのが一般的のはずだ。
オンラインゲームではソロでしかやってなかったのでそこら辺の知識は乏しい。
「だから今のは魔物の注意がカノンに向いている隙に俺が攻撃すればよかっただけでカノンが無理して攻撃をする必要は全然ないんだよ」
「そうなのですか……。確かにそれなら私もHPが半分に減らないで倒せましたね」
オイオイ、さっきの一戦だけでHP半分のダメージを受けたのかよ!
まあ、あれだけ攻撃をくらっていればそうなるか……。
「わかったら次からは気をつけろよ。【ヒール】」
頷くカノンにHPを全回復するまで【ヒール】を掛け続ける。
頷いてくれるがこの娘がどこまで理解してくれているか疑問だ。一応まだ魔物が1体の所だけにしとくか。




