宿なし
「本当に半額ももらっていいのですか? 自分で言うのもなんですが私魔物をあまり倒せてませんよ」
「パーティーを組んで一緒に戦ったんだからこれが正当な報酬だろ」
俺とカノンはその日倒してドロップしたアイテムをギルドで買い取ってもらい、その金額を山分けにしていた。
誘拐犯やらカノンのことやらで結局午後から魔物と戦いだしたので買い取り金額は昨日より低い。それを2人で分けたら余計に少ない。
明日はもうちょっとがんばろう。なんならダンジョンの3階層にでも行ってみるか。
「ドロップアイテムだけでこんな金額になるなんて初めて見ました。魔物の場所がわかるから多く戦えるのはわかるのですが、ハルキさんが倒したときのドロップ率がすごく高いんですよね。それもなにかのスキルですか?」
カノンが少し興奮気味に言ってくる。
そうなのか。俺はドロップアイテムでしか稼いでなかったからこれでもすごいらしい。
「ああ、俺は特殊なのかいろんなスキルが使えるみたいなんだ。わかってると思うけどこのことは口外するなよ」
「は、はい。わかりました」
カノンは普通なら怪しんでもいいのだが素直に頷いてくれる。
「そういえばカノンはどの宿に泊まってるんだ? 明日からも一緒に行動するなら知っといたほうがいい」
「え? あ、宿ですか。………その」
だいぶ言いづらそうにしている。俺別に変な事聞いてないよな?
「……私はこの町に着いてすぐにクラスアップをしたんです。それで装備品を買うのに……その、つい所持金のほとんどを使ってしまい……」
「……まさか宿なし?」
カノンは顔を赤らめながら頷いた。
もしかしたらこの娘は後先考えないと言うか、ぶっちゃけバカな娘?
「はあ、俺が泊まってる宿はご飯3食付きで1日銅貨50枚だ。俺はあと3日泊まるからカノンもそこで泊まればいい。その方が待ち合わせとかする必要ないしな」
こっちだと先に進む俺に戸惑いながらもカノンはついて来た。
「ここが俺が泊まってるカルガモ亭だ。エリカさーん、客連れて来たぞー」
宿に着きフロントにいたエリカさんにカノンの事を伝える。
「それは大変だったわね。あんたも誘拐犯3人を1人でやっつけるなんて見掛けによらずすごいじゃない」
エリカさんは笑いながら俺の肩を叩いてくる。確かに強そうには見えないだろうが、見掛けによらずは余計だ。
「なら部屋はハルキの隣の部屋ね。パーティーなんだから部屋は近い方がいいわよね」
「は?」
いやいやパーティーとはいえ俺の隣は嫌だろう。現にカノンもこちらをチラチラ見てるし。
「ウチはちゃんとした造りになってるから音は聞こえないから問題ないわよ。ハルキには残念だったわね」
残念もなにもやましい事は考えてないから! 言い返しても面倒になりそうなのでなにも言わないでおく。




