初戦闘
俺は目を疑った。いくらゲームのやり過ぎとは言えさすがに動物にウインドが出てきたら世も末である。
念のため2度してみてもやはりある。
「いや、もしかしたら……」
ある可能性が(ただの願望だったかもしれないが)頭に浮かび自分のステータスと念じてみる。
「そんな……でもこれは……」
カザマ ハルキ 16歳 男
村人 Lv1
驚愕した。
視界の隅に自分の名前や年齢などが書かれたウインドとHPとMPと書かれた2本のゲージが出てきたのだ。
「ここはもしかしてゲームの世界なのか? でないとこのウインドやゲージ。それにさっきから息も乱れない事に説明がつかない」
そう俺の体力は人並みだ。なのに1時間ほど休みなしで歩き続け、その後の全力疾走で普通なら息が乱れるはずなのに全然乱れてないのだ。
ゲームの中だから疲れにくいという可能性はある。
ゲージはそれぞれHPは青、MPは緑に色分けされていて、どちらも減ってはいなかった。体力とHPは別物らしい。
「にしてもLv1はわかるけど村人かよ。どうせならもっといい職業がよかったな」
まあ職業は後々職業変更ができることを祈りつつ、他の項目があるか念じてみる。
装備品のウインドが出るが当然ながら装備品はなく、道具はウインドすら出てこない。まあそんなの持っていたらすぐわかるか。
そして、一番期待している魔法やスキル、特殊能力と念じてみるとスキルの項目が出てきた。
スキル
【スキルコピー】【鑑定】
やった、2つ持ってる。
名前からして大体の能力はわかるが念の為説明とかないか念じる。
【スキルコピー】
【パーティー内の対象のスキルを習得できる。ただし同じスキルは習得できない】
【鑑定】
【対象のステータスまたは武器、防具、道具の用途等を見る事ができる】
なるほど、ならこうやって見る事ができるのはこの鑑定のスキルのおかげなのか。
MPは減ってないから自由に使えるな結構便利なスキルを持っているかもしれない。
「うわっ!」
思考を巡らせているとまた木が揺れ危うく落ちそうになった。
下を見るとビッグボアがまた木に突撃したらしく周辺を歩いている。どうやら俺を逃がす気はないらしい。
「ちっ、Lv2とはいえ見た目、滅茶苦茶強そうだ」
体高が自分の身長と同じぐらいのデカイイノシシを丸腰で戦って勝てると思うか? 勝てる訳がない‼
「いや、だけどここがゲームの世界なら序盤で強い敵が出る可能性は低いはずだ」
こちらはLv1だがむこうもLv2だ、勝てない訳ではないはずだ。武器が無いため必然的に素手で殴るたり蹴ることしかできないがそれでも戦える。
「よし。そうと決まればやってみるか」
意を決して木から降りると、すぐさまビッグボアが突進してきた。
「やっぱり恐いっっっ!」
びびってまだ大分離れているのに横に逃げるがビッグボアも角度調整してこちらに向かってくる。
今度はさっきと逆方向に逃げると運よく俺を追いかけたビッグボアが木に激突し動きが止まった。
今がチャンスと思いビッグボアの横っ腹を思いっきり殴り付けるがびくともしないので連続で殴り続ける。
ビッグボアもずっとそのままなはずもなく足を振って攻撃してきた。
「ぐっ、いっつ~~」
攻撃を避けれづにモロに受けてしまった。痛みはすぐに消えHPを確認すると8分の1ほど減っていた。
あと7回あの攻撃をくらったらゲームオーバー、突進はもっとダメージは大きいだろう。
だが、戦い方はわかった。木を背にして相手の突進を避けて、木に激突して動きが止まった時を狙って攻撃。問題はこれを何回やるかだ。ステータスを見たとき攻撃力などはなかった。もし、俺の攻撃力がビッグボアの防御力より少なかったらダメージは1最悪0だ。もしかして木の衝突でダメージがはいっていれば御の字だろう。
そんな事を3回ほどしていく内に目が馴れだして作業と化した。その後8回程した頃にビッグボアが倒れ煙となって消えた。
「…………これは腕輪か?」
煙が晴れるとそこには1つの腕輪が落ちていた。
【牙の腕輪】
【獣の牙で作られた腕輪。STRを上げる】
鑑定で調べるとどうやらゲームによくある装備アイテムらしい。
STRは攻撃力に関係するステータスだ。これを着けると攻撃力が上がるみたいだな。
あれかな? モンスターと戦って倒したからドロップしたのかな?
「ステータスにはパラメーターは書かれてなかったけど、一応あるらしいな。とりあえず着けとくか。今は少し休憩~」
腕輪を右腕に着けてその場に座り込む。
別に疲れてはいないが戦闘でHPが3分の1ほど削られたので時間経過で回復するか試すためだ。
装備品を見ると装飾品の欄に牙の腕輪があった。これでSTRは上がったらしい。
しばらくするとHPが少し回復したので全回復するまで待つ。その際ビッグボアや他の動物とは遭遇しなかったから助かった。HPが全回復したので周りを気にしながら歩く。
「……ん? 人の声か?」
微かに人の声が聞こえてきた。ここが何処なのかわかるかもしれない(日本……いや地球でないことはわかるが)と思い声のした方へ走り出す。
すると開けた場所に出てそこでは馬車を守るように2人の男が複数の狼と戦っていた。
パラメーターの攻撃力をSTRに変えました