変貌キャラ
俺はカノンをパーティーに加えて森に入り、魔物がいる所に行く。もちろんカノンもスキルはコピー済みだ。
最初はダンジョンに行こうと思ったけど、あそこの一階層は物理耐性を持っているグリーンスライムしかいない。今回の戦闘はカノンがどのくらい戦えるか見るのが目的だから戦闘時間は短い方がいいと思い森にした。
「あっちに魔物が2体いるから1体はまかせていいか?」
「魔物? ……魔物が近くにいるんですか?」
ん? さっきまで優しい雰囲気だったカノンが魔物と聞いていきなり冷たい感じになり、心なしか目付きも険しくなっている。
「あ、ああ。俺のスキルで魔物や人の位置を把握できるから間違いない」
「そうですか。それでどっちに行けば魔物がいるんです?」
「え、あっちにだけど………っておい!」
魔物のいる方向を教えるとカノンはいきなりその方向に走りだした。なんなんだよいったい。
後を追いかけるとカノンとピンク色の少し大きな豚2匹が戦っていた。
リブピッグLv3
リブピッグLv3
「このっこの! 死ね魔物めっ‼」
カノンは盾を振り回して攻撃しているが相手は2体いる。
カノンが1体を攻撃をした隙にもう1体に攻撃されている。これじゃあ倒せたとしてもかなりのダメージをくらってしまうだろう。
1人で戦わせる気はないから加勢するけども。
カノンを攻撃しようとしている奴に後ろから【スラッシュ】で斬りつける。
それでターゲットを俺に変えたらしくコッチに突っ込んでくるが、ビックボアに比べるとあまり怖くないな。
突進を避けて横っ腹に連続で斬りつける。
それでリブピッグは倒れたので、もう1体の方を見るとまだカノンが戦っていた。
武器が盾だからダメージが低いのと空振りが多いため時間が掛かっているみたいだ。
カノンの戦い方もわかったし、さっさと終わらすために俺も攻撃に加わって難なく倒せた。
【豚バラ】
俺はドロップアイテムをアイテムボックスにしまいカノンに向き合う。
「なんなのオマエ、魔物の場所を教えるなり走りだすとか。パーティーを組むなら単独行動は厳禁だぞ」
俺が今までやったゲームのNPCでもここまでひどいのは初めてだぞ。毎回これだったらバグとしか言い様がない。
「す、すみません。魔物と聞いたら、つい……」
雰囲気が元に戻り頭を下げてくるカノン。
戦うときに豹変するキャラなのか。死ねとか言いながら盾を振り回してたし。
「ついでやったんならもうするなよ。それとカノンのクラスのシールダーは攻撃役には向かないから今は攻撃はしないで自分の身を守っててくれ」
「っ………それは私が邪魔だから退いてろと言うことですか?」
何を言いだすんだこの娘は。
HPやVITが高いといっても所詮はまだLv1だ。俺はヒールのスキルが使えるがそれでもMP量は多くない。
ならレベルを上げてスキルを覚えてもらうまでは守りに徹してもらうつもりで言ったのになんでそんな思考になったんだ?
「……私は……私のお母さんを殺した魔物が憎い。だから魔物を殺すために冒険者になったのに……。ハルキさんが私を邪魔と言うならパーティーを解散しましょう」
カノンは俯き怒りなのか拳を握りしめ震えていた。
つーかなにこの設定、重いよ‼ 見かけによらずえげつない動機で冒険者になったんだな。
「ちょっ、おいおい待ってよ。俺がいつ邪魔なんて言ったよ。確かに勢いだけで周りを見てないわ。攻撃がほとんど当たってなかったわ。他にもいろいろ言いたいことはあるけど、俺はカノンのこと邪魔とは思ってないし、むしろ必要としてるくらいだ」
「そんなに欠点があるなら私邪魔ですよね! 絶体に私必要とされてないですよね!」
なぜか涙目なカノン。だからそんなこと思ってないのに。
カノンにはシールダーのスキルを覚えてもらって、そのスキルをコピーするつもりだ。シールダーになりたがる人が少ないためカノンを説得してシールダーのままでいてもらう予定だからパーティーを抜けられたくない。
「まあ、その辺りは場数を踏めば上手くなるか。それとそんなに魔物と戦いたいならこれを装備しとけ」
「わっと」
俺が装備していた牙の腕輪と緩和の指輪をカノンに投げて渡す。
「腕輪と指輪? どんなアイテムなんですか?」
そうか。鑑定のスキルがないとなんの効果があるかわからないか。
「腕輪はSTRを上げる。指輪は受けるダメージを減らしてくれるアイテムだ」
「そんなにいい効果からすごく高価なアイテムなのでは……」
そうなのか。まあ別にいいだろう。
それに緩和の指輪は運がよければ近くのダンジョンの1階層ボスでまたドロップするだろうし。
その後も森にいる魔物と戦い続けて2人共Lv2に上がった。