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アイテムボックスと言葉遣い

「それ絶対誘拐だって!」


 宿に帰りエリカにダンジョンの入り口で会った3人組の事を離すと断言された。PKじゃないのか。


「誘拐して身代金でも要求するのか? その人物の家が裕福とは限らないぞ」

「身代金を要求するのは王族か貴族の家族やら関係者だけよ。大概は奴隷として売られるわ」


 この世界には奴隷もいるのか。なら俺も捕まっていたら奴隷にされていたのか。


「うちの客が宿泊中に帰って来なくなっなら嫌だから気を付けなさいよ。ただでさえあんたは世間知らずっぽいし」


 そう見えるのか。まあ、この世界の世間一般常識なんて知ってる訳がないので、適当に答えて鍵を受け取り自室に向かう。


「それじゃこれを試してみるか」


 自室で俺は早速3人組からコピーした個別スキルを試す。

 頭の中で【アイテムボックス】と念じるとアイテムボックスの項目が出てきた。

 始めに確認したときはなかった項目だ。

 アイテムボックスの項目には何も入れてないので当然空欄だらけだ。


「【アイテムボックス】」


 スキル名を唱えると目の前に掌ぐらいの黒い空間が現れた。ここに道具を入れればいいのか。

 ためしにリュックサックの中にある肥料を1つを黒い空間に入れてみると黒い空間は勝手に消えた。

 もう1度アイテムボックスの項目を出したらちゃんと肥料があり、横には個数も書かれていた。

 俺はリュックサックに入れていた肥料を全部アイテムボックスに入れ、ついでにリュックサックと腰に下げていたブロンズソードも入れてみる。


「なるほど。ドロップ品以外にも武器とかいろいろ入るみたいだな。さすがに生きてる生物は入らないと思うけど」


 その後いろいろ試してみてわかった事はアイテムボックスには大きい物でも入るようで、ベッドが入ったときはびっくりした。

 アイテムボックスから出すときは出す物を念じたら出てくる。

 その際、黒い空間に手を突っ込み出す事もできるし、場所を指定して複数の物を一気に出す事もできるみたいだ。

 あの3人組は安っぽい装備品は油断させるためで、普段使っている装備品はデブのアイテムボックスに入れていたという事だ。


「【アイテムボックス】はこのくらいかな。あとは【マッピング】だけど明日でいいか」


 この【マッピング】のスキルでダンジョンで今いる階層の全体図がわかるようになる。

 さらに俺には【サーチ】がある。【サーチ】は使用者の把握できる範囲内の魔物、人物の位置がわかるスキルだ。

 この2つのスキルを使えば階層の全体図と、その階層にいる魔物と人の位置が全てわかるはずだ。

 ちなみにこのスキルは先頭に進もうとしていたノッポからコピーした。

 たぶん行き止まりの通路に誘導してそこで襲うつもりだったのかもしれない。

 その他にコピーしたスキルは5つだ。


【魔力量(中)】

【自身の最大MPを常に上げる】


【スラッシュ】

【STRを上げた状態で敵1体に攻撃する】


【ウォーターボール】

【水属性:敵1体に水の球体で攻撃する】


【ウォーターウォール】

【水属性:水の壁を出す】


【ヒール】

【味方1体のHPを回復する】


【スラッシュ】は【ラッシュ】と同じようなものだろうし、【ウォーターボール】と【ウォーターウォール】も属性が違うだけで、もう持っているスキルとあまり変わらないだろう。

 回復系のスキルは持ってなかったのでソロでやるなら後々使えるスキルだ。

 それにくわえて、【魔力量(中)】でMPも上がってるから村人Lv3でも十分にスキルが使えるかな。


「明日は肥料をギルドに売りに行ってから道具屋に行ってみよう。HPやMPを回復させる薬が売ってあるはずだし。そのあとはダンジョンでレベル上げだな」


 明日の予定を決めた頃には日が暮れていたので晩飯を食べようと食堂に向かう。


「誘拐犯に会ったって本当なの?! 大丈夫だった?」


 食堂に入るとエリカから聞いたのかリサが心配そうに声をかけてきたので、なんともないと伝え料理を注文する。

 晩飯も文字が読めないからオススメを頼んだらトンカツみたいな揚げ物に甘辛いタレをかけたどんぶり物が出てきた。

 ごはんと揚げ物の間に野菜の千切りが敷かれており、野菜のシャキシャキした食感がいいアクセントとなってとてもおいしかった。


「明日の朝からダンジョンに入るから昼飯は弁当にできるか?」


 食器を返すときにリサに明日の昼飯の事を聞いてみる。

 明日は1日中ダンジョンに籠り、レベルアップをするつもりなので、昼飯は弁当にしてもらいたいのだ。


「ええ、できるわよ。そういえばハルキ君は嫌いな料理とかない? あったら教えてもらいたいんだけど」

「え~と、嫌いな料理は特にないな。それがどうかしたのか」

「ううん。ハルキ君オススメを頼んでくるけど、もしかしたら嫌いな料理を出したらどうしようって思ってたから。ないならないでいいのよ」


 そうか。確かにオススメを頼み続けたら嫌いな料理が出てくるかもしれないな。

 だけど特に嫌いな料理はないので気にしないが……、いや、さすがにゲテモノ料理がでてきたら嫌だな。

 食堂を出てフロントにいるエリカに体を洗いたいと伝えたら、お湯とタオルを持って来てくれるらしい。やはり風呂はないのか。

 それにこの世界にはテレビなどの娯楽がないため、食事と体を拭いたらやることがなくなる。

 しょうがないので明日に備えての意味も兼ねて早く寝ることにしてベッドに入る。



 朝、目が覚めたらまだ日が昇っていないようで薄暗い。だいぶ早く起きてしまったようだ。

 やることもないのでダメ元で1階に降りてみると食堂に明かりがついていた。こんな時間からやっているのか?


「あら、おはよう。ごめんなさいね、まだ開店はしてないの」


 中ではリサが厨房で仕込みの作業をしていた。


「おはよう。……そうか、ならギルドとか他の店も開いてないか」

「そうね。大体は日の出ぐらいに開店して日が沈んだら閉店ね。でも宿屋やギルドは職業的にもう少し遅くまでやるけどね」

 なるほど太陽が基準なのか。

 まあ、時計がないから時間なんてわからないか。


「……やっぱりハルキ君ってなんか他の人と違うわよね。普通の生活で知ってるはずの事を知らなかったり、かと言って非常識って訳でもないし」

「あー、実は俺って記憶喪失らしく、今までの記憶が全然ないんだよな。だから常識が出来てないのは認めるよ」


 正直に別の世界から来ました、と言おうかと思ったが信じてもらえるかもわからないので記憶喪失で押し通そう。


「そう。それは大変ね。でも……」


 リサは心配そうにしていたが、すぐ笑顔になった。


「自分の事がわからないのは怖くて不安かもしれないけど、目上の人にはちゃんと尊敬の念は忘れないようにね」

「……了解。リサさん」


 リサさんは暗に言葉遣いに気を付けろと言っているのだ。

 でも他意はないのだろうが、片手に包丁を持っているためその笑顔がとても怖く見えるのは俺だけじゃあないはずだ。


「よろしい。はいこれ。今日の朝ご飯にお昼のお弁当」


 リサさんはカウンターにロールパンにベーコンエッグとサラダを乗せたトレーと蓋を閉めたバスケットを出してきた。

 どうやら喋りながら作ってくれたらしい。


「これを食べてたらいい時間になるでしょ。今日もがんばってね」

「ありがとう。リサさん」


 礼を言いバスケットをアイテムボックスの中に入れ、朝飯を食べる。

 うん。即席で作った為か味は普通だ。


「ごちそうさま。ギルドに行くから鍵はここに置いとくから。じゃあ行ってきます」


 朝飯を食べた後、フロントにエリカさんがいるかわからないから鍵を置いておくことにする

 確かに最初にあの態度が受け入れられたからあの態度を続けていたけど、少し無理をしていたのも事実だ。

 元いた世界で年上にあんな態度でいる度胸なんて俺にはない。そういう意味では良かったのかもしれない。

 それにしてもリサさんが言葉遣いを注意するならここはゲームの世界ではなく、システム的なことだけゲームでちゃんと生きている人達がいる世界なのか? それともただのAIなのか?

 いや、どうでもいいか。今はこの世界を楽しんどけばいいや。 

 宿を出るとリサさんの言うとおり太陽が出で周りは明るかった。これならギルドも開いてそうだ。

 今の俺は所持品は全てアイテムボックス内に入れているので手ぶらだ。

 アイテムボックスから直接ブロンズソードと皮の鎧を装備する。

 うん、これは防具を着ける工程が省けるから楽だなと思いつつギルドに向かう。

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