君はなんのモンスター?
もう少し面白くなるかなと思い、改稿しました。
*03君はなんのモンスター?
突如として異世界に放り出された僕たちは混乱の真っ只中にある。
薄暗い洞窟に僕たちは着の身着のままやっていかなければならないらしい。
「生き残ること」
それが僕らに課せられた最初の使命だと宣言された。
それは当然のことで、僕は「生き残る」ためには何が必要なのか考え出している。
「水」
「食料」
「寝床」
ポケットのメモ帳にその3つを大きく書きなぐり、それぞれどう対処すべきだろうかと悩む。
遠くのほうで、女子のため息と同時に煩わしそうな声が響いた。
その声は僕にもっと大切なことに思い悩むべきだと気付かせる。
「なんでこんなことになったの。サイテイ。もうなんなの。」
現状に対する不満を述べた、いわゆる愚痴だった。
そうだ、僕たちは最低な状態だ。
なんの準備もなしに、なにもわからないまま、こんなところに放り出されて、ただ「生き残れ」と言われる。
サバンナで同じことを言われたら、僕は「日本に帰らせろ」って直談判する。
なぜ、そんなことも言わずにあの老ゴブリンの言われるままに「生き残る」ことだけを考えていたんだ?
いまの自分の状態が「おかしい」ということをはっきり理解した時、頭の奥がキューっとも売れるに引き絞られたような痛みが走った。
痛みが止んだと思って顔を挙げると、うちのクラスメイトたちはいくつかの少数団を形成させていた。
グループ
現世(と呼ぶのがどうか正しいかはわからないが)でも行われた行為だ。
人間は群れる生き物なのだ。
群れることで僕らは安心することができる。
僕は学校生活で群れることも安心することもできなかったわけだが、これは特別なケースだろう。
こんな異常事態だから、なおさら、グループで一緒にいて安心したいのだろう。
いつものグループとは普段とは違うグループが形成されていることに気づく。
たとえば、生徒会メンバーたちと髪の明るい女子たちの組み合わせであったり、あるいは、ちょっとヤンチャな青山のグループに僕の隣人である葦原の姿がなかったりするのである。
不思議に思っていると三原さんという女子に声をかけられる。
三原さんは軽い調子で、クラスの男子たちからそこそこ人気のある女子だ。
まともな会話をするのはこれががはじめてだ。
「君はなんのモンスター?」
そう無邪気にそう聞いてきた。
僕と彼女の会話を遠巻きに見ている集団がある。
情報収集だろうか、あの集団に派遣されたのだとしたら彼女も苦労人なのかもしれない。
会話もろくにしたことがない男子に話しかけさせられているのだ。
「たぶん、スライムだと思う」
「あ、そう」
興味を失ったようで、足場にその場を彼女が去っていった。
苦労人ではなさそうだ。
みんな強い人と一緒にいたいんだろう。
スライムと一緒にいたがる人間はまずいないだろう。
僕は、ここでも一人でいることを強いられてしまいそうだ。
三原さんはその後も有望そうな人間の選抜を余念なく行っていた。
どのグループにも属していないものは先の三原さんのようにどこかのグループがひきにいていくようだった。
無能な者な男子一人ぼっちである。
がここに一人、どうしたらいいんだ、と思っていたら芦原がこちらに駆けてきた。
「長谷部、おまえひとりか?」
言葉につまる。
「スライムじゃあ、仕方ないか」
その通りだと思うが、他人に言われると腹が立つ。
「すまん、俺ゴブリンだったから無能認定されちまっていつものグループ居心地悪いんだわ。」
「一緒にいようぜ。」
「無能でも一人でも二人のほうがいいだろ」
なぜか、俺も無能認定されてしまった。間違いではないだろうが。
「この一帯に張られていた結界を解除しましたので、間もなく魔物たちが現れると思います。お気を付けください。ご武運を。」
あのゴブリンの声が脳内で木霊する。
洞窟の先からオオカミの遠吠えのようなものが響いた。