第三の使命 後藤田悦子の場合①
前回、前々回の改稿を行いました。
今回は改稿をせずにすむはず!
第三の使命 後藤田悦子の場合
わたしは後藤田悦子、幼虫を愛し、幼虫に愛される女。この世のすべてがか弱い幼虫で覆われていたら世界はもっと平和になると思う。
色々あって、私たちは今ジャングルの奥地に転移されてしまいました。
草木、花、苔、それらを支える土、すべてが豊かでここが生物たちが強く息づいている場所だとわかりませ、現代日本のコンクリートジャングルでは味わえない匂いと空気に私は胸を高鳴らせます。
感じる。虫たちの鼓動を。
あの葉の裏を這いずっているのはなんの虫でしょうか。
あの木の根に巣くう虫さんも気になります。
そして、土中から溢れんばかりに感じる幼虫の群れ群れ群れ。
ここは天国でしょうか。
わたしは無意識に『従属』というスキルなるものを発動させてしまっていたらしく、存在を確認した虫たちが静かに私の後をついてきます。
もちろん、転移前に掌握した蛍の群れもついてきます。この子たちの中には羽をもがれた子たちもいて、その子たちのスピードに合わせてしまうと中々進みません。そんな状況を察したのか、わたしについてきたクラスメイトが文句を言います。
「ちょっと、後藤田さん。やる気あるの?はやく神木倒さないと、私たちに恩恵ってやつがあたえられないんだけど。その光る虫がなついてるんだからもう場所わかってるんでしょ。はやくしないといけないってわかってるよね?」
苛立たし気に私に文句をいってきたこの子は斎藤さんといってドライアドという木のモンスターに憑依した方です。わたしへの文句は彼女だけのものではないらしく、近くにいた清水さんもそれに追い打ちをかけてきます。第三の使命というのがそれほど重要なのでしょうか、私には理解できません。教室内では私に見向きもしなかった方々だけに本意を探ることもできず、私は言いなりになってしまいます。だから、わたしは足の遅いこの子たちにまとまって隠れているよう指示を出し、羽の生えたうちでも素早い子を選抜して神木のもとにむかいます。
わたしに文句を言ってきた方々はこの地にきて、自分の能力が有効に発揮できると確信してから進んで戦うようになっていました。だから、強いメンバーがむかった先で守られることを選ぶのではなく、先だっていったメンバーがいなかったこの一番遠い神木にむかう集団にいます。これなら自分たちにも神木を倒すチャンスがめぐってくると思っているのでしょう。
「ちょっと、いきなり走り出さないでよっ。抜け駆けは禁止なんだから私たちについていけるぐらいにはスピードをゆるめなさいよ!」
急ぐのか、ゆっくりいくのかはっきりしてほしいところですが、身に着いた習性というは中々かえられないらしく私はこの女子たちのいうことをきいてしまいます。『従属』なんてスキルを得ているのにまるで私が従属しているようですね。
「これぐらいならいいかしら。」
「ええ、それぐらいで頼むわ。」
気を遣うのも疲れるのでできれば置いていってしまいたいのですが、そうしてしまったら怒られそうですし大人しく彼女たちの言うことを聞いておきましょう。あの二人なら、はばかることなく虫たちを愛するわたしの姿を遠巻きに眺めていてくれそうなのに、芦原君も長谷部君もどこかにいってしまってわたしは慣れない女性陣の相手に辟易してしまいます。
「早く着かないかしら」そう思っている間に、神木にたどり着きました。たくさん走らされてしまいましたが、まだ少し体力は残っています。後ろの方たちはわかりませんが、この討伐目標を発見したら奮起してくれることでしょう。なんせ、あんなに私が倒さなきゃとか急ぎないよとか言ってたぐらいなのだから。
◇
わたしたちは不思議な人間に出会います。ここまでの進軍中に発見した獣たちとは違います。彼らはわたしたちに理性をもって敵対します。緑の髪をなびかせ長耳を備えた彼らはエルフと呼ばれる方たちなのかもしれません。しかし、敵対者は獣と同然、打ち倒すべき相手なのです。わたしたちは対敵に身構え、戦闘態勢に入ります。
でも、なぜ彼らは私の索敵虫が感知できなかったのでしょうか。
「ここは聖地!汝らの汚れを持ち込んでいい場所ではない!即刻、引き返したたまえ!」
話ができる魔物とは珍しい。狼男たちはワォワォいうだけも人語は理解していなかったし、これは驚愕に値します。
「邪魔よ!死になさい!」
ドライアドの子が彼らを縛り上げようと植物のつるを動かして襲わせますが、きれいに躱されてしまいます。他の子たちもたくさんの攻撃を繰り返しますが見事にあたりません。
あげく、どこからかくる強風にあおられて、私たちは膝をついてしまいます。そこへ風に乗った矢が降り注ぎます。木の枝を大きく揺らして、降りかかる雨の矢を払いますが、数射うちもらしがあり、わたしたちの足元に何本かの矢が突き刺さります。
彼女たちが感じたのは恐怖。この矢が地面ではなく身体にあたっていればと思えば当然の結果でした。しかし、彼女たちは恐怖の中でも攻撃の手を緩めません。つるが無意味だと悟ったドライアドはエルフたちを大きく囲うように樹木を生成し、逃げ場を抑えます。また、足元には大量のつるを這わせ、エルフたちの足を静かに狙います。この異様な状況に困惑したエルフに追撃が加えられ、ついにはエルフがつるに縛り上げられ動きを封じられてしまいます。すべてのエルフたちが彼女たちによって拘束されてしまいます。彼女たちは人型の魔物を殺すことに抵抗はあるようで、縛り上げ動きを制限するに留まります。
わたしは疑問に思ったことがあったのです。
だから、エルフたちの見張り役を買って出て、彼女たちは神木へむかってもらいました。といっても、すぐそこなのですが。
「ねぇ、あなたたち、なぜ、急に攻撃をしなくなったの?」
そうです、彼らはドライアドの子が前面に出てからというもの一切、攻撃をしていなかったのです。まともに攻撃らしい攻撃があったのはあの雨の矢ぐらいでした。
「それは、あの方が私たちの信仰するところの神であるからです。精霊様に手はあげられません……。」
「あの方というのはどならかしら。」
「ドライアド様です。」
「あの子はドライアドであるかもしれないけれど、あなたたちの信仰するところの神とは違うと思うのですけど。なんせ、あなたたちを攻撃するぐらいなのだから。」
「あの方がドライアドというだけで私たちにとっては信仰の対象足りえるのです。それに私たちには思い及ばぬお考えがあるのでしょう。私たちの足らぬ頭では彼の方のなさることの意味をうかがいしることもできませんが、これが彼の方のご意思であるというのなら私どもはそれに従うだけです。」
そういうにしては、必死に抵抗していたようにも見えるけれど。
「聞きたいことを聞けたなら、そろそろその物騒なものをしまってはくれぬだろうか」
「ええ、そうね」
わたしは縛り上げたエルフたち全員につきつけた光虫の毒牙を引っ込めるよう指示を出す。
「ねぇ、これは答えたくないなら答えなくていいのだけれど、なぜあなたたちはその再生能力を持ちながら、この背中の傷を癒やそうとはしないの?」
「!?」
驚かれしまった。なぜなのだろうか。
わたしは近くにいたエルフの服をはいで背中の傷を確認する。この形状、この付け根、間違いない見覚えがある。
「あなたたち、もしかして翅が生えていたの!?」
「!?」
さらに驚かれしまう。どうしてかしら。
「わたしどもの翼は、人間どもの契約によって奪われしまいました。治癒ではこの傷は癒やせません。翼のない姿が私たちの本来の姿になってしまったのです。」
なんてことでしょうか。幼虫が年を重ね生まれ変わり成虫となることで得られる「翅」、それが人の手によって奪われてしまったらしい。憤りを隠せません。
しかし、それよりも一つ訂正しなければならないことがあります。それを彼らによくよく理解してもらうようにしなくては。
「翅と翼は違います。翅とは生まれ変わることが許された虫のみに与えられる空を駆ける足なのです。生れながら与えられている鳥のそれと同じにされては困ります。それともあなたたちの翼とは鳥のように生来から得られるものでしょうか?いいえ、違うでしょう。この背中の傷口を見ればわかります。これは翅なのです。あなたたちは生存競争に打ち勝ち、その身に栄養を蓄え進化することはたした貴重で希少で存在なのです。それは理解しているのでしょうか!?」
「は、はぁ。確かに私たちの翼は成人と同時に得られるものですが。翅と言われましても
「翼ではありません!翅です!!以降、間違いのないように!」
「はい。間違いません。」
「私たちの翅は成人後に得られるものであり、たしかに生まれ持って得られるものではありません。」
「ええ、そうでしょう。そうでしょう。そんな進化を遂げることができるあなたたちに朗報です。わたしは基本的に敵対する者はその一切を排除することを前提に行動しています。先にむかった彼女たちは人の形をしているあなたたちに容赦を与えたようですが、わたしにそれはありません。しかし、あなたたちが進化を遂げ、翅を得ることができる生命体であるというのなら話は別です。わたしはあなたたちをわたしの愛すべき存在である『虫』であると認めましょう。」
「??」
「だから、ありがたくわたしに『従属』されなさい。そして、できればあなたたちの幼体の姿をわたしに拝ませもらえるとうれしいわ。」
「!!」
スキル『従属』を発動させ、エルフたちを私の支配下に置く。言葉を介すことができる虫、なんて素敵な響きでしょう。すべてが成体で、あのムニムニした愛らしい庇護欲をそそられる姿をしていないことだけがうらめしいですが、飼っているうちに産卵ぐらいするでしょうしそのうち幼体の姿も見えるでしょう。いまは、それより、この『従属』に反抗しようとする憐れな虫さんたちを黙らせましょう。死なない程度の傷を負わせたら抵抗力も収まるでしょう。それに『従属』した存在にはわたしの粘液を垂らすことで回復ができるので、多少の傷は関係ありません。背中の傷も治す予定でしたし意識が途切れる程度のダメージは問題ないでしょう。
わたしは毒牙をおさめた光虫たちに再度攻撃の指示を出します。
うわぁーーーーー!
やめてくれぇ!!!!!
わたしはものの五分でエルフたちを『従属』させてしまいました。
「あら、心って簡単に折れるのね。生殺しにする手段をいくつか考えていたのに無駄になったわ。」
青ざめたエルフたちに、わたしは唾液を垂らしてまわり、治癒につとめる。これから、ここのたちをたくさんかわいがってあげたいと思います。
以上、後藤田さんの話でした。
いかがだったでしょうか。
キャラブレしてないかなとか不安になりつつ、脳内の後藤田さんに地の分を担当してもらいました。
なぜか脳内の後藤田さんが「ですます調」だったので、そのまま書いてしまったのですがどうでしょうか。地の分が「ですます調」って読みづらいような気がして長く続く文章(本編)とかにはもっていけなさそうですが、閑話ということでお許し願いたいです。
こんな拙作ですが、楽しんでいただけるとありがたいです。
ついでに僕になにか餌を!読者の反応をください!
どう思ってるの?おもしろい?とか割と不安に思っています。
もっとおもしくできるところとか、腑に落ちないところとか、ここは不味いだろうとかご指摘、ご指南、承っております。誰か私に読者がいるっていう実感を与えてください。
追記
リアルの知人に文章を読んでもらえるほど濃い交友関係がありません。




