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サバイバルゲーム

改稿しました。(8月2日)

大筋は変わりませんが描写を増やし、誤字の修正を行いました。

*02サバイバルゲーム


訂正しよう。


僕がスライムになったわけではない。


いや、そうとも言えるかもしれないが、完全なスライムではなさそうだ。


手を見ても足を見ても、人間の身体のままだ。


必要に応じてスライムにでもなるのだろうか、僕の身体は半スライムになってしまったというのが正しいところだろう。


僕に声をかけてきた芦原も、完全なゴブリンから人間の姿を取り戻しつつある。


犬歯がとがっていたり、爪がとがっていたりするが、まだ人間の範疇にとどまっているように思える。


それにしてもびっくりだ。


まさか、自分がモンスターになろうとは、それもスライムに。


もう少し、こうカッコイイ系になりたかったとも思わないでもないが、スライムは嫌いではない。


むしろ、あのプニプニというべきか、ブヨブヨというべきかはさだかではないが、とても愛らしい姿をしていると思うのだけれどどうだろう。


モンスターになったことに不思議と納得できているが、どうしてこんな超絶不可思議体験とストンとありのままに受け入れることができるのだろうか。


まだ、夢の中といわれたほうが納得がいきそうなものだけど、どうやらそうらしいと僕のシックスセンス的な何かがなんの証拠もないまま確信をもって訴えかけてくる。


いや、物的証拠はあるのだ、この身体だ。


ざわざわざわざわ


がやがやがや


きゃーきゃー


ギャァアアアアア


気づいていなかったが、僕と芦原の間で起こっていたようなやりとりはそこかしこで行われていたようだ、周囲が騒がしい。


クラス全員がもれなく、僕や芦原みたいにモンスターになっていたみたいだ。


隣人のあまりの変貌具合に叫び声を挙げあっている。


「ないおえうlvんうぇまvpmヴぁprk7」


教室で聞いたあの不快音が洞窟内に響き渡る。


ゾクっと背筋が凍る思いがした。


洞窟内を反響しあったためだろうか、身体の芯に突き刺さるような底冷えするような声だった。


そう、これは声だ。


担任の口から発せられたのは、声だ。


それにしても、頭が痛い、頭が割れてしまいそうだ。


芦原も同じようにこめかみをおさえて頭痛をこらえている。


「席に着け」


あの声が響く。


担任の口から聞こえた声とあの声だ。


音源に目をやると、ゴブリンがいた。


芦原ゴブリンにくらべると、シワシワで年老いたそれだとわかる。


担任の姿を借りて、声を発しているのはあのゴブリンだった。


老いているからといって弱弱しいわけではなく、油断できないと思わせる凶悪さと狡猾さがその顔からうかがい知れた。


コイツはヤバいやつだ、僕だけでなく芦原もそう思ったようで僕たちは鋭く老いたゴブリンの一挙手一投足を見逃すまいと睨みこんでいた。


その老ゴブリンがこちらを向く。


教室で見たあの目と見つめ合うと、背筋に感じていた悪寒が身体中をかけずりまわり、身震いが止まらなくなる。


見つめられるだけで命の危機を僕は感じていた。


フルフルと震える身体が身震いかと思っていたら、僕の体は小さく波打ってホントに震えていた。


この緊張状態に僕の身体はマヌケな反応をしてしていることに怒りを覚える。


真面目にやれ、僕の身体!


「席に着きなさい」


先生が言いそうな言葉で、老ゴブリンが僕たちに命令する。


その言葉には逆らえないと自然と思うが、席がないのだ、どうすればいいんだ。


あの老ゴブリンはバカなのか。


バカにするのはマズい、あれはきっと僕たちを羽虫をつぶすように殺してみせることができそうだ。


恐れているのは僕だけではない、むしろ、バカらしいことを考えている僕のほうが周囲に比べて幾分か余裕がありそうだ。


どうやって席にすわればいいんだとキョロキョロ不安そうにしている人たちが大半だ。


その中の数名が合点がいったとその場で体育座りをしだしたので、僕たちはそれにならってその場で座り込んでいった。


自然と整列して着座している僕らの姿は体育館での全校集会を思い起こさせる。


いつもと違うのは、ここが薄暗い洞窟ということと、目の前にいるのが人ではなく、それはそれは凶悪そうなゴブリンということだ。


この緊張した空気に僕たちの整然とした体育座りは間抜けな気がする。


全校集会の校長の挨拶とは違い、全員が目の前にいる老ゴブリンに視線を向けている。


この魔物が次に何をいうのかと、みんなの視線が語っている。


僕らが、混乱もせずに、静かに老ゴブリンの言葉を待つことができているのは老ゴブリンの発せられる言葉に不思議な強制力のようなものが働いているからだと思われる。


老ゴブリンには僕たちを従順させる不思議な力が宿っていた。


「はじめまして、ヴィシュワール王国筆頭魔術師ロクサーヌが助士、ゴブリンのルナンシェと申します。」


「皆様方におかれましては突然のことと驚かれていることでございましょうが、本日は主人の命によりこの世界に召喚させていただく運びと相なりました。」


「召喚にあたり、皆様方にとって一番相性の良い魔物を用意させていただき、それに憑依する形での召喚をさせていただきました。また、憑依いたしました魔物の能力は十全に発揮されることと思われますので今から行われます生存競争、ひいては我が主ロクサーヌ様へのご助力に十分にお役立てください。」


「皆様の目標は、我が祖国ヴィシュワールが大敵、魔国モンティエーヌの魔皇帝ヴェルフェザーを打ち倒すことにあります。しかし、皆様はまだ転生間もなく、戦力としては不十分に過ぎます。そこで、このダンジョンでの訓練により自身の能力を強化していただきたく思います。」


「まずは一日、このダンジョンにて無事に生き残ることが第一の使命となります。どこにおいても聞くことができるようになっています鐘の音を一時間に一度、鳴らしますので、それを24回聞いていただきたく思います。」


「それでは皆様方のご健闘をお祈りいたします。」


一方的な言葉を老ゴブリンは立て続けて、その後に恭しく頭を下げると、闇にまぎれて消えてしまった。


老ゴブリンがそれと同時に現れた大きなスイングベルが現れ大きな音を鳴らした。


鐘の音は洞窟内を大きく反響しあい、まるで頭をかちわることを目的としたようにのうないでハウリングしだした。


「痛ぇ。」


横の芦原がこめかみを抑える。


僕の頭はブルブル震えて、振動を外にやっていた。


もう、痛くない。


不思議な身体だ。


かくして僕たちはクラスごとモンスターへと転生し、24時間の異世界サバイバルゲームを強制されてしまった。


僕たちは無事、生き残ることができるのだろうか。

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