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閑話 ケルベロス青山

本編には関係ないですが、いままでにない熱量で書き上げてしまいました。

よろしければご一読ください。


*15閑話 ケルベロス青山


俺は青山茂樹。


突然、モンスターとして生まれ変わった俺たちはダンジョンでサバイバル生活をするハメになった。


凶暴なモンスターたちを相手に、人間離れした自分の能力を使って戦い続けることになる。


初戦は、オオカミ型のモンスター。


檻も柵もない状態で対面する野獣に震えた。


映像の世界でしかありえないことに直面し、恐怖より前に興奮がきた。


身体が震えるのは武者震いだ。


血がたぎるように熱い。


鋭い爪がこちらに伸びてきても、腕ごと嚙みちぎってしまいそうな強靭な牙が目の前に迫っても、俺の興奮状態は収まらない。


そして、それは俺の周囲も同様だ。俺の高揚が仲間に伝播するようだった。


右にツバサ、左にケンスケ、マッコーが俺の後ろを警戒している。


ミツキがあっちこっちに飛び回っているが、ここのヒデの姿はない。


俺が戦いたがっていることを引いていた。


アイツは自分がゴブリンだからって、一緒にはきてくれなかった。


アイツならそれぐらいどってことないだろうに、どうしてだ。


はじめての勝利を収めた時に俺が感じたのは戦いづらい煩わしいという思いだった。


後ろにモンスターが行かないように広く戦うことを強いられ、思う存分暴れることができなかった。


完全に不完全燃焼だ。


俺はもっとやれる。


この人数は邪魔だ。


そう思い、気づけば俺はクラスメイトたちから離れ俺の集団と数人の女子だけで行動するようになっていた。


ヒデが別れ際に何か言っていたが、上手く思い出せない。


そうそう、「見捨てる気か」だ。


バカを言うな、見捨てるんじゃない。お前だって戦えばいいじゃないか、動きやすいように少数になるだけだ、そんなふうに思った。


現に俺と同じくらいか俺以上の能力があるやつがいるじゃないか。


なぜ強いのに戦おうとしないのか、なぜ強いやつを女子だからとかいって戦わせようとしないのか俺にはわからなかった。


少人数になった、いくつも戦闘を重ねた。


鼻が随分効くようになり、モンスターを的確に察知することができるようになった。


ここにいるやつらはいわゆるザコだ。


それでも一匹一匹を倒すごとに自分の強さが増していくのがわかる。


この能力に慣れたのか、はたまたレベルアップでもしているのか。


考えるのは俺の仕事じゃない、分析や思考は賢いやつらに任せて俺は感じるまま思うままにやっていく。


そんな考え方だけは普段と変わらない。


何もないことに退屈していた日々はすでに遠くに捨て去って、俺たちはこの洞窟の魔物を狩りつくす勢いで戦い続けた。


一日が過ぎ、俺たちの第一の使命は達成され、すぐに第二の使命が言い渡される。


そして、みんなそれぞれにスキルを手に入れた。


俺は得たのは『三つ首の恩恵』だった。


効果は脳内に三つの思考ができて、交代で休息がとれるといったものだった。


俺が三人になったようで、正直不快だったが、残り二人を常に休ませることで不快感はなくなった。


馬鹿が三人に増えても、馬鹿が三倍になるだけで意味はないのでこの状態で十分だ。


もっと賢いやつがこのスキルと手に入れたらもっと有効活用できそうなのに、俺にできるのは夜営ぐらいか。


昨夜の交代しながらの睡眠は応えたし、十分ありがたいスキルだったかもしれない。


自分のことは馬鹿だという自覚がある。


ヒデに散々繰り返されて、ようやく実感できていたが、ここにもうヒデはいなかった。


つまり、俺の馬鹿を制してくれる存在がここにはいない。


だから、手当たり次第に魔物に突っ込むことを誰も止めてはくれなかった。


むしろ、ミツキなんか俺に賛同していた。


あいつも戦うことが楽しいようだ。


普段はすりよってくるだけの癖に最近はなんだか偉そうでちょっと腹立つ。


あいつは自分がワイバーンだとかいう竜に似たヤツに憑依したからってちょっと調子に乗りすぎだ。


確かに、空を飛ぶ相手とか、天井にいるやつなんかは俺は跳ね回って倒さないといけないから空を飛べるアイツが優位にたてる時もあるが、身の程わきまえろって気分になると気がある。


そして、もっと腹立つのが回復役として連れてきた女子たちだ。


全く戦うことをしないやつらに俺のムカムカはたまっていくばかりだ。


俺はイライラしながらも、それをモンスターにぶつけることで解消していた。


だから、宙に浮く巨大な不思議クラゲが出てきた時もデカイ的だとか良い発散になりそうだとかその程度しか感じなかった。


初撃はミツキにもっていかれた。


アイツは空を飛べるだけじゃなくて、速度もあがった。


スキルを手に入れてからなお速くなって、今朝から初撃はミツキばかりにとられる。


ミツキの攻撃にはじけ飛んだクラゲを見て、俺のイライラはさらに高まった。


この怒りの発散させる相手を見失った。


だから、俺ははじけ飛んだ欠片が集まってもう一度クラゲの姿になったことを嬉しく思った。


それから、俺は脚に思いっきり力を込めて地面を駆け出した。


見た目は悪いが四足走行だ。


ケルベロスになった俺にはこの走法が適しているらしい。


駆けた勢いそのままに鋭く尖った爪でクラゲを切り裂いた。


柔らかい。


通りで、ミツキ程度の攻撃であれだけ勢いよくはじけ飛ぶわけだ。


クラゲはミツキの時よりいっそう激しく空中に散らばった。


そして、さっきと同じように散らばった欠片がかたまってクラゲの姿になっていく。


何度でもつぶせるこの相手に俺は嬉々として爪を突き立て続けたが、クラゲは細かく増えるばかりで戦闘の終わりが見えない。


周りの奴らの疲れた様子が目に入る。


俺の疲労が伝染していくようだ。


疲れて集中が切れたのか、後ろのマッコーがクラゲの攻撃をくらった。


へばりつかれただけのようだ。


マッコーにダメージは無さそうだ。


わずらわしそうにマッコーがクラゲをとっつかみ引き剥がそうとする。


けれど、クラゲはマッコーに張り付いたまま中々はがれない。


腕に入る力が見るからに弱まり、マッコーは膝はつきそのまま倒れてしまった。


死んだように見えたマッコーは、痙攣したようにピクピク動いていた。


生きていたことに安心した。


俺は超高速で、マッコーに張り付くクラゲに鉤爪を浴びせる。


マッコーに張り付いたクラゲは弾け飛び、そのままマッコーに再び張り付きクラゲの形に戻ってしまう。


もう一度、鉤爪を浴びせる。


3匹に増えたクラゲを倒すには三倍の時間がかかる。


次はさらに四倍の数がマッコーに張り付いてしまう。


しかも標的は小さくなって、的を絞るためにさらに時間がかかる。


何度目かの鉤爪でようやくクラゲの撃退に成功する。


土台になってるのが痺れて動けないマッコーだったのでいくらかマシだったが、さっきからちょこまとうるさく飛び回るミツキについたクラゲをやるのはめんどそうだ。


ミツキが動かなくなってからにしよう。


俺は大量に浮遊するクラゲたちを手当たり次第にぶちのめしながら、もう一人を呼び起こして周囲の確認を頼む。


これはやばいと悟った。


痺れて動けなくなったのはマッコーだけではなく、回復役の女とそれを守るケンスケもだった。


ミツキもそのうち、痺れるのだとしたらまともに戦えるのは俺とツバサぐらいか。


そして、クラゲを握りつぶした右手の反応が鈍い。


肌に直接触れずに爪だけで殺す必要がありそうだ。


この量を、この疲労で、利き腕を失いながら倒しきれるだろうか。


無理ではない。


麻痺した奴にクラゲたちが群がるのをみて、犠牲は出るかもしないと思った。


ミツキがさらにクラゲに襲われるとバタンと倒れてしまう。


はじめに死ぬのはミツキかもしれないと思ったその時だった。


「くらえぇええええええ」


掛け声のほうからきた何かはミツキに襲いかかろうとしたクラゲを見事に貫いた。


クラゲを貫いて地面に突き刺さったそれは矢かと思われたが、矢というには大きく、どちらかというと槍だった。


味方だ。


それも頼もしいやつだ。


話しながら沢山の光虫を引き連れて近づいてくるのはヒデだ。


間違いない。


身に付けた武器をすべて投げ切ったのかヒデはナイフを取り出してクラゲたちに襲いかかる。


ヒデがクラゲたちをかき分けてこちらまでやってくる。


俺はクラゲたちに特攻していて、ある意味孤立していた。


救援にきたのだろうヒデに思わず声をかけてしまう。


「ヒデっ!」


ありがたい。


いつも通りに返事を返すヒデの姿に安心する。


「礼なら、うちの主戦力たちに頼むぜ。」


どういう意味かわからなかったが、ヒデの後ろにはスライム化した長谷部と密集した大量の光虫の姿があった。


長谷部が不用意にクラゲたちに突っ込み、麻痺している。


アイツはバカなのか。


と思ったら、やつの腕が触手のように伸びてクラゲたちを次々消化させていく。


その右手には光虫が群になってクラゲたちに襲いかかる。


無数の光の先からスカートをひるがえしながら舞うように戦う女子は、誰だ?


右手に構えた白い杖を一閃、横なぎに振るうと数体のクラゲたちが弾けとぶ。


飛び散った欠片めがけて光虫たちが群がる。


気のせいかもしれないが、群がる光虫からは恐怖に急きたてられた死にものぐるいな必死さを感じる。


一人の俺がクラゲたちを爪で裂きながら、もう一人の俺が彼女の舞踏を目に焼き付け、もう一人の俺が彼女の顔に見惚れている。


女神ディーバだ。


ディーバがいる。


光の妖精たちと踊るディーバが戦場に舞い降りてきた。


長谷部が触手をあちこちに伸ばしてクラゲたちを殺しきった後、黒髪を振りほどきながらディーバは長谷部に近づき切れ長の瞳で長谷部を見下ろしていた。


なぜか、長谷部はディーバにひざまずき頭を地面に擦り付けていた。


その頭をスラリと伸びる右足で躊躇なく踏み抜くと、グリグリと地面にこすりつける。


あれは活躍した長谷部にたいするご褒美なのだろうか。


クラゲを四散することしかできなかった俺には望めそうにない。


その後、負傷者の治療と小休止。


ヒデとこれから同行できるかと思っていたら、すげなく断られてしまった。


ディーバに同行が「嫌だ」と言われてから思考が停止してしまった。


並列して存在する3つの思考、すべてが、である。


去っていくヒデ、それと女神。


絶望にくれ、呆然と立ち尽くす俺。


遠くに見えたヒデがこちらに駆けてきた。


同行の許しが出たらしい。


俺の胸が喜びで溢れている。


高鳴る胸を押さえつけながら、光の群衆を目で追い続ける。


あの先にディーバがいるはずだ。


おかしい、こんなはずではなかった。

閑話だから気が向いた時に書こうと思ったら、止まらず書き上げてしまいました。


次は本編に戻ることと、ちゃんと話を進めることをここに誓います。

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