泉の精霊
あまり、進展しませんが。
もちっと頑張ってサクサク攻略させたいと思っております。
他のキャラ達も書きたいけど、そこまで頭が回らない。
*11泉の精霊
「なぁ、誰も突っ込まなかったが、拾った芋虫を胸ポケットに入れてる女子ってどうなんだ。」
光りのつぶ、もとい蛍たちがひしめく幻想的な泉の前で芦原がどうでもいいことを僕に投げかけるので軽く流しておく。
「そうだな、ちょっとあれだな。」
さも、当然のようにポケットから芋虫を取り出して見せた後藤田さんに僕は何の疑問も持たなかったが、芦原のいうように言われてみるとちょっとどうなんだろうかと思う。
蛍の姿になったそれを手のひらで優しく撫でている分には可愛らしく見えなくもないが、きっと彼女は蛍の姿より幼虫の姿のほうがよっぽど愛らしく撫でることができるのだろうなんてことを考えていた。
「おい、あれ!」
芦原が泉の方を指さして叫んだ。
「キレイね。」
「そんなのんきな雰囲気じゃねぇだろ。」
「明らかに様子が変じゃねぇか。」
芦原のいうように泉とそれを取り巻く蛍たちの様子がおかしい。
優雅に飛び回っていた蛍たちは泉の中心を起点に急速に回転しだし、その起点に流れていた水が集まりだし、球体になっていた。
ザバーンと、球体をはねのけるようにして人型の水の塊があらわれた。
そして、親しげにこちらに話しかけてきた。
「こんにちは旅人さん、道にまよったのかしら?」
「私は泉の精霊。お暇なら少しお話していません?」
邪気は感じられない言葉だ。
「ええ、ぜひ!」
芦原が進んで答えた。
お前が溺れかけた水の根源なんだから、そう易々と信用するのもどうかと思うのだけれど。
「お話の前に、先ほどの非礼をお詫びするわ。その子たちもあなたたちに害を与える気ではなかったの。ただ、死骸の洗浄をしたかっただけなのごめんなさいね。」
「あー、さきほどの不思議な川のことですか?いえ、全然問題ないですよ。」
「ならよかったわ。」
「それでは旅人さん、古い習わし通りに泉に何か落としていただけないかしら。」
「わたしたち鉄の斧なんて持ってないわよ。」
「いえ、構いませんよ。できれば金属類であるとありがたいのですが、なにかないでしょうか?」
「なぁ、後藤田。なんで斧なんだ。そんな物騒なもん泉の精霊さんに失礼じゃないか。」
「後藤田さんは昔話に沿って話をしているんじゃない?」
「え、そうなの。」
「ほれ、金の斧ですか?銀の斧ですか?のやつだよ。」
「あー、あれね。知ってる、知ってる。」
「ねぇ、あなたたち何かもってないかしら?」
「私は虫たちが嫌がるからあまり金属類って持ち歩かないのよ。」
行動基準が虫な後藤田さんは本当にブレないな。
「これでもいい。シャーペンなんだけど。一応金属っぽいし。」
「構いませんよ。こちらに放り投げてください。」
「りょーかい」
「ほれっ」
ジャポン
芦原の投げたシャーペンが泉の中央の深くに沈み込んでいき、泉の精霊さんはそれを追うようにもぐりこんでしまった。
ザババーン
右手に金のシャーペン、左手に銀のシャーペンを持った泉の精霊が現れた!
「あなたが落としたのはこの……なんていうのかしら?」
「シャーペンよ。」
「あら、ありがとう存じます。」
「あなたが落としたのはこの金のシャーペン?それとも、この銀のシャーペン?どちらでしょうか?」
微笑を携えて泉の精霊が僕たちに問うてきた。
「僕が落としたのは普通のシャーペンですが、僕が欲しいのはその金のシャーペンです。」
「あらあら正直ですこと。いいでしょう。あなたにこの金のシャーペンを授けましょう。」
「ねぇ、長谷部くん。私の知ってる寓話と少し違うのだけれど気にしたらいけないのかしら。」
「そうだね、後藤田さん。僕の知ってるお話とも違うけれど、気にしたら負けなんだと思うよ。」
うれしそうに金のシャーペンを受け取る芦原。
よかったね。
「でもいけないわ。緑の小人さんにはそれで十分かもしれないけれど、残りの二人にも何か差し上げないと。」
「ちょっと待ちなさい。」
「なんで、そこの男を緑の小人だといったの?」
「あら、わたしたちの間ではそう呼んでいるのだけれど、あなたたちは何と呼ぶんだったかしら。」
「そうね、ゴブリンだったかしら。森を守る緑の小人が魔物として呼ばれる蔑称を私はあまりつかいたくないのだけれど。」
「あなた、なぜ、その男がゴブリンだとわかったの?どう見ても人の姿をしてるじゃない?」
「あら、不思議なことをきくのね。」
「わたしたちは魂の形を見ているもの。外見でものを捉えられないわ。」
「いや、でも。僕たちは人間なんです。いまはちょっと違うけど、元は人間だったんです。」
「あら、ほんとね。あなたち不思議な形をしているわ。」
「器は別物なのに中身は人間だわ。」
「ウフフ。不思議ね。」
「そうね。あなた。」
そういって僕のほうに泉の精霊は向き直った。
半透明な姿から向けられる視線に、自分が値踏みされているような感覚を覚えた。
「あなたは水の眷属として生きている部分があるわ。私の加護を授けましょう。」
「この力、役立てなさい。」
「先天たる天の雷、万来の標とともに、永久の光に導かれ、空の大地に舞い降りん。」
「アプリソリューション」
パァアっと僕の身体は光に包まれて、体中が熱いのか冷たいのかよくわからないけど活性化していくのを感じていると意識が飛んでいってしまった。
カーンカーンカーン
あのスイングベルの音によって僕は目覚めさせられた。
どのくらい寝ていたのだろうか。
洞窟内では始終薄暗闇なので時間感覚がにぶくなる。
「あら、目覚めたの。ずいぶんお寝坊さんなのね。」
芦原のように夢心地に起きたまま寝言は言うまい。
これは現実なんだ。
「もう一日経ったわ。私たちは第一の使命とやらを達成したようよ。」
「よかった。」
「それがそうでもないのよ。」
「第二のミッションはこのダンジョンの攻略だってさ。」
「最深部の魔物を討伐することが今回の使命だそうよ。」
「最深部への道のりは光の妖精さんが教えてくれるそうよ。」
「それって」
「この子たちのことみたいね。」
「僕たちって、その蛍に連れられてここにきたよね……」
「安心して、そういうことではなさそうよ。」
「彼女は案内役の司令塔のような役割をしているだけらしいわ。」
「ああ、それとこの洞窟の洗浄担当をしているらしいわ。」
「あなたも彼女の力の一部を使えるようになったらしいから、私たちが汚れた時はキレイに洗ってちょうだいね。」
なんで、後藤田さんは泉の精霊についてそんなに詳しく知ることができたのだろうか。
僕が眠っている間に何が起きたのだろう。
おびえる泉の精霊を芦原が慰めている、いったいいつからああしているのだろう。
いろいろ疑問に思うことはあるけれど、気にしないフリをしておこう。
触らぬ後藤田に祟りはないだろう、たぶん。
残弾(書き溜め)はありませんので明日の投稿も危ういですが、頑張ります。
見てくれている人がいることを願いつつ……




