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ゲシュタルトプレグナンツの崩壊  作者: いぬっころ
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高橋和八1

注意

純粋なミステリーではありません。キチンとしたミステリーをお望みの方にはお勧めできないかと思います。

ミステリーファンタジー、とか、サイコミステリーとかそんな感じになるのかなと思います。

一体、どうしたと言うのだろうか。

 私が知っている中畑孝貴と言う男は、いつだって頭髪はぼさぼさ、無精ひげは伸び放題、鼻の頭などは脂ぎっていて、よれよれの黄ばんだ白衣を身につけた中肉中背の男だった。

 実年齢は二十代後半らしいが、見方によっては四十代か五十代にも見える様な、小汚くて、陰気な雰囲気の男であったはずなのだ。




 文教台大学という大学がある。文教台大学はいわゆる理系私立大学で、道内でも有数の敷地面積を誇る大学だそうだが、それが一体何の役立つのかは、私には見当もつかなかった。

 私はここで中山好章という専門家と会う約束をしている。

 新人のころに先輩に連れられて何度か顔を合わせた事がある。もう十年も前の話だから、きっと中山氏は私の事など覚えていないだろうが、私は彼の事とても良く覚えている。

 一般に五十五歳ともなれば、賢者然とした落ち着きと、ほっと和んでしまうような穏やかさがにじみ出る年齢だと思うのだが、中山氏は五十五歳と言う年齢を全く感じさせない溌剌とした男性だった。

 私の想像の中で六十五歳になった彼は、今も小さな丸眼鏡をきらりと光らせて、研究に、フィールドワークに精を出している。そんな勝手な根拠のない想像が、あながち的外れでないであろうと確信できるほど十年前の彼は若々しい活力にあふれていた。

 仕事の事はさしおいて、個人的に中山氏と十年ぶりに顔を合わせるが楽しみでもある。


 記憶を頼りに中山氏の研究室を目指す事にしよう。待ち合わせ時間にはまだ早いぐらい。

 もし迷ったら誰かに聞けばいいだけの事だと考えて、北海道では珍しい真夏日の炎天下を進んでゆく。十年前には無かった建物がいくつかあるが、目当ての建物はすぐに見つかった。

 今は使用していない鐘つき堂が天辺についた古いコンクリート製の建物だ、外壁は綺麗な煉瓦色に塗装されているが、あの建物が冬に背中の皮が震えるような隙間風が入る手抜き工事の産物である事を中山氏から聞いていた。

 思い出し笑いを数人の学生らしい男女に見られていたらしく、変な人を見るような視線を向けられてしまった。私は澄まし顔で建物の中に入ることにした。


 二階の一番奥にある心理学ゼミ、と書かれたドアをノックすると、中から女性の声がして、中に招き入れられた。

 ソファとテーブル、それとちょっとした家具だけの簡単な応接室がある。

 十年前とほとんど変わらない室内の様子に、なぜか安心感が湧き上がってきた。

 そしてそこでは、小さな丸眼鏡をかけた男性がソファに座って一心不乱にカップラーメンを食べていた。



ここまで読んでいただきありがとうございます。

連載物として、完結まで持っていけるように、心を強く持ちたいと思います。

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