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国語力でテッペンとれ!  作者: 霧ヶ原 悠
エピローグ
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エピローグ


 翌日の放課後。

 「マツリちゃん! ユリノちゃん! 昨日行けなかった石焼き芋屋さん行こーよー!」

 「はいはい。ちゃんと行くから走らなーい。急がなくても、焼き芋は逃げないでしょ」

 「いいや! トラックだから移動しちゃうかも!」

 「それ、昨日の場所に今日行ってもいないかもしれないんじゃない?」

 「きっといるさ! ボクのカンがそう告げている!」

 「うわー。この世で一番当てにならないのきたー。ノストラダムスのほうがまだ信じられっだろ」

 「なにをー!」

 ハレの頬が若干腫れているかなというぐらいしか、昨日の騒動を思い出させるものは、彼女たちの手元には残っていない。

 ところでタツキも指摘していたが、ハレもまだ国語力を行使する資格を持っていないので、実は花火や花冠で国語力を行使したことが知られたら校則で罰せられる。だが状況も状況だったし、目撃者といえばハレたち三人とオサムとヤンキーたちなので、マツリとユリノは話し合ってうやむやにしてごまかしておくことになった。ハレは気がついてるのかないのか分からないし、、オサムやヤンキーたちがわざわざ公的機関に告げ口しにいくとも思えないから、大丈夫だろうということだ。ツカサもそのあたりは察して黙秘しているが、たくさんの課題(オール数理)を個人的に用意しているらしい。ハレは未だ知らぬことである。

 ハレがルンルンとスキップしながら正門に姿を現すと、

 『お疲れさまです姐さん!』

 野太い野郎の大合唱に出迎えられた。

 「…………へ?」

 何事かとハレは目を何度も瞬かせた。だが、何回瞬きしても、目をこすっても、頬をつねってみても、正門まえから伸びる桜並木の街道の左右にずらっと並んだ男子高校生の集団の姿は消えなかった。

 「えーーっと、これは?」

 ハレが首を傾げてみせると、それぞれの列の先頭が顔を上げた。なんとなく察しはついていたが認めたくなかった現実が、そこにあった。

 「お疲れさまです、姐さん! 俺たち、昨日の姐さんの国語力に、マジで痺れました!」

 「姐さんが着てた制服のおかげで、どこの生徒かはすぐに分かったもんですから、こうしてお待ちしてました!」

 タツキとコジロウだった。ということは、この行列はこのあたりのヤンキー一同……。

 「昨日姐さんのことを攫ったあげく、暴力までふるった我々を許してくれる懐の深さ! 感激しました!」

 「あ、もし姐さんって呼び方がイヤとかあったら、どうぞ言って下さいね。一応年上である俺たちにそう言われるのは、複雑かとも思いますんで!」

 黙ったままのハレを見て何を勘違いしたのか、タツキが笑顔でそう言ってきた。しかし残念ながらそれは違う。高校生らしくない格好や昨日の乱暴な振る舞いからは決して想像されないだろうそのアツい姿に、さすがのハレも困惑を隠せないでいたのだ。

 「は? なに? 昨日の連中じゃん」

 追いついてきたマツリが不審そうに彼らを睨みつけた。

 もちろん、その理由に心当たりがありすぎるタツキとコジロウは、示し合わせたわけでもないのに、同時にその場に土下座した。

 「昨日の失礼な振る舞い、本当にすいませんでした!」

 『すいませんでした!』

 さらにそれに続いて、舎弟たちも頭を下げた。

 あまりのことにギョッとして、ハレもマツリも制止の言葉がとっさに出なかった。

 「実は自分と、この金剛タツキはずっと、どちらのグループがここいらのボスに相応しいかを争ってました。ですが昨日の姐さんを見て思い知ったんです。この人こそ、我々のテッペンに立つにふさわしい人だと!」

 「………………は」

 「ぶっふ!?」

 片や完全に思考停止、片や何かを思い出して吹き出る笑い。

 しかし、その相反する様子もなんのその、タツキがずずいっと身を乗り出した。

 「俺と島津のジジイは、それぞれ腕っぷしにも国語力にもそれなりの自信があったんです。でも姐さんの国語力は、その比じゃなかった。俺、マジで姐さんのことすげえと思ったんす! なんかもう、こう、すげえええ! って本能的に思って、かなわねえ! って。なんで、ぜひ俺たちのテッペンに立って下さい、姐さん!」

 『お願いします、姐さん!』

 キラキラと光る無邪気な瞳、瞳、瞳。

 それらを前にして、何からどうつっこめばいいかわからず体だけが震える。だがそれでも、ハレは何に変えてもまずはこの一言を言わねばならなかった。


 「ボクのとりたいテッペンは、そんなんじゃなーーーーーーーーーーーーーーーい!!」


 「アーーーハッハッハッハッハ!」

 ハレの心からの叫びと、ついに耐えきれなくなったマツリの朗らかな笑い声が、きれいな五月晴れの空に吸い込まれていった。




 言霊の幸ふ国での、とある一幕。


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