2.若い王様
若い王様は、生まれたときから何でも持っていました。
きらびやかな衣装に、美しい宝石の飾りがついた剣。
大きな宮殿に、沢山の召使い。
そんな若い王様でも、持っていないものがいくつかありました。
その内の二つが「知識」と、「経験」です。
若い王様は、父親のような立派な王様となることを目標としていました。
そのために沢山の家庭教師をつけて、毎日たくさん勉強しました。
そのかたわら、賢者と呼ばれる人たちに助けてもらいながら、王様の仕事をこなしたのです。
王様が病で倒れたとき、町や宮殿で暮らす人たちは、とても悲しみました。でも若い王様のそんな立派な姿を見たり聞いたりすると、とても喜びました。
そのようにして若い王様は、知識と経験をたくわえ、いつからか「若い王様」ではなく、「王様」と尊敬をこめて呼ばれ始めました。
しかし王様には、まだ持っていないものがありました。
それが「愛」です。
王様には母親がいませんでした。
王様を産むと、早くに亡くなってしまったからです。
ですから本や吟遊詩人の歌で「愛」という言葉が現れると、それがどんなものか王様には想像がつきませんでした。