タナトス?
フィクションです。
彼は、生きるのが面倒だった。
そのくせ、健康オタクな一面もあった。
彼曰く、自分の身体に気を遣うのは好きなんだそうだ。
そんな彼の口癖は…「あ~…めんどくせ。」、「だる。」、「マジ、ダルビッシュだし。」
最後のは意味が分からない。どこかで聞いて覚えたのだろう。おそらく…芸人さんか?
そんな彼の態度、生き方に反感を覚える人は数多くいた。
そんな数多くの人の中に、彼に言ってしまった人がいる。言ってはいけない一言を。
「そんなに死にたいなら死ねよ。」
彼は、言った。
「なら、生きたい奴を連れてこい。そいつのためなら死んでやる。お前のためには死ねない。」
数多くの中の一人は、病気で苦しみ、移植をしなければ助からない人を彼に紹介した。
彼は、言った。
「男かよ。男のためには死ねない。綺麗なニューハーフか好みの女のためなら死んでやる。」
何様だろう。本当に死ぬ覚悟はあるのだろうか。しかし、彼の口調、言葉、思いは真剣そのもので、本気のように僕には思えた。
数多くの中の一人は、また病気で苦しみ、移植をしなければ助からない人を彼に紹介した。
今度は、女性だ。
彼は、言った。
「好みじゃない。」
………。
数多くの中の一人は、またまた病気で苦しみ、移植をしなければ助からない人を彼に紹介した。
今度は、容姿端麗だが性格は、とてもひねくれている女性だった。
彼は、言った。
「あんたのためなら死ねる。」
…結局は、顔か?(笑)
彼は、続けて、こう言った。
「俺は、あんたのために死ぬ。だから、あんたは俺の分、生きろ。」
…そんな無茶な(笑)
「で…死ぬ前に、あんたを抱かせろ。あんたは、俺の人生、最後の女だ。」
…天才と馬鹿は、紙一重か?(笑)
天才とは、僕には思えなかったが。
容姿端麗だが性格は、とてもひねくれている女性は、言った。
「いいわよ。」
マジか(本気か)…(笑)
その晩、彼は、容姿端麗だが性格は、とてもひねくれている女性を抱いた。
…抱かせて貰った?
次の日、彼は、容姿端麗だが性格は、とてもひねくれている女性の胸の中で亡くなっていた。彼女に、とても愛おしそうに抱き締められながら。
その翌日、彼女は死んだ。
笑顔で。とても安らかに。
彼女は、数多くの中の一人に、こう言い残していた。
「彼を紹介してくれて有難う。」
…彼の財布の中には、ドナーカードが入っていたそうだ。
本人の署名のみ…家族の署名は無かった。
特記欄には、親族優先と書かれていた。
フィクションです。