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理論値主義者の日常

「これじゃもう対応できんだろ!」


 夕方の自室であわや近所迷惑の声を出している男子高校生が一人。


「よっしゃ!新記録だぜ」


 彼は最高のパフォーマンスじゃないと満足しない。


「え」


 そして彼は、わずかな確率を引いた先にあるロマンを追い続ける。


「マジかよ」


 彼……実野(みの)修二(しゅうじ)を一言で表すなら、


「こんなことあんのかよ」


 理論上でしか辿り着けないはずの記録(ロマン)に挑む、


「理論値ってこんなところで引くんだな」


 理論値主義者だ。


―――――――――――――――――――――


「お前昨日いいことあったのか知らんが、いつもより倍くらい元気だな」


 教室の席に座ると、同じクラスの葉薙(はなぎ)が話しかけてきた。


「そうなんだよ。あのパシシャンで理論値の最高ダメージが出たんだ」


 『パッションシャンパラExtra』通称パシシャンはシャンパラというぬいぐるみを引き裂いて中に封じ込められた魔法を放つ、という改めて考えるとコンセプトを考えた人の精神状態を確認したくなるゲームだ。


 パシシャンは今では珍しい()()()()()()()()()()()()だ。しかも、ターン制の選択式なので再現性が高い。よって、理論値主義者に適しているゲームだ。


「それってどうやってやったんだ」


 葉薙も俺ほどではないにしろ、パシシャンをやっている。


「積み魔法連発?」


 たしか、対戦レートは1800に乗ったんだっけか。


「おーい無視すんな」


 パシシャンは実力と運の割合が上手い。だから……


「教えろ教えろ教えろ教えろ教えろ教えろ教えろ」


 お前そんなに興味あんのか。


―――――――――――――――――――――


 帰りのホームルームが終わり、いつも通り直帰……はしない。


 今日、珍しく部活がオフだった葉薙と一緒にゲームを買いに行く。


 あいつはそのゲーム――『Capture Chance Universe』が発売してすぐプレイしようとしたのだが、対応しているVRセットを持っていないとできないという至極当然の事実に気づき諦めていたらしい。


 ただ、葉薙の叔父さんが誕生日にくれたらしく、念願のプレイができるようになったんだそうだ。


 だから俺も一緒にやって欲しいらしい。


 俺は再現性が低いゲームは好みではないのだが、最近あいつとゲームしてないし、ソフト代を少し持ってくれるというので、やってみようと発起したわけだ。

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