宇宙の大きさへ
①
ピピピッ.....ピピピッ.....
朝7時、スマホのアラームが鳴る。
男は目を覚ました。
「ふぅ...体だりぃ」
34歳のサラリーマンである田中は朝から体調不良を感じていた。
「あー」
「風邪ひいたかもな...インフルか?」
世間では最近、新型インフルエンザが流行している。
田中は体温計を脇に挟んだ。
ピピピッ.....
体温計に表示された温度は38.9度。
「これダメだなあ...会社休んで病院行かないと。」
そして、田中は上司に会社を休む旨の連絡をした。
②
一方その頃、とある宇宙観測所では緊急会議が行われようとしていた。
「ゴホッ!ゴホッ!」
リモート参加の何人かはマスクをして咳をしている。
「新型ウイルスが流行っており、体調が悪い者もいる中、急遽集まって貰いすまないな。」
所長は続けて言った。
「これを見てくれ。」
巨大なスクリーンに映し出されたのは、宇宙の観測データだった。
画面上のグラフを指差しながら所長は言う。
「観測史上最大規模の太陽フレアだ。」
研究員が言った。
「影響範囲は?」
「ほぼ全宇宙だ。」
部屋がざわつく。
バンッ!
青ざめた顔の研究員が、会議室の扉を激しく開けた。
息を切らした研究員が叫ぶ。
「ヤバいです!
強烈な電磁嵐が発生中!
文明圏の電力網が次々と停止しています!」
「…..そんな馬鹿な。」
世界全体で大規模停電が起きていた。
③
「ゴホッ!ゴホッ!」
田中は布団の中で咳をした。
体が重い。頭が痛い。
「なんか食うか。」
田中は重い体を引きずり、台所に向かった。
冷蔵庫から昨日コンビニで買ったレトルトスープを取り出す。
レンジで温めたスープを田中は食べる。
「あったけえ。」
スープを飲むと体が少しだけ軽くなった。
頭痛は治らない。
「頭いてぇな。」
④
一方、宇宙研究所にて。
さらに深刻な事態が起きていた。
「超新星爆発を確認!」
「何!?」
研究所、そして世界は騒然としている。
巨大な恒星が次々と爆発している。
銀河各地で観測されていた。
⑤
次の日
田中は目を覚ました。
「うーん。」
「あれっ? 体調いいな。」
体が軽い。
頭痛も引いた。
熱も下がっている。
窓の外では朝日が登っていた。
田中は窓を開ける。
「はぁ。今日も平和だな。」
⑥
しかしその頃、宇宙では。
110万年にわたる異常宇宙気象。
文明は崩壊していた。
崩れた摩天楼。
荒廃した都市。
残された人類の末裔たちは空を見上げていた。
最近、宇宙の異常気象が徐々に落ち着いてきたのだ。
「終わったのか...」
一人が言う。
「観測データによると、宇宙活動が急激に安定しているようです。」
「110万年続いた災害が?このタイミングで?」
「はい」
誰かが呟いた。
「宇宙が...回復したんだ。」
⑦
それから時は流れた。
宇宙では文明が何度も栄え、そして滅びた。
宇宙誕生から約333億年後。
新たな文明の宇宙観測所での出来事。
観測史上最大の事件が起きる。
「おかしい。」
「宇宙の膨張が...止まった?」
「重力が急激に増大している!」
銀河が引き寄せられる。
恒星が潰れる。
空間が収縮していく。
「これは......」
「ビッグクランチだ!」
この瞬間、宇宙は終わろうとしていた。
⑧
その頃、ある病院での出来事。
心電図の音が静かに鳴っていた。
ピー...ピー...ピー...
ベッドの上には老人が横たわっている。
83歳。
かつて普通のサラリーマンだった男だ。
家族と医師が見守る中、男の呼吸は次第に弱くなっていく。
そして最後の時は訪れた。
ピーーーーーーー
心電図が一直線になった。
医師が静かに言う。
「...ご臨終です」
⑨
一方、宇宙では。
宇宙はこれまで、ずっと膨張し続けていた。
しかしある瞬間、その膨張が止まった。
そして次の瞬間。
宇宙は自らの重力に引き戻されるように、内側へと崩れ始めた。
宇宙が押し潰されるように収縮し、
最後にはすべてが一点へ戻ると考えられている現象。
ビッグクランチ。
それが、今まさに起きていた。
銀河も、恒星も、文明も。
すべてが重力に飲み込まれていく。
そして宇宙は消えた。
⑩エピローグ
人は空を見上げ、宇宙の大きさを想像する。
どこまで続いているのだろう。
宇宙の外はどうなっているのだろう。
無限の大きさとはどのようなものだろう。
しかし。
もしかすると。
宇宙には、もう一つの無限があるのかもしれない。
それは、<無限の小ささ>。
例えば、誰かの体の中に。




