表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
十年の眠りの間に、私の弟子は最強になっていた  作者: あさび


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/14

第十四話 星霧の獣

星護の森の空に、満天の星が輝いている。


流れ星のような光が、夜空を横切った。


だが、その光は消えない。


むしろこちらへ近づいてくる。


星ではないと気づいたのは、間近に迫ったときだった。


それは――鳥の羽だった。


無数の光る鳥が、兵士達へと襲いかかる。


兵士達は混乱していた。


「光をなるべく見るな!その鳥は幻影を見せる!」


光る鳥を剣で払いながら、リオ・ヴァルノクスが指示を飛ばす。


混乱していた兵士達は、その声で我に返った。


「隊長はあの鳥のことをご存知なのですね」


ディオン・アルヴェインがリオと背を合わせて応戦する。


淡い亜麻色の髪がさらりと靡く。


黒縁の眼鏡の奥のスチールグレーの瞳は、常に何か思案しているようだった。


一見文人のような青年だが、近衛隊副隊長――リオの右腕だ。


「昔、教えてくれた人が居た」


短い返答だった。


ディオンはそれ以上聞かない。


それが隊長の師のことだと知っているからだ。


その時だった。


空を舞っていた鳥の群れが、突然一斉に散り散りになった。


まるで何かから逃げるように。


同時に、青白い霧が辺りを覆い始める。


背筋を這い上がるような寒気。


森が――静まり返った。


「退避だ」


「え?」


「任務は二の次だ。全員退避。森から離れろ」


ディオンは一瞬戸惑ったが、リオの表情を見てすぐに頷いた。


「今から我が隊は退避する!負傷者を優先して森の外へ!」


その瞬間だった。


異様な魔力が森を満たした。


影が現れる。


月明かりの中に浮かび上がったその姿は、鹿だった。


体高は馬よりも大きい。


白銀の毛並みに、星座のような光る紋様。


枝分かれした巨大な角には、星のような光が流れている。


だがその瞳は――赤く濁っていた。


咆哮が森を震わせる。


蹄が地面を踏み鳴らした。


魔力の衝撃波が広がる。


「下がれ!」


兵士達が吹き飛ばされた。


「隊長!」


ディオンの声が焦りを帯びる。


「お前も倒れている者を連れて逃げろ」


「しかし――」


「命令だ」


この獣は倒せない。


リオは直感していた。


少しでも時間を稼ぐ。


あの時、師が守ったように。


自分も――守る側に立つ。


――いい?リオ。どんな相手でも目を逸らしてはダメよ


獣の角が光った。


突進。


避けることはできる。


だが――避ければ、後ろの者が死ぬ。


衝撃。


リオの体が宙に吹き飛んだ。


血飛沫が舞う。


内臓を突かれた。


呼吸のたびに胸の奥が軋む。


血が止まらない。


長くはもたないと、リオ自身が理解していた。


その時。


影が、獣との間に割り込んだ。


フード付きのローブ。


顔も体型も分からない。


だが――


その剣の構え。


見覚えがないはずがない。


何年も前に、体に叩き込まれた剣だった。


視界が霞む。


それでも、その背中だけははっきり見えた。


「先生……」


リオは無意識に呟いた。


その背後で、青白い霧がゆっくりと濃くなっていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ