2.爽やか生徒会長
目的地である部室の前まで来ると、彼は握っていた手をするりと放す。
相変わらず君は人気者だね、と爽やかな笑みを浮かべる青年―環先輩の登場に、ほたるは未だ状況が掴めずぽかんと口を開けていた。
「ふふ、さすがに無視は悲しいなぁ」
「…はっ!し、失礼しましたっ!たまき先輩、ありがとうございます!」
「はい、どういたしまして。給水に行こうとしたら、君が何やら困ってたみたいだから…余計なお世話だったかな?」
そう言って子犬のように眉を下げる先輩に、ほたるは慌てて否定を入れる。
「いえとんでもないですっ!めっちゃ助かりました…!さっすが、女泣かせの異名も伊達じゃないですね!」
ほたるの言葉に環は「こら、最後の一言は余計だよ?」と苦笑を零す。甘いマスクに包み込むような声色を持つ彼は、男子テニス部部長と生徒会長を兼任する学校一のモテ男である。
才色兼備が服を着て歩いているような彼だが、どんな美少女から告白されても断っているという理由から女泣かせの称号も与えられている。
「僕は本命の子がいるから断ってるだけなんだけどなぁ…」
「たまき先輩でも敵わない相手なんているんですね〜!いったいどこの社長令嬢ですか?」
「ふふ、ただの笑顔が可愛い女の子だよ…。ちょっと眩しすぎるのが難点だけどね…」
そう言ってなんとも言えない視線をこちらに送ってくる環にほたるは首を傾げる。
「うん?どうかしましたか?」
「…いいや、なんでもないよ。それより、時間は大丈夫なのかい?」
何か急いでたんじゃないの?という環の言葉に、ほたるははっ!と顔を上げる。
「や、やばい…!すいません、たまき先輩ありがとうございました!私もう行きますね!」
「うん、道中気をつけてね」
ほたるは急いで部室から荷物を取り、環に軽く挨拶をして校門へと駆け出す。
そんな彼女の背中を、環は爽やかな笑みをたたえたまま静かに見つめていた。
「…もうそろそろ、かな」




