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「その武器、面白いわね」
ミリンダルが、ジローとミア&トラコの銃に興味を示す。
「そっちの武器は出鱈目な強さだな」
ジローが呆れた。
ミア&トラコが、コクコクと頷く。
5人は最上階である5階に到着した。
フロアは、ここまでで1番の数の敵がひしめいている。
「ミリンダル」
「ええ」
ラファンタの呼びかけにミリンダルはハンマーを振り上げ、敵に突進した。
「左右を片付けるぞ!」
ミア&トラコに指示したジローの大口径ハンドガンが火を吹く。
それを合図に、宇宙傭兵娘2人も銃撃を開始した。
薄暗い塔内に銃の発射光と、聖女2人の放つ温かな光が輝いた。
敵中に飛び込んだミリンダルの背後は、ラファンタが構えた円盾が守る。
激しい攻防の果て、とうとう闇獣たちは数を減らし、勢いを弱め始めた。
「このまま押し切るね!」
ミリンダルの宣言に、ラファンタ、ジローとモッキュ、ミア&トラコが頷いた、その時。
銀のハンマーを振るう聖女の周りに残った怪物たちの陰から、上腕部が鋭い刃となった明らかに上位の魔物が4匹、飛び出した。
この奇襲に、さしもの聖女2人もハッとなり、反応が遅れる。
4獣の8つの刃が、ミリンダルの首へと迫った。
刹那。
ジローの双眸が、ギラリと光る。
彼は元々は、遺伝子操作によって造り出された12人のハイブリッドソルジャーの1員だった。
左手のブレスレットから特殊な薬剤を体内に注入し、高速の知覚を得ることが出来たのだが。
「これは今となっては、かなり昔の技術だよ」とミアの姉レラの元カレ(元サヤの兆しはある)で、恋人ならぬ変人のメフィスト博士は評した。
「身体への負担も大きい。僕のオペで、もっと使い勝手を良くしてあげよう」
マッドサイエンティストの提案を受け入れ、ジローは新たなサイバー手術を施された。
といっても、メフィストが造ったナノマシンを体内に注入しただけなので、一瞬で終わったのだが。
因みに、このナノマシンはレラの身体も構成している最新バージョンである。
それら無数の微細機械が、以前の薬剤とは違い、ノーリスクで少年戦士の知覚をブーストする。
ジローの両眼は瞬時に敵4匹の頭部をロックオンし、すさまじい早業で引き金を引いた。
大口径ハンドガンから発射された4発の銃弾は、美しい聖女を絶妙に避け、周りの4獣を撃ち倒した。
さらにミリンダルに迫ろうとする他の魔物たちは、ラファンタが投げた回転する円盾が、全てなぎ倒す。
残りの敵も、ミア&トラコの銃が片付けた。
とうとう、このフロアの闇獣は全滅した。
「ひゃー! 終わったー!」
ミアがハンドガンを腰のホルスターにしまい、自らの細身を両腕で抱き締める。
トラコも額の汗を拭い、ひと息ついた。
モッキュが「皆、お疲れ様ー」と、冷たいおしぼりを配って労う。
「ジロー、ありがとう。助かったわ」
ミリンダルが、キュートにウインクした。
「朝飯前だ」
ジローが、ニヤッと笑う。
「あれよ」
ラファンタが、怪物たちの居なくなった部屋の中央を指す。
そこには真っ黒な、人の頭大の球が浮いていた。
ジローと向き合っていたミリンダルが、振り返って闇球にハンマーを投げつける。
聖なる武器の直撃を受けた、ミッドランドに居る闇巨人の核のひとつは粉々に砕け、宙に溶けた。
「これでよし」
戻ってきたハンマーを腰帯にしまい、ミリンダルがニコッと笑う。
「あなたたちのお陰で、時間を短縮できた。感謝します」
ラファンタが、ジローとモッキュ、ミア&トラコに頭を下げた。
「ありがとう、皆」と、ミリンダルも同様にする。
ジローは眉間にしわを寄せ、モッキュはニコニコしている。
「エヘヘ」とミアが照れ、トラコは誇らしげだ。
「さあ、ミッドランドに帰りましょう」
「ええ」
ラファンタの促しに、ミリンダルが頷く。
聖女2人は宇宙傭兵たちに手を振り、階段を下りた。
残った4人の会話が聞こえてくる。
「はぁー、ホントに良かったー!」
「ホンマやな。ミア、すごい顔で撃ちまくってたやん!」
「えー!? だって、レラお姉ちゃんが居ないお仕事は初めてだったから、仕方ないよ! ちょっとトラコ、笑いすぎ!」
「ミアちゃん、大活躍だったね!」
「ありがとう、モッキュちゃん! そだ、ジローさん!」
「ん?」
「私の、レラお姉ちゃん同伴なしの初仕事、100点満点で何点でした?」
「あー? 5点」
「ごごご、5点!?」
「ジローさん、辛口やなー」
「5点!? 5点って、何ですか!?」
「そだな…ちょっと甘いか」
「そそそ、そっち!?」
「ダメだよ、ジロー! ミアちゃん、大丈夫! モッキュポイントを10000点、あげるから!」
「ここ、今度は10000点!?」
「俺もモッキュポイント欲しい!」
「アカン! ジローさんの眼が、またハートになってしもてる!」
大騒ぎする4人の声に、ミリンダルとラファンタはフフフと笑い合った。
塔の外に出た2人はユニコーンに乗り、颯爽と走りだす。
ミッドランドでの、闇巨人との戦いが待っているのだ。
おわり
最後まで読んでいただき、ありがとうございます(*^^*)
大感謝でございます\(^o^)/