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ごっどぶれすゆー スサノオ様本気出す?  作者: 宮城 英詞
何事も、水に流すが世の習い

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神々の理

それからというもの、スサノオ様の善意の押し売りは猛威を振るった。

そこらじゅうの福の神の所に貧乏神たちと押し寄せ、無理販や犯罪ぎりぎりの方法で利益を上げていく。

 確かに商売はうまくいっているが、売る側も買いに行く側も疲弊していくし、福の神としては霊威が弱まっていく一方である。

そして本日、事態を重く見た福の神が結集し、大会議が開かれるに至ったのである。

 深夜の恵比寿神社に集まった神々。みなめでたい顔をしていてよくわからないが一様に面持ちは暗い。彼らは車座になって額を突き合わせ状況を確認している。

 上がってくる愚痴は、もろもろひどいものだった。

「……とうとう私の所にもやってきました。修理代の売り上げを上げてやるから。車をへこませると。」

 一つ目の神。天目一箇神あめのまひとつのかみがそう話すと

「ワシの所では、おばあちゃんに山ほど保険かけさておった。生活費圧迫させるほどの保険……年金生活者には酷な話じゃて。」

と、寿老人が答える。

恵比須様も

「電気街でも、値引くもんなーんも無いのに毎週キャンペーンやってますわ。結局いつもの値段で買って帰って、関係ないもんも抱き合わせで売るから。誰が得しとるかわかりまへんわ。」

と困り顔である。

ここまで来たらたいしたものと褒めたくもなる。

何しろ人間視点では大幅な利益を上げているのだ。

だが、神々からすれば、ずるいことをすれば儲かるという成功体験が穢れを生み、ひいては神々への不信を招く。

 これは下手すると彼らの存族も危ぶまれるほどの事態だった。

「あれで本人いいことしているつもりなのがなんとも……。確かにこのところの不景気で利益を出すためにはああいうことでもしなきゃいけないんでしょうけど……。」

南さんの言葉に一同がうなり声を上げる。

「たしかに我々福の神の力足らずでこんな長いこと不景気が続いてしもうたことは確かですわなぁ。まさか、長年の穢れがたまってあんなものが出来上がるとは……。」

 そうつぶやいたのは布袋様である。

 確かに、スサノオ様の存在そのものが長年の不景気からたまった穢れから生み出されたものであることは間違いないだろう。ある意味、神々にとっては自分たちの失敗に余波が来ているともいえるのである。

 俺は横で話を聞いて今回の件に根付いた問題が、もはや何十年前から根を張った実に複雑な要素をはらんだ内容であることを考えずにはいられなかった。

 彼ら福の神も「なにもしない」という。決断で罪を重ねた来たのである。

「それでも、や。」

 扇子をぴしゃりと鳴らし。天神様が話し出した。

「いや、それやからこそ。この状況を見過ごすわけにはいきまへん。あないな商いを許してたら、ずるい奴ばかりが出世して、神々の権威、正しき商売の姿がどんどん消えていく。これは許したらあかんことや。そもそもあれは、善意に名を借りた縄張り荒らしやおへんか?」

「しかし、あの今もなお強力になりつつある霊威一筋縄ではいきませんよ。力づくとなると、それこそどうなるか……。仏さんたちも被害を恐れて出てきませんし……。」

 そう言ったのは大黒様である。

 たしかにあの武神……かどうかはわからないが、属性的には暴風の神。福の神では到底相手にならない。いままで放置されてきた理由もそこにある。

 当然、仏教勢力たる千住院も匙を投げている。やってやれないこともないかもしれないが、パワーがあそこまで増した現在、それこそあの周辺にどれほどの被害が及ぶか想像もつかないし、逃がしたら逃がしたでまたそこに厄をもたらすだろう。

 沈黙。

 一同良い案が出ないまま。

ただ重苦しい空気が流れていた。

そしてその中、その話を今まで黙って聞いていた明石さんが静かに口を開いた。

「……大祓をしよう。」

その言葉に一同が色めき立った。

ただ一人、状況のわからない俺だけが辺りをきょろきょろ見回す。

「あの、大祓って一体……?」

 俺がそれを聞こうとしたその瞬間、与根倉さんが俺の前に立ちふさがった。

「あの……。与根倉さん」

 彼女はいつもの無表情な顔で俺の手をつかむと強い力でお社の外に俺を引っ張っていく。周りの神がそれを止めようとしないので俺はそのままお社の外に連れ出されてしまった。

「……これからは神々の理の話。あなたは関わらないほうがいい。」

与根倉さんはそう言うと拝殿の扉をぴしゃりと閉めた。


流石に困った神様たちが

大祓をするという。

どうも聞かせてくれないようだけど

一体それはどういう儀式?

続きは次回のお楽しみ。


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