スサノオ様本気出す!
風をまとい現れたスサノオ様。
以前ほどではないにしろ未だ強力な穢れをまとったその神は、ぼろをまといながらその肉体は分厚い筋肉に包まれている。肉食獣のような眼で周囲を見据えるそれはまさに福の神とは違う、荒々しい神のそれであった。
「こいつかぁ……確かにまぁ今でも霊威の強さと凶悪さについては右に出るもんはおらんわな。」
「前の経緯もあるから、しばらくはおとなしくしてもらいたかったんですけど、ここまで来るとこっちもきれいごと言っていられませんからねぇ。」
流石におとなしくしていたところに声をかけてみたが二つ返事でOKが出た。基本この神様はこういう義理堅い所があるのがありがたい。
「榊君、本気出してどついてもええんやな?」
「ええ、ただ、家屋とかにはできるだけ被害が出ないようにお願いします。」
「おう!できるだけな。」
指やら首やらをゴキゴキ鳴らしながら笑顔で関公様の群れに歩み寄るスサノオ様。
ひとまずこれで何とかなりそうだ。
「一時的に浄化したとはいえ、日本規模での穢れが他の分身から流れ込んできてまだまだ力が有り余っていますからね。ここで一つ発散してもらいましょう。」
「……これはこれで、大丈夫なんかいな。」
俺の言葉に不安げな千住院。
当然、彼の不安は理解できる。
すなわち、今度はあまりに強力すぎないか?という事である。
だが、こちらも手段は選んでいられない。
向こうが策謀や戦術で攻めてくるなら、こちらは大自然の力で対抗するしかない。
そんなことを考えているうちに、スサノオ様は手近な関公様の肩を叩いて振り向かせ、有無を言わさずに殴り飛ばしていた。
たちまち吹っ飛び、道路に叩きつけられて霊的に砕け散る関公様。
流石、威力は絶大である。
たちまち周囲の関公様が集まり密集体形が組まれる。
それにスサノオ様は臆することなくじりじりと歩み寄っていった。
「おいコラ!郷に入りては郷に従えうっちゅう言葉を知らんのかい?文句言われんのをええことに好き放題やるような奴を置いとくほど、ウチら八百万の神はボンクラとちゃうぞ!モノには限度があるっちゅうことを教えたるわ!」
言いつつ密集体形の槍を飛び越え、そのまま盾ごと蹴り飛ばすスサノオ様。
同時に起こった爆発的な暴風に密集体形はボーリングのピンのように砕け散った。
爆風は実体として周辺に吹き荒れ、看板が一つ吹き飛ぶ。
流石暴風の化身としての姿もある神。威力は絶大である。
千住院も暴風にあおられながら、その威力に改めて驚きを隠せないようだった。
「好き放題やっとるのはどっちやねん!」
「力有り余ってますね!」
飛んでくる様々な物から逃れて慌てて物陰に隠れる俺たち。
「我こそは暴風の化身!このワシを止められるもんなら止めてみんかい!」
こちらが身の安全を確保している間にも、スサノオ様は群がる関公様達を殴り、放り投げ蹴り飛ばす。刃を素手で受け止め、へし折り、腕の一薙ぎで幾柱もの関公様を吹き飛ばした。
そのたびに周辺には爆風が吹き荒れ、看板などが吹き飛んでいく。
「お店どこも閉まっててよかったですね。」
俺はそう呟きながら、商店街が休業だらけな事に感謝した。
いつも通りの人出なら、店舗にも人間にもそれなりの被害が出たに違いない。
それに千住院は何をかいわんや、という顔で頭を抱えていた。
そして、関公様もただやられているだけでは無い様だった。
しばらくすると攻撃がやみ、辺りが静かになる。
のぞき込むと、俺の目にはは集合した幾柱もの関公様が、徐々に合体していくのが映った。
やがてそれは凝縮された強力な霊威を持つ一柱の関公様へと変わっていく。
どうやら戦術を変え、霊威を凝縮した一騎打ちで挑むようだ。
「……ほう、どうやら分身の数を頼んでも意味がないことに気づいたようやな。神々の喧嘩の仕方が解ってきたようやないか。」
薙刀のような武器を構えこちらにじりじり寄る関公様。それにスサノオ様は首の骨を鳴らしながら不敵な笑みを返した。
「さすがは名うての武人、面白いやないか。じゃが、ワシはそう簡単には倒せへんぞ。」
言いつつ、スサノオ様は片手を下げて手のひらを見せ、もう片手を上げこちらも手の平を見せる。そして複雑な指の形状を見た千住院は驚きの声を上げた。
「あれはまさか!」
「知っているんですか?千住院さん!」
俺の言葉に千住院は動揺を隠せない様子だった、彼はスサノオ様の構えを改めて確認し、口を開く。
「あの印相は、スサノオの本地仏、薬師如来の印相!スサノオノミコトが仏としての姿を見せたという事や!」
「ええ?」
スサノオ様の普段の素行から考えると全く理解できないが、千住院から見ればそう言うことになるらしい。
その解説にスサノオ様は豪快に笑った。
「その通り!ワシの仏教での姿は、病を治し、衆生を救う薬師如来!ねーちゃんに浄化されたワシには、穢れない神としての力がある。今!この力で衆生を救う!」
言いつつまばゆいばかりの後光を放つスサノオ様。
それはまさに神としてのスサノオ様の本気の姿であった。
彼が大きく息を吸い込むと、周囲の空気が渦巻き大気を揺らす。
それに関公様は武器を振りかぶり、大上段からスサノオ様に襲い掛かった。
「食らえ!神の怒り!」
そして、スサノオ様が目を見開く。
「愛と!怒り!そして悲しみの!」
刹那、武器が振り上げられた隙をついてスサノオ様は暴風のごとく間合いを詰めた。
拳にあらゆる力集中し、ブラックホールのような漆黒の渦が形成されるのが俺の目には一瞬だがはっきり見えた。まさにそれはスサノオ様の本気が凝縮されたものだった。
「コォォォォークスクリュゥゥゥゥー!パァァァァーンチッ!」
スサノオ様の叫びと共に竜巻のごとく回転を利かせたストレートパンチが、関公様の兜を砕き、右頬に炸裂した。
爆風が周囲に吹き荒れ、あらゆるものを吹き飛ばす。
俺たちもその暴風に巻き込まれ後ろに吹き飛ばされることになった。
「結局殴るんかーい!」
仏とは程遠い解決方法に思わず千住院の声が上がる。
ついさっきの仏の姿がどうのこうのという話は一体どういうことなのかはさっぱりわからないが、あらゆる神の力を全部乗っけたらしい強烈なパンチに耐え切れず、関公様は回転しながら天高く吹き飛んでく。
そしてその姿は、もはや俺の目にも確認できなくなっていた。
後日、聞いた話では海の向こうでバブルがはじけたらしい。
どうやらある程度穢れたパワーを押し付けたような形になったようである。
俺たちの電気街を取り返す戦いは、こうして、結局霊的な力業で解決された。
スサノオ様本気出す!
穢れにまみれた力を込めて
他国の神を追い払う
争いごとは拳で解決?
スサノオさまの憂さも晴れて
商店街に平和が戻る!
さてさてその後のみなさんは?
エピローグも読んでって




